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僕の麗しき箱庭  作者: まくのゆうき


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採集日の材料集め

そうして目標を定めてから最初の採集日。

僕は皆が簾のための細い枝を集める中、形を作るために削ってもなくならない、簾には適さないくらい太い木材を探そうと考えていた。

簾作りに精を出す人が増えて、街に逃げ込める範囲に落ちている小枝はほとんど拾われつくされてしまっているが、森の奥ならば大雨や強風で折れた木が手つかずのまま残っている可能性が高い。

簾教室を開いて、作り方を教えてから数ヶ月、すでに完成させて実用にこぎつけた家もあるらしく、それがまた刺激になって、子供たちの簾作りは過熱している。

やることがないから、何となく森で遊んでいた子供たちはいつの間にか親の役に立とうと懸命に自分にできることをしている。

いつかこの貧乏集落の皆が、庭に簾を渦巻きに立てて、汚さず布団や洗濯ものを干すのが名物になるかもしれない。

もしこの貧困層の集落が流行の発信地になったら、そんな妄想をするのも楽しいが、僕は自分の就職活動をしなければならない。

ちなみに今回、細い枝は切り落とすため、切り落とした枝はグループになった子供に譲るつもりだ。

本来の目的である木の実や果物も取らなければならないし、獣に遭遇すれば逃げて大人たちに捕まえてもらわなければならない。

仮に獣に遭遇したら、抱えて走れない木は置いてくることになってしまうから、太くて大きければよいというものでもない。

それに太い木は持ち帰ってからも薪にされないようにしなければならないし、作ったものも捨てられないようにしなければならない。

そんな都合の良いものはなかなか見つからないだろうが、今回のものは大は小を兼ねると言えるので、大きいものを狙いたいと考えているのは確かだ。



見つけた木は、木の実や果物を入れるために渡された背負えるカゴの底の外側部分にくくりつけることにした。

そのため、カゴを渡されてからすぐ、僕はカゴの底の内側から隙間を通してツタの端と端が外側に垂れ下がるように、何本かのツタが出るようにし、落ちたり下がったままにならないよう、リボン結びをした。

枝が集まったらこのリボンを解いて、枝を括ればとりあえず手は空くし、ここまでして走った際に枝が落ちてしまうのなら、その枝は縁のなかったものとして諦めると決めた。

しっかり決めておけば、獣に追いかけられて逃げることになった時、仮に枝をばらまくようなことになっても気を取られることなく、走り続けられる。

僕は引きこもり時代より今の方が運動しているが、もともと運動神経は鈍いほうだ。

もし落とした枝に気を取られて足を止めたら、その時点で獣の餌食になるくらい足は遅いし、戦う能力を備えているわけではない。

あくまで森の中での僕は弱者なのだ。



採集は門の前に集合大人が決めた拠点に向かうところから始まった。

これはいつも通りである。

しかし、多くの子供たちは雑談しながらも、目は森の方を向いている。

おそらくそうしている子供は、材料が思うように入手できず、作業を思うように進められていないのだろう。

今回は採集ということで森の奥まで行けるから、そこで材料を手に入れたいと思っているに違いない。

一方でライバルが多いから、より早く見つけて、一つでも多く自分が材料を手に入れたいと必死になっているのである。



幸い、手頃なサイズの枝は拠点近くですぐに見つけることができた。

普段子どもたちが来ないところだから、細めの枝もかなり落ちている。

僕たちは拠点近くでカゴいっぱいの木の実や果物を採取して、拠点に戻りがてら、行く際に見つけて放置していた、落ちている太めの枝に近づいた。

それとなく抜け出したので、僕がグループから離れたことは気づかれていないらしい。

しかし、この場所から拠点はよく見えるし、大きな声を出せば拠点にいる誰かが気づいてくれるくらいの距離のはずだ。

僕は目測でそう算段したからこそ誰にも声をかけずに太い枝を拾いに来たのだ。

僕が目をつけていた枝、よく見ると、簾に使えそうな細い枝がかなり出ているし、太い枝が倒れる時に地面に叩きつけられたのか、太い枝の周りに更に散らばった枝が落ちている。



僕は周囲を確認してから、持っているナイフで太い枝から飛び出している細い枝を削ぎ落としはじめた。

細い枝が飛び出している状態でこの木を括ると、自分の背中に刺さったり、周りに枝先を向けたりすることになるため危険だからだ。

それに今やらなくてもどうせ作品を作るときに削ぐのだから、やるなら早いほうがいい。

僕は直径が手のひらくらいのサイズで、背負っているカゴの直径より少し長いくらいの枝を地面で転がしながら細い枝を削ぎ落とし、準備をしていた通りにしっかりカゴの底に括った。

ついてだからと周りに落ちていた枝と、自分の削ぎ落とした枝をかき集めて、予備に用意していたツタで縛ってまとめた。

カゴにはすでにたくさんのものが入っているので、僕はカゴを背負ってから、まとめた細い枝を抱えて、拠点に戻るのだった。



そして僕がそぎ落とした枝はというと、最初グループの子にと思っていたのだが、太い枝を持ち帰る時は一人になってしまっていたし、枝を探すのも、細長い枝をそぎ落とすのもグループの子たちが特に手伝ってくれたわけではない。

それに森での木の実集めでは協力したけど、奥の方で枝広いは各々がやっていたし、最後、彼らは僕に気付かず先に拠点に戻って行ったのだ。

それに誰にも見られていないとはいえ拠点の近くで集めてしまった。

そうなると食料調達のグループを特別扱いする理由はない。

もし彼らの中に目や耳の良い人がいて僕のやっていることを見られていたら、そう考えると誰かを特別扱いすることはデメリットしかない。

結局、僕は枝を拠点に持ち帰って、喧嘩にならないよう、欲しい人で山分けしてと大人たちの見ている前で差し出すことにしたのだった。

ここに来ている大人はまとめ役をしているだけあって、任せたらきちんと仕切って、喧嘩にならないよう必要な子供たちに枝をうまく配分してくれた。

そして枝を分けた子供だけではなく、子供の保護者にも感謝された。

皆が早く便利な道具として簾を欲しいというのが伝わって僕は苦笑いをするしかできない。

申し訳ないが簾というものの本来の使い方をこの集落で僕は伝えることができないらしい。

僕は最初に簾を考えた人に、曲解した使い方を広めたことを心の中だけで謝罪した。



こうして僕は、皆が簾に使う細めで長い枝を集める中、太い木が落ちていないか探すことに成功、太い枝は皆が拾わないこともあり、思っていたより多く集めることができた。

果物や木の実だけではなく、太い枝を持っているのでいつもより重たいはずなのだが、気分が良いからかそんなことはあまり感じなかった。

もしかしたら、括りつけたことで背負った状態になっているから、抱えて運んでいるのとは違って楽に感じているのかもしれない。

僕は目標を達成できた喜びをかみしめながら、休憩中に自分で採った果物をしっかりと食べ、足取り軽く家に向かうのだった。



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