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時限爆弾

作者: 砂糖

僕はある病を抱えている。

時限爆弾のようなものだよ。


子どもの頃から不安だったんだ。

僕の将来は大丈夫なんだろうか?


健康診断の類がいつもイヤだったよ。

また悪い数値が出るんじゃないか。毎回不安だったり、周りから好奇の目がイヤだった。

詳しく言わないけど、僕の病は、健康診断の時に他の人から見て分かるものなんだ。


不安を抱えながらも、時間が過ぎて行った。

僕は大人になった。

僕の時限爆弾は静かに、少しずつ確実に大きくなっていったんだ。


就職して、結婚して、ささやかながら幸せを手に入れたよ。

僕を選んでくれた最愛の女性に感謝だね。


でも相変わらず健康診断はイヤだったよ。


僕は、とにかく時限爆弾を忘れたフリをしようと努めたよ。

でも、その時が訪れたんだ。


ある時からこれまでにない異変を感じていた。

僕はなかなか医者の精密検査を受けなかった。


忙しかったから?


違うよ。

現実を知ることが怖かったんだ。


だんだん悪化して、言い訳してる余裕はなくなった。

とうとう時限爆弾の第一弾が炸裂したんだ。


手術をしてもらったけど、元には戻らなかった。

やはり早期発見、早期の処置が肝心だったのに、僕はこの時限爆弾をナメていた。

いや、正しく言うとビビリ過ぎていたから、考えたくなかったんだ。

人間って、精神的に疲れている時間が増えると、冷静で正しい判断ができなくなるんだね。


時限爆弾が炸裂してからは、少し人生が変わったかもね。

好きだった事ができなくなったり、生活の不便さが増えてストレスになったり。


でもね、健康診断はイヤじゃなくなったよ。

だって、自分の状態がハッキリ分かったから、覚悟ができたんだ。周りの好奇な目も悪い数値も気にならなくなったよ。

やっぱりさ、漠然とした不安ほど怖いモノはないからね。


じゃあ、これから心配ないかっていうと、そうでもないんだ。

時限爆弾は消えたわけじゃないんだ。

感じるんだよね。少しずつ、自分の中に起こっている異変をね。


時限爆弾の第二弾が炸裂したらどうするか色々考えているよ。

僕の抱える時限爆弾は命に関わるモノではないけど、生きていく上ではとても重要な機能を低下させる。


自分に何ができるのかを考えていると、何だか少しワクワクする自分に気づいたよ。


そもそも、時限爆弾が最初からなければ、このまま安定した仕事を続けて、平凡ながら幸せに過ごせたかもしれない。


過ぎていく時間の中で、僕は仕事に関しては、少しやり切れない気持ちもあった。


あまり、やりがいを感じることがない仕事を続けて僕は終わってしまうのか?


自分の能力の無さを棚に上げて、悶々としているよ。

何かワクワクすることをやりたいなー。

上司に怒られそうだね。

お前に何ができるんだー!さっさと仕事しろー!ってね。


時限爆弾第二弾の炸裂を恐れる自分と、その時を待っている自分が共存しているんだ。


以前は圧倒的に、時限爆弾を恐れる自分が優勢だったよ。

最近は、ワクワクする自分が勝つ時もあるよ。


やりたいことを考えていると、ワクワクし過ぎて眠れなくなる夜もあるよ。

そうかと思えば、不意に、恐れる自分に100%を支配されたりもする。


水泳の池江さんが、泳ぎ始めたニュースを観たんだ。

素晴らしい!!

僕よりも遥かに若い池江さんに教えてもらった気がしたんだ。

どんなに不安があっても、自分の可能性にワクワクする気持ちは消えないし、共存しながら生きていけるよね。


どんな未来が待っていても、僕は多分大丈夫だと信じたい。


池江さんの復活を願う気持ちと、僕の未来へのワクワクを勝手に重ねて気持ちも上がっていくよ。

池江さん、お会いすることはないけれど、貴女の姿を見て勇気を頂きますね。


時限爆弾第二弾の炸裂の日は来るのか来ないのか。

今日も、恐れる自分とワクワクの自分の戦いは続いている。

勝者も敗者もない、長〜い戦いをしながら布団に入るとしようかな。



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