鋭い魚たち
煌めく様な雷撃の行間
ディストーション あるいは爆発する技巧
そうして哀惜と雨音
揺らめく自我という幻想の抗い
つまり世界とはそうであるという醒めた瞳
日常語のガードをすり抜けて
脳髄を痺れさせる一撃の言葉がある
技巧の前の絶え間なき努力
それを支えるマグマの煮え立つような熱源
どうしても言葉でしか向かい合うことの出来ない
まるで逃げ道のない路地のような胸苦しさとして
昏く底の見えない穴からの
思いもかけない光りの放射がある
この掌の上で息絶えんとするものを
見過ごすことが出来ず
動態デッサンを描くように
動き続ける文章を書くのだ
深い森をひとり歩むヘラジカの王
薄赤い月光が 銅色のうねるような腿を照らす
虫たちは押し黙り 時が満ちるのをただ待っている
闇の隠れたその奥に囁いているのは記憶
意味となった名前たちの連綿たる流れが
どんな明るさよりも透き通って冷たく
渓谷を流れ落ちている
滝壺の青い水が泡立つように騒めいている
紡錘形の鋭い魚たちは
死ぬまで泳ぐことしか知りはしない
6年ほど前に作った散文詩のようなものに、魚の詩がありました。それは言葉の比喩だったのですが、今の感じがこれです。




