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詩の空間  作者: につき
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嗛間(ほほま)の社

古くからの雨が降り

柳の枝先から落ちる雨だれが

鏡池の馬魚を驚かす

大きく栄える杜があり そして

ひっそりと祀られるサワリの社があり


この思いあたら消えじ

竜雲を征くものへ

嵐となり雷雨を従うものへ

行く末までもいつまでも

果つることなしと


土の中で震える石のように

冷たいままの剣を噛んでいる

恨みの熱がいつまでも冷めないのは

縁の終わらない故に


ある春雨の夜に

小さな狛犬たちは眠った

ふたつの灯篭が灯り

藤の花房が妖しく浮かぶ

小さな社の扉が鳴った


忘れられた社の夜空を

大きな雨雲が覆っている

俯く影が顔を上げる

麗しい夜が終わるまで

神宮の杜は騒めいている


珍しく出典のある詩ですので、無粋を承知で解説します。

まずこれは、神武天皇の前妻であった吾平津媛アヒラツヒメの悲恋の詩として書きました。


吾平津媛アヒラツヒメ

 奈良県御所市にある、嗛間ほほま神社に祀られる吾平津媛アヒラツヒメは、オオモノヌシの娘に神武天皇を奪われ、この地にわび住まいしたと伝わります。この地方では、嫁入り行列がこのお社の前を通ることを御法度としたそうです。言い伝えを無視した者の中には、不縁になった人も多くいたようです。所謂サワリの神です。縁切りの神さまでしょうか。

>>宮崎県日南市材木町 吾平津神社 (あひらつ じんじゃ)【吾平津神社・由緒沿革】には、以下の件があります。「神武天皇が皇子や郡臣と共に日向を立って大和朝廷をおこすため東遷された時「吾平津昆売命」は同行せず当地に残こられ、この油津の地より御東遷の御成功と道中の安全をお祈りされました。」

 この地で、わび住まいをしていた姫は、どのような思いだったのでしょうか。悔しく、嫉妬に燃えていたのでしょうか。だから祀られても尚、その強い想いが消えず、サワリの神となったのでしょうか。せめて詩の中で、その悲恋を叶えてあげたかったのです。


鏡池、馬魚、剣と神武天皇

鏡池は、奈良県天理市にある石上神宮にあり、馬魚ばぎょとはワタカという奈良県天然記念物の魚です。

以下、神宮のWEBページより

「当神宮の主祭神で、国土平定に偉功をたてられた神剣「韴霊ふつのみたま」~(略)とは、古事記・日本書紀に見える国譲りの神話に登場される武甕雷神たけみかづちのかみがお持ちになられていた剣です。

またその後では、神武じんむ天皇が初代天皇として橿原宮にて御即位されるのに際し、無事大和(奈良県)にご到着されるのをお助けになられた剣でもあります。」

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