突発的な婚約破棄についての父親の対応
武闘派貴族による、愚息の婚約破棄への対応
物理最強貴族の、物理的対応の模範例について
「其処に直れ!」
ノッシノッシノッシ
圧を感じる動きで、山の様な男が迫る。圧に押されて人垣が自然と別れる。
擬音を付けるなら、ズンッズンッズン!って感じだ。
そして、おもむろに左手を振り上げ 続いて響く打撃音(パンッとかじゃ無い、ビンタなのに 『ゴッ!』って音がした)
張り倒した夫人を、侯爵夫人を!(生きているのか?まさか死んだ?
マジモンの貴婦人を公衆の面前で殴り倒した。
え?なんで?マジ?ウソ?
如何なんのコレ(絶賛混乱中
ってか この男は何者?
眦は吊り上がって狂相を表しているが、装いは明らかに上級貴族のそれで、更には帯剣している。
(王宮では、基本的に武装が禁止されている。衛兵は指叉と警棒がデフォで短剣以上の剣は貴族のみ)
男は 更に進んで間抜け面を晒すボンボンへと向かう。
左手で彼らの襟首を捉え
そして、響く打撃音
今度は『ゴッ』じゃ無かった、『メギャ』というか『グシャ』というか兎に角尋常じゃない音がして
彼らは床に這う事と相成ったのだ。
更には、騒動の中心人物の一人である侯爵嫡男は、つま先が巨躯を誇る男の頭を越えるほど蹴り上げられたのだった。
ワシの名は、ガオルグ・ソラ・オルグレン侯爵、王国軍青龍騎士団長にして東方防衛軍団長である。
我が誉れ高きアルソナック王国の東の盾である。ここ数年セイコム王国との小競り合いが続き本領であるオルグレンに帰還することも儘ならなかったが、ようやく国境付近の安定が成り、久しぶりに良い報告を国王陛下にできた。
そして、今日この日、ワシの三子長男である嫡子が王立枢貴院アルソック学園を卒業することとなって、それに臨席する為に、王太子殿下に侍り訪れたのであるが!
その晴がましき王族臨席の卒業式で、我が嫡男が侯爵家当主であるワシの与り知らぬ婚約破棄を唐突に仕出かしたのである。
我が嫡男とプレア伯爵令嬢との婚約は、王国東部国境の防衛における重要な布石となる。
最前線に置かれる国境に隣接する貴族たちの纏め役であり、今上の従弟甥にあたるプレア伯爵との縁を深めることは、国防の大事であり、国王陛下の勅許であり、貴族としての義務である。
だと言うのに、この愚挙暴挙である。
ワシは先ず、国難の折 領地と奥向きを任せたにも関わらず、この暴挙に至らせた妻に近づき幾分か加減して張り倒し。
後に、何やらプレア伯爵令嬢を多数で攻め立てる愚息の取り巻きのモヤシを端から殴り倒した。
そして、何やら引き攣っている愚息の股を渾身の力で蹴り上げた。
その上で、愚息やその取り巻きが呻く声を背中に聞きつつ、プレア伯爵令嬢に深々と頭を下げ『愚息が申し訳なかった。』と告げたのである。
いやはや、流石は王国の盾、東方の守護神と詠われたガオルグ卿である。
苛烈でありながら、卒がない。嫡男を打擲した上でご令嬢への謝罪まで終わらせた。
これで、ご令嬢に非がないことは確定した。
おや?侯爵がこちらに来るな。
「王太子殿下に言上仕ります。此度の暴挙の責にて我が長男を廃嫡致したくお願い申し上げます。」
「ん、良いのか?」
「は、この様な愚物、侯爵を継がせれば我が家のみならず王国に凶を齎すは必定、押し込めるが良いかと存じます。」
まぁ、こんな恋愛脳は、傍に要らぬか。
「ん、しかと聞き届けた。また後程、書面を整えて王府に届けよ。
して、新たな後継は如何する。」
「は、ありがとうございます。庶子ではございますが、男児が居りますのでその者に任せたいと存じます。」
勢いで投稿しております。
見苦しい点は多々有ろうかと存じますが、平に御容赦下さいませ。