第26話もえとロベルトの天の国散策
ロベルトともえが色々な事に巻き込まれます。
〜天の国にて〜
もえとロベルトは浮かぶ島々が望める、景色の良いテラス席で優雅に朝食を取っていた。
ロベルトはカプチーノとクロワッサン、カリカリに焼いたベーコンエッグだ。
もえは葡萄ジュースとクロワッサンとスクランブルエッグ。
だが周りには人集りが出来ており若干視線が痛い。
10mほど離れた場所には天使達がこちらをチラチラ見てヒソヒソと囁き合っている。
天の国は大小様々な島で構成されているが、その間を見た事も無い鳥や空中を泳ぐ魚が行き来している。
遠くからギャウ〜と鳴く声や、赤っぽい魚の身体に緑と青の蝶々の羽根を付けた魚がポー!ポー!と鳴いているのを、もえは眺めていた。
(お魚も鳴くんだね。でも幼稚園で言ったら変な子だと思われちゃうから黙っておこう)ともえは心の中で思った。
朝食を終えると、ウェイターが会計用の釣り銭トレーを持って来た。
ウェイターは天使ではなかった。どちらかと言えば黄色人種なのかな?
もえがジーと見ているとウェイターはちょっと戸惑って「私は元、風の民でして」と天の国語で喋った。
もえには理解出来ない言語だった。もえには「ウィンピポ」と聞こえた。
釣り銭トレーの上にはカードが置かれていて、ロベルトが胸のポケットからペンを取り出すと
サラサラとサインをしてペンの後ろ部分をカチッと押したら文字が空中に浮かんで一瞬だけ大きくなって消えた。
『わぁ、凄いね。どーなってるの〜?』もえ
ロベルトは説明に困って「これでお金を支払えたんだよ」とだけ言った。
『へ〜。凄いね』
「さぁ、次は両替所に行こうか」ロベルトはもえを抱き抱えた。
『ん?今ので支払えば良いんじゃないの?』
「仮想金貨では支払えないお店もあるからね』
会計を終えてお店を出た。
もえとロベルトが通りを歩いていると
人工的に造られた池があった。
そこにボールが入ってしまったみたいで、子供が2人めそめそと泣いていた。
子供達はもえより年齢が低いみたいだ。
池をよく見ると噴水になっているようで水の噴射の突起が並んでいた。
もえはその突起の上を歩いてボールの所まで行き、ボールを池から拾い上げると突起の上を歩いて戻って子供にボールを渡してあげた。
その様子はまるで水の上を歩いているかの様に周りで見ていた天使達には映った。
おぉ〜……と感嘆の声が漏れた。
暫く行くと美味しそうな匂いが漂ってきた。
(あの屋台からだ)と、もえは思ってジ〜と瞶めた。
ロベルトは屋台でパンを注文した。丸いパンだ。中にソーセージみたいなお肉が挟んである。
ロベルトは支払いをしようとしたが店主が手で遮って「イッツフリー。サービス、サービス」と言った。
店主もロベルトのファンらしい。
暫く歩くと座り込んだ乞食が居た。
乞食はもえとロベルトを一瞥するとぶっきら棒に右手を出した。
もえはもえの足元に落ちていた石を拾って欲しいのだと思った。
もえはしゃがんでこぶし大の石を掴んで拾った。
それを乞食に渡そうとしたが、ロベルトがもえの肩をポンと叩いて間違いを教えた。
ロベルトはさっきのパンをもえの石と交換した。
そのタイミングで偶然、荷物を曳いた馬車が傍を通り過ぎた。
もえはパンを乞食に渡してあげた。
乞食は一瞬、困惑した表情を見せたがすぐにパンに被り付いた。
乞食は泣いた。ボロボロと涙を流し鼻水を垂らし、泣きながらパンを噛み千切っている。
もえには乞食が何故泣いているのか理解出来なかった。
遠巻きに見ていた天使達からまたもオォ……と感嘆の声が漏れた。
もえが拾った石をロベルトがパンと取り替えた瞬間に通り過ぎた馬車が陰になって天使達からはよく見えていなかった。
天使達にはまるで、もえが石を拾ってパンに変えた様に映った。
天使達がヒソヒソと囁き合っている。
「あの子……いえ、あの方は水の上を歩いたわ」
「石をパンにも変えたよな」
「そう言えばさっきレストランで水をワインに変えていたわよ」
もえが飲んでいたのは葡萄ジュースだったが[人は見たいものしか見ない]の格言通り水をワインに変えたと勘違いしていた。
「まるで天使教の聖書に出てくる教祖様じゃないか。まさか、ははは……」
「あとは悪人を更生させたら完璧ね」
その時ビー!ビー!と音が鳴り緊急エリアメールがロベルトと天使達に届いた。
ロベルトは魔法のペンを取り出すとボタンを押したらしく空中に文字が浮かんで左から右へ流れて消えた。
もえには読めない文字だった。もえが天使達を見ると天使達は頭上の輪っかに触れている。顔の前に何か文字が浮かんでいて熱心に読んでいた。
『ねぇ、何があったの?』もえは不安そうにロベルトに聞いた。
「これから行く両替所でラピーナがあったらしい」
『らぴーな?なにそれ??』
「強盗」
『ゴートーってなぁに?』もえが可愛く首を傾げた。
「悪い事して両替所からお金を盗む事さ、脅したりしてね」ロベルトは怪獣のポーズでガオー!とした。
『キャー、いや〜コワイー』と、もえは楽しそうだ。
タタタタ……もえとロベルトが路地の入口で追い駆けっこをしていると、黒いマントの人影が全力で駆けて来てもえとぶつかりそうになった。
「アッ!」マントの人は足にグッと力を入れたら反動で身体が宙に浮いて半回転しながらロベルトに飛び掛った。
ガシッ!ロベルトと激突した。
普通の人なら双方倒れている場面だろうが、lロベルトは反射神経が凄くて飛来して来る黒い物体をガシッと受け止めた。黒い物体が人である事はすぐに判った。ドシャ。
黒い物体はバタバタと体勢を立て直して起き上がろうとしている。
マントのフードが捲れて顔が見えた。女だ。何故か異常に興奮していて落ち着きがない。
女はハッとして「ロベルト、、」と呟いたかと思うとみるみる表情が強張った。
女はどこから出したのか、ナイフを取り出した。しかも赤黒いドロッとした液体が付いている。
ロベルトはメイン武器の大鉈の剣を置いてきた事を心底後悔した。完全に油断していた。
女は逆手に持ったナイフを持ち上げた。絶対絶滅のピンチ。ロベルトはグッと覚悟をした。
女は背後からの気配に寒気を感じた。
ビュッ!突風がナイフを弾き飛ばした。カランカラン。
振り返ると幼女が右手を前に出していた。
再び別の武器を取り出してロベルトの方を向くと、気を失った。
ロベルトが拳骨を脳天に振り下ろしていた。
『ゴートー?』もえがトテトテと駆けて来てロベルトに聞いた。
ロベルトは女の顔を覗き込むとハッとした。
端正な顔立ちでやや吊り目だ。癖っ毛の髪を一カ所に纏めている。
瞳はエメラルドグリーンだが気を失って瞼が閉じられており、長いまつげが美貌を際立たせている。
「盗賊アイリーンだ。あぁ、悪い奴だ」
『ふ〜ん、こんなにキレイなのに悪い子なんだね』
「やー、アトラクティブバッドウーマン」駆け付けた野次馬の中の1人が言った。
インパネスコートと呼ばれるクリーム色のロングコートにハンチング帽子を被った男がもえには何だか特徴的だった。
天使達の誰かが通報したらしく天の国の騎士が馬をかって駆け付けた。
周囲で一部始終を見ていた天使達はもえを[聖女]に認定した。
〜海洋冒険4日目終了〜
聖女は魔女?
もえが色々やらかします。




