第19話ひかる君の名前の由来
名付け親
「政治はとても大事なものだ!我々の世界では完全分業制で其々が得意な仕事を担当する事によって効率良く生きている。社会の歯車を回すには各々の歯車があるのが大前提だが、政治という潤滑油が無いとギシギシと軋むものだ。社会の歯車に成るのがダサイとかいきがっている若者がいるが、歯車に成れない奴は只の寄生虫だ!」
『ふ〜ん、そうなんだね』
〜ひかるの家にて〜
ひかる君がお祖父ちゃんの熱弁を聞いている。
子供には難し過ぎる話だが、ある程度、理解はしているみたいだ。
「そうだぞ。[さや]も立派な歯車に成るんだぞ」祖父
『僕の名前はひかるだよ。2歳の時に[さや]から変わったんでしょ?』
「ふん!ワシは[さや]の方が良かったがな。さやが自分で好きな名前を名乗っていいぞ。昔の騎士達はコロコロ替えていたからな」
『そうなんだね、考えとく』
「どうせなら、もっと強そうな名前にしろってんだ」と言って、手に持っていたエールのジョッキを飲み干してテーブルに叩き着けた。カン!
「お義父さん、飲み過ぎですよ」ひかるの母
「そもそも、ひかるって名前に替えたのも、昔、あいつが惚れていた女から取ったものだか、、、」言い終わらないうちに失言を悟った。
「な、ナ・ン・デ・スッテ〜!?」優しそうなお母さんが鬼の形相だ。
「ひっ」
お母さんが部屋から出たかと思ったら手に棘の付いた鞭を持って戻って来た。
「詳しく訊こうじゃありませんか、お義父さ〜ん」
「ひぃい、お、落ち着くのじゃ、、、」
何か危なそうなので家から出て散歩する事にした。
ガチャリ!
ガッシャーン!背後から音がしたけど気にしない事にした。
世の中には知らない方が良い事もあるね。
ピ〜〜〜ポ〜〜〜ン!
街をブラブラしていると紙芝居屋さんが来ていた。
紙芝居屋さんは色んな物語りの紙芝居を観せてお菓子を売るお仕事だ。
音を聞きつけた子供達がワラワラと集まって来てワイワイとしている。
子供達は紙芝居の前に座った。
僕もその観客に加わった。
今日のお話しは[グラディーノ]というタイトルらしい。
紙芝居屋さんのおじさんがリヤカーから机を出してその上に10数枚の紙芝居のボードを置いた。
「はじまり、はじまり〜。
昔々、ある大きな建物の地下奥深くにスラムがありました。
建物は石造りで灯りはいくつかのランプがあるのみの陰湿な所です。
環境は酷く、泥と汗まみれの男達が暮らしています。
質素な食事を食べ、悪臭に満ちていて、男達は常に怪我が絶えません。
そんな環境に物心付いた時から住んでいるディーノという子供がおりました。
同じ境遇の子供達が何人も住んでいて仲良しです。
7歳になった年に初めて地上に出られました。
しかし、そこは多くの人、人、人。丸い広場の上には観客席が設けられており、
そこに座る醜悪な人々が好奇の目を向けてくる場所だったのです。
そこでは獰猛な獣と戦う見世物が行われており、
その剣闘士として地下深くに飼われていたのでした。
初めて地上に出された時、ディーノは蛇と戦わされました。
一緒に出された友達は逃げ回ったり、泣き出したりしていました。
ディーノは沸々と友達を泣かす蛇に怒りが湧いてきて、兵士に渡された棒で蛇を思いっきり叩いて蛇を撃退しました。
観客達は逃げたり泣いたりした子には冷たく罵声を浴びせ、
勇敢に戦ったディーノには拍手を送りました。
強者が喜ばれるのを理解したディーノはその後も必死に戦い続けました。
絶対に生き残ってやる!人並みの幸せを掴んでやると。
ディーノの精神に炎が宿りました。
10年後、燃える様な精神を持ったディーノは強敵ライオンを仕留めて、市民権を得ました。
そして奥さんを娶り幸せに暮らしましたとさ、
めでたし、めでたし」
パチパチパチパチ……
お菓子を売って片付けている紙芝居屋さんにひかる君が質問しました。
『そのお話しって、おじさんが考えたの?』
「あぁ、そ、そうだよ」
『ふ〜ん』なんだか誰かのお話しをパクっている気がしたが気にしない事にした。面白ければいいか。
「ほ、本当だぞ」
『ところで[燃える]ってどんな感じなの?』
「燃える事?何かが燃えるとパチパチ言って、危険で、熱くて、でも魅惑的で、綺麗で、触ると熱くて火傷しちゃうかな。あ、丁度あんな感じだよ」
紙芝居屋さんが指差す方向を見ると紫の木がボウボウ燃えていた。
『凄い!これが[燃える]か』
そばには老兵が立っていた。
次話は子供達の海洋冒険に出発します。




