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27.優しいウソ


 廃城ダンジョンの探索も大分進んだ所で、城内の部屋を借りてちょいと一休み。


 長丁場に備えて、安全に休めるように結界の魔道具も用意してある。結界にもいくつか種類があるが、定番となるのは二つだ。


 一つ目の≪物理結界≫は、一定の大きさを超える物質は通さない、という設定がされている魔術文字だ。細かい部分を俺がいじる必要もない。


 二つ目は魔力を通さなくなる≪魔力結界≫。魔石や人の体内の魔力にも反応するので、ゴーストのような精神体だけでなく、ほとんどの生物を通さない。半面、完全な物理のみには無力なので、弓矢や投石などは通してしまう欠点がある。


 この二つを揃えれば、危険なダンジョンの中でも仮眠も出来る、というダンジョンに挑む人にとっては必需品だ。


 もっとも、魔道具に使う魔石を超える攻撃を加えられると破壊されてしまうので、熟睡は厳禁なんだそうだけど。


 ダンジョン探索も佳境、ダンジョンボスとの戦いを控え、安全地帯を確保した俺たちは腹ごしらえをすることにした。


 俺のアイテムボックスの中には食材も色々確保してあるけれど、今日はミゼさんのアイテムボックスから、いつものバスケットが取り出された。


 中身はサンドイッチだ。ピシッと綺麗に並んでいるそれらを、崩さないように気をつけながら一つ手に取る。


「いただきます。……っ!? おいしい!」


 今日は当たりの日だ。


 向かいでサンドイッチを口にするミゼさんも出来に満足そう……と思ったら、何だか複雑な表情を浮かべていた。


「ミゼさん?」


「……ユーゴ、すまん」


 突然頭を下げられた。


「な、何がですか? ご飯は今日もおいしいですよ?」


 たまに外れの日があるけれど。文句などと失礼な事をした記憶もない。


「お前が美味いと言う日は……全て父さんの手作りの日なんだ」


 な、なんだってー! あのおにぎりだけじゃなかったのか?


「え? で、でも昨日のパスタとか!?」


「あれも父さんが。私はサラダを手伝ったくらいだ」


「この間のお鍋とか、一緒に作ったはずだけど……?」


「あれは鍋のスープを父さんが用意してくれていたんだ。……私が味付けした時は、お前はいつも微妙な顔をしている」


 顔に出てた! この正直者め!


「いつも嬉しそうに食べているのがな。おにぎりの事もあって云い難くて」


 別に魔王のおにぎりが嫌だったけわけじゃないけどね! 心の準備が欲しかっただけで!


「なんと言えばいいのか……。今度、一緒にゼザに料理教えてもらおう?」


 すっかりしょげてしまったミゼさんが、こくりと小さく頷いてくれる。


 美味しいサンドイッチを味わうはずが、何とも気まずい微妙な空気を味わうことになってしまった。




   ◇




 気を取り直して、ダンジョン攻略だ。


 俺たちが休んでいたのは三階の上がってすぐの部屋だ。これまで探索した範囲を考えると、おそらく最奥も近いはず。


 息を潜めながら廊下を進んでいると――


「……ミゼさん。あれ」


「……多分そうだろう」


 その部屋の前には、バラバラにされたスケルトンの骨にグリーンスライムの粘液がまぶされ、さらにはガーゴイルの残骸も転がっていた。


 ガーゴイルは翼の生えた銅像の魔法生物で、自然に魔力が帯びた天然物と施設の警備用に造られた物とがある。このダンジョンにいるのは後者のようだけど、これは魔王ゼザとは関係なく、昔からこの建物にいた魔物らしい。割合も少なくてスケルトンの十分の一くらいしか見ていない。


 もしかしたら、バランス調整のつもりだったのか?


 スケルトンに比べれば動きも素早く頑丈なガーゴイルは、数を減らしていたのかもしれない。誰が、などとは考えるまでもない話だ。


 そんな貴重なガーゴイルが、なぜか扉の前で瓦礫になっている。


 間違いなく何かある。


 俺たちは慎重に部屋の扉を開けた。


 そこにいたのは、やたらとキレイな鎧に身を包んだゴーレムだった。青く光る鎧に、兜の中から赤いモノアイがじっとこちらを見つめている。


「……ミゼさん、アレって何か知ってます?」


「父さんのとっておきコレクションの一つだ」


 ゴーレムにばっちり見覚えがあるのか、ミゼさんはこの日何度目かの深いため息を吐く。


 さらには、部屋の隅に転がっている骨が、妙に存在感を放っていることに気が付いた。

 何だろう。何故かすごく気になる。こんな時は、鑑定。


≪ワイトキングの残骸≫

≪かつてはワイトやスケルトンを使役する事が出来た危険な魔物。核が壊れればただの骨≫


「ダンジョンボス殺しとるやないかい!」


 思わず出たエセ関西弁が、乗っ取られたボス部屋に虚しく響いた。


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