表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/203

18.つくって あそびたい


 魔道具イジリはとても楽しい。


 明かりの魔道具以外にも、コンロ型魔道具や冷蔵庫型魔道具など、生活必需品は一通り見させてもらった。


 どの魔術回路にも基本になる≪発動≫と≪維持≫の魔術文字があり、他に≪効力≫≪上昇≫≪低下≫などが物理的な切り替えスイッチとセットで効果を発揮していた。


 あまりにも簡素だった明かりの魔道具の構造と比べ、いよいよ本格的な魔道具たちにワクワクが止まらない……のだけれど。


「この魔石で出来るのはこれくらいだ」


 チャリチャリと手の中でゴブリンの魔石を弄んでいた鬼教官様に、ピシャリと切り捨てられてしまった。


 水生成の魔道具などもゴブリンの魔石で動くのだけれど、魔術回路の構造としてはほとんど変わらないからと割愛されてしまった。


 たとえ学ぶことがなくても、いじるだけでも楽しいのにな……。


 不満が漏れ出ていたのか、コツンッと鬼教官ミゼさんに拳骨を下ろされてしまった。


 はい、すいません。文句なんて滅相もないです。


 勿論魔王ゼザやその娘のミゼさんなら、ゴブリンなんて霞むくらいの上質な魔石の数々を持っているらしいのだけれど、「折角なんだから、自分の力で手に入れたら?」と魔王ゼザに笑顔で言われてしまい、上のランクの魔道具作成はお預けとなってしまっている。


 水生成などを割愛した分、魔術言語の勉強を進めてもらえるので、俺も得をしている、はずなんだけどなあ。


 「それはそれ、これはこれ」とついつい未練がましい目で魔道具の山を見てしまったのがバレたのか、またしても鬼教官様の拳骨を食らうのだった。




 さて、魔道具作成の授業が魔術言語の勉強の時間に変わったように、ゴブリン狩りの時間にも変化があった。


 まずは、俺のレベルが6まで上がった事。


 自分を鑑定してこっそりガッツポーズをしていたのだけど、ミゼさんからすると「だから何?」という程度のことだったらしい。


 レベルよりも実戦での動きを見ているそうです。ええ、きっと彼女は良い先生です。たまには褒めて伸ばしてくれてもいいと思うのだけれども。


 とまあ、実戦優先の鬼教官様の事。ゴブリンとの一対一なんていう生易しい訓練はすぐに卒業となり、二対一、三対一と一度に相手にするゴブリンの数が増えていった。


 最初こそ傷だらけにされながらも、結局相手はゴブリンだ。個々の力は人の子供くらい、ミゼさんが見守っているという安心感もあって、慣れればどうということもなくなってしまった。


 しかし所詮は≪適性・鑑定士≫。レベルが多少上がったくらいでは、ゴブリン相手であっても、ゲームのように敵の攻撃を物ともせずに纏めて薙ぎ払う、なんていうことはできそうにない。数が増えても隙を探して逃げ回る時間が増えるだけとあって、ミゼさんも集団戦による訓練は打ち切ることにしたようだ。


 そしてその代わりに、質が上がった。


「ぐるるるぅ……」


 今俺の目の前では、なんとも可愛らしいワンちゃんが渋く喉を鳴らしていた。


 大きさは大型犬くらいだけど、身体はドーベルマンのように細くて体毛がフサフサしているので、大きさからはそこまでの脅威を感じない。


 シュッとした顔はシベリアンハスキーに似てる気がする。大きく裂けた口元から覗いている牙は凶悪だ。


 うん。ていうかこれって。


「あの、こちらは?」


「山にいたウェアウルフだ。名前などないが、もしも付けるのなら後が辛いだけだぞ?」


 「何を聞いているんだこいつは?」と首を傾げるミゼさんに、気を抜いている姿はなんか可愛く見えちゃうなー、と思わず見惚れる――なんてバカなことをしている場合じゃない。


 狼じゃないか! 初めて見た! かっこいいな!


 なんて興奮している場合でもないか。


 ウェアウルフはいつでも飛びかかってやるぜと息巻いているが、それを首にしっかりと繋がれた鎖が押し留めている。俺の準備が出来ていると判断すれば、すぐにでも鬼教官様は鎖を外してしまうだろう。


 赤茶けた毛並みは、汚れてくすんでいる。誰かのペットではなさそうだ。俺に尻尾を振って懐いてくる、という展開は期待できない。


 その前に、と。魔眼さんお願いします。


≪ウェアウルフ レベル5≫

≪狼の変異種。聴覚と嗅覚が鋭い≫


 うーん。なるほど。


 大きい音とか何か強い臭いで鼻をダメにするとかが有効って事かな。


 今はどちらも無理そうだ。


 大きな音が出る物は持って無いし、臭いは……何かをしたとして、その臭いが体に付いたら嫌だなあ。その後にミゼさんからの視線に耐え切られる自信がない。


 そもそも今は訓練なんだから、そんな小手先の技に逃げる発想はダメか。


 鬼教官様からもらった装備を確認する。右手には一般的なロングソード。左手には丸い小さい盾のバックラー。身体を覆うのはソフトレザーの鎧。


 もっと良い装備がいいなーという不満は見抜かれたのか、「扱えんの? お前に?」みたいな目で見られてしまったので、素直に装着させて頂きました。


 革鎧は軽くてほとんど気にならないです。ミゼさんの見立て通りでした!


「始めるぞ」


 俺が装備を確認し終わったと判断したのか、鬼教官様は容赦なくウェアウルフを繋ぎ止めていた鎖を外してしまった。


 ちくしょう、やってやる! 憧れの上質な魔石のために!


※加筆 ウェアウルフの細かい描写を追加。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一日一回、ポチリと押していただけると嬉しいです
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ