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異世界召喚されたけど、もらったチートが鑑定だった。  作者: 十乃字
第一章 神様、リセマラしてください
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11. 第一村人が魔王だった件


 予想外の鑑定の魔眼の成長に一喜一憂し、妙に気疲れした俺は、寄り道を減らして真っすぐに山道を歩いていた。


 三時間程歩き続け、ようやく森が開けると、目の前には見慣れない様式の異国情緒溢れる麓の町が迫っていた。


 意外に真新しい家屋が立ち並んでいるのは、遺跡神殿の再利用のための拠点として、町が拡張されたのかもしれない。


 町の森側に、簡易な倉庫のような屋根だけの建物が幾つも並んでいるのを見て、何となくそう思った。


 見張りも何にもいないので、町に入って行っていいのだろうけど、人里を前にした興奮を抑えて少し考えてみる。


 こういう町は俺みたいな余所者がほいっと紛れ込めるものなのだろうか?


 自分の恰好を見下ろす。


 流石に学生服は来ていないけれど、ラドセニア王国――セイラの用意してくれた、この世界で一般的な服というやつを着ている。


 パムの実で膨らんだ鞄。傍目には普通に見える訓練用の鉄剣。旅人や冒険者とも言えないこともない。


 冒険者。古代の遺跡ダンジョンや危険な魔物と戦う事などを生業にするこの世界固有の仕事だ。


 そんな冒険者が入り浸るような街なら、俺もすんなりと紛れ込めると思ったのだけれど……。


「あんまり人がいないなあ……」


 家の物陰に隠れながら、町の通りを盗み見る。山道を歩くのに時間がかかり、時刻は夕方が迫っている頃。


 まばらに道行く人はみんな地元の人ばかりなのか、荷物は持っていても武器なんて持ち歩いている人はいなさそうだ。


 兵士の一人も見かけないとなると、セイラや召喚された皆も、もうこの町にはいなさそうかな。知り合いに見つかる事はなさそうだけど……。


 逃げ出したことはバレているだろうか。神殿には誰もいなかったとはいえ、宰相ヘスオバルの部下の誰かが様子を見に戻る可能性もあるかも?


 指名手配とかされたらどうしよう、といつまでも物陰で尻込みしていると――


「もし、そこの方。どうかしましたか?」


 穏やかな男の声が、背後から聞こえてきた。


 気のせいではない。これは間違いなく俺に話しかけている。どうしよう。


「あ、あはは。実は、ちょっと知り合いに見つかるとマズイ状況でして」


 って俺は何をバカ正直に! もっと誤魔化せばよかろうに!


 後悔先に立たずとはよく言ったもので、頭を抱えたい衝動を我慢して、背後の男の様子を伺う。


 男は俺の不穏な言動にも動じる様子を見せないで、


「そうですか。そういえば昨日、山の方から王女様とその護衛の方々が大勢降りてらっしゃいましたね。あの中にでも知り合いが?」


「ええ、まあそんな所です。全然、下っ端のペーペーの人なんですけど」


 適当な人物として、俺なんかの訓練を担当してくれていた、気さくで付き合いのよかった王国兵士ゴランの事を思い出しながら、男にそう返していた。ゴランは勇者の訓練を任されるくらいには偉い立場のはずなので、下っ端ではなかったのだろうけども。すまんゴラン。


「っふふ。何やら事情がありそうですね。それでしたら、安心してください。皆さん既にこの町を出て、王都へと向かっているはずですよ」


 おかしそうに笑う気配に何かいい人そうだな、と安堵した俺は、ようやく振り向いてその人の顔を拝んでみる事にした。


 特に不審がる様子も見せないで俺の背後に立っていたのは、少し長めのシルバーの混ざった青紫色の髪の、整った顔に穏やかな微笑みを浮かべた気の良さそうなお兄さんだった。


 あれ、でも、なんか……。


「ああ、でも」


 モヤモヤと何かが引っかかっていると、男の人が思い出したように話を続けていた。


「何でも、王女様たちは山の遺跡で勇者様を召喚なさったとかで、その中の一人は問題があったため、遺跡に投獄してきたのだとか?」


 穏やかな顔のまま、首を傾げる。


「も、問題?」


 モヤモヤが気になりながら、男の人の話も気になる。


「ええ。ここだけの話なんですが――」


 あ、そうだ。


「――人の心が読めてしまうのだとか?」


 鑑定してみれば何か分かるかも?


 何となく俺を窺い見るかのような様子の男の人を見る。見てしまう。見てしまった。


≪ゼザ・タフティーグ レベル65≫

≪魔王 適性・魔法戦士≫

≪魔族の王 友好的≫


 …………何でこんなところに魔王が?


 気が付くと、青紫の髪からニョキリと黒い角が二本覗いていた。いつの間に。


「へーそうなんですかーじゃあ俺はこれで」


 バレちゃダメだバレちゃダメだバレちゃダメだ。


 がしっと。


 振り向いた俺の腕を、男――魔王ゼザがにこやかに微笑みながら掴んでいた。


「しかし魔王からは逃れられないのだよ」


「それ自分で言っちゃダメでしょ!?」


 バレてた!?


用語解説コーナー


『第一村人』

 ゲームにおいて、「ここはチュートリアルの村だよ」などと村の名前を教えてくれる、村で最初に出会うように配置された村人。又はそんな言動をする人。


 近年では技術の進歩などにより、町や村に入った時点で『チュートリアルの村』などの情報が画面上に表示されるため、彼らは絶滅危惧種である。


 なお、魔王は町名を教えてくれていないので、この定義上では第一村人ではない。


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