表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フィリバスター牛山2 ~史上最長の呪文詠唱~  作者: 空な鍵
第二部:神話(神獣討伐編)
27/47

原罪 壱:キセル乗車

ミノル「私のフィリバスターが真価を発揮するのは戦争時です。人は下らないことで争います。私はその争いの間に神の声として割って入り、神として演説するのです。そしてこれが重要なのですが……私が喋った後、さっきまで争っていた者たちは全員眠っているのです。」


彁「それが私と殻、そしてラムネの合体特殊能力だ。フィリバスターの真価は時間稼ぎのみにあらず。望むならば退屈な演説により全員を寝かしつけることができるという、催眠に近い効果を持っている。その催眠効果をラムネから与えられたのだ。だからこそ、貴様とラムネを平和の神に任命することができたというわけだ。」


ミノル「なるほど。とにかく私は『神の声』を多くの人に聞かせました。その神の声を聞いた人間は英雄かもしれないし、狂人かもしれません。ただ一つ確かなことは、今回の黒い雨の先祖たちは全て、特殊能力を持っているということです。」


ラムネ「ふーん。ミノルもなかなかやるね。」


ミノル「ではお話しましょう。卵が孵り、神として誕生した男の話を。まず、1人目~9人目は黒い雨の先祖たちと呼ばれることになりますが、残念ながら1人を除く全員が孵化に失敗し、理性のない神獣になってしまったようです。このような孵化の失敗は珍しいことではないのは分かっていました。一応自分で失敗しておいて言うのもなんですが、このストーリーには重大な意味が含まれています。確かに、孵化する瞬間私は彼らに『名』を与えました。彁や妛のように一文字をあてがうというルールです。これらの漢字は用途が分かっていない。だからこそ新しくあてがう時に、創作漢字を用いたのですが、これが失敗でした。既存のもののつぎはぎで作られた漢字をあてがわれた者は、神獣になってしまいました。名も無き獣としてこれからは扱われるでしょう。だからこそたった一つの成功例が重要なのです。私は彼に無理やり名付けました。その名前は『椦』です。他の人間は名前を付けてもすぐにはがれてしまう。皮膚移植しても皮膚がなじまないことがあるのと同様に、名前を付けても名前と実態がなじまないのです。やはり神として生まれても、それ以降の生存は私たち次第だということです。」


ミノル「さて、前置きはこのぐらいにして、椦の人間時代の話をしましょうか。椦はキセル乗車の常習犯でした。私が人間に伝えた、『9つの見逃されやすいが注意しなくてはならない原罪』のうちの一つです。大きな罪は往々にして気が付きます。人を殺してはいけない。物を盗んではいけない。当たり前です。何故神がそんなことをわざわざ言わなくてはならないのか。だからこそ大きな罪に隠れて見つからない小さな罪を告発することこそが、人間に対する最大限の配慮というものでしょう。というわけで、9つの見逃されやすい罪のうちの一つに『キセル乗車』があります。他の8人が獣、この椦だけが理性を保っているのはキセル乗車がこの9つの罪の中で最も重大なものだからです。なぜか重要なのか。飛躍です。キセル乗車を許すとそれは飛躍を許すことになるからです。その男は、A駅からB駅分の乗車券しか払わず、Y駅ぐらいまで移動することができたのです。彼は特殊能力者だったのでしょう。改札を通過した瞬間、ワープできるという。なぜならばA駅からB駅までの切符代を払ったならば、行ける距離の限界は当然、B駅までだからです。Y駅ではありません。彼は些細な罪を犯しました。人は距離という制約から逃げられません。なぜならば人も空間も同じ3次元に住んでいるからです。この距離制約というものを著実に現したのがこの国に張り巡らされた公共交通機関の網でした。行きたいところがあるならば、公共交通機関を乗り継いでいくことが必要です。これこそが3次元空間の連続性を最も身にしみて体感する時ではないでしょうか。この連続性を破り、飛躍という罠にはまってしまった彼こそが、9つの見逃されやすい罪のうちの一つに当てはまるのではないでしょうか。キセル乗車がなぜキセル乗車かと言うと、キセルの両端と真ん中の素材が違うという説もありますが、ここは別の説を押したい。キセルは曲がっているのは常識でしょう。そう。椦は3次元空間の曲がり・ゆがみを利用したのです。彼はA駅の改札口の入ったところすぐにある空間のゆがみを利用して、Y駅までワープしたのです。おそらくこの力は人間の者ではありません。IQという指標があります。これは空間認識能力を主に測るものでもあります。私の見立てによれば、空間のゆがみとワームホールを感知できる椦のIQは推定450。稀代の大天才でしょう。椦よ。私たちはあなたの力を認め、あなたを神として歓迎します。あなたの瞬間移動能力。私たちに必要なものです。しかし私はあなたをまだ試練にかけなければなりません。……『飛躍の神』椦よ!!黒い雨を受けたあなたに、他の8匹の獣を討伐することを命じます。あなたの同期を殺しなさい。」


椦の殻(いや、俺瞬間移動なんてできないんだけど……。)


椦(心配はいらない。黒い雨を浴びた者は、その才能が開花する。


椦(それが勘違いであってもだ。怯むな!行け!)


椦の殻(まじかよ!!他の8匹を殺せば、正式に神になれるんだな?やってやるぜ!)


椦「お任せください。必ずや、なりそこないたちを殺して見せましょう。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ