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プロローグ
自分がわからなくなるほどの路地を抜けた先にある、小さなレンガ造りの古い家。
降り注ぐ光の柱が交差し、まるで手招きするかのうにゆらゆらとゆれる。
自分の欲望に抗うことなくその誘いにのり、扉を開ける。
すると、薄暗い家の中を外から差し込む光が照らしだす。
かすかなほこりがきらきらと舞い踊り、幻想的なこの風景に魅せられたぼくはこの家が宝箱のように思えてくる。
だからぼくは光が届いていない部屋の奥を見てみたいという衝動にかられ、一歩、足を踏み出した。
"ねえ、僕、君の名前を知ってるよ"
青年は少年のようにわらった。