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交渉

「ざっけんじゃないわよ!!拐っておいて嫁に来いってどういう事よ!!」


 その言葉は誰もいない部屋に虚しく響いた。あの後ジンは一通りの説明をして部屋を出ていった。彼が求めているのお伽噺に出てくる魔女の事らしい。ジンによればリリアと結婚しなければ次代で家系が途絶えるという。その事自体は可哀想だと思いながらも拐われて囚われているこの状況では同情出来ない。


 逃がす気は無いと彼は言った。けれど、そんな横暴な事が許されるのだろうか。リリアは不安を感じるものの急激な変化に疲れてしまい、そのまま眠りについてしまった。



***



 厳格という言葉はこのひとの為にあるのかもしれない。そう思わせる女性が坦々と説明を続ける。何故か説教を受けている気持ちになるのは彼女の話し方の所為だろうか。愛想というものが一切無い女性を見つめながら思った。

(結構なお歳なのかしら…)

 のんびりとそんな事を考える。


「…リリア様聞いていらっしゃいますか?」

「えっ?あぁ…あはは…」

「では、宜しいですね、先程申しましたように明日から淑女教育をさせて頂きます。王妃教育は後々にしていきますので心して取り組みますように」

「イヤだって言ったら?私にとって王様がどうなろうと全く関係ないし。国民を蔑ろにするのってどうかと思うんだけど」


 自分で望んだ訳では無い。それなのに何故教育を受けねばならないのか。ただ解放してくれたらそれで良いのにとリリアは心の中で溜め息をついた。



「関係ないとは冷たいな」


 不意に後ろから声が聞こえた。振り返ると予想通りジンが扉の前に立っている。口元だけ笑みを作り鷹揚に近づいてくる。どこか隙を感じさせない雰囲気は武人だからだろうか。筋肉質な身体つきだと服の上からでも分かる。


「リリア嬢と俺は夫婦になるというのにつれないものだな」

「勝手な事言わないで!!」

 怒りの為かリリアの白い頬が紅く染まる。


「どちらにせよ…その瞳では貰い手などいないのだろう?ならば丁度良いではないか。一国を背負う立場だ。金銭で不自由はさせない。宝石も、衣類も思いのままにさせよう。それだけでも充分幸せだろう?」

「……それだけが幸せの基準なんて随分寂しい価値観ね。ツマラナイわ」

「ふぅん…そこまで言うなら俺にお前の幸せを教えて欲しい」

「それは…!!色々よ」

「それなら、お前が言う色々を見せてみろ。見せるまではここに滞在すればいいだろ。俺が理解した上でお前を幸せに出来ないなら結婚はしなくてもいい」


 そう言うとジンは不敵な笑みを浮かべた。余程自信があるのだろう。けれど彼がリリアの素朴な幸せを理解出来る訳が無いと思い、リリアはこの話にのる事にした。


「仕方ないわね。約束よ!!」

 穏やかな日々を取り戻すとリリアは心に誓った。

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