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トリツカレ  作者: 白蜘蛛
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FN Five-seveN

ノヅチセキュリティーが開発を目指す拳銃型の退魔武装は、術紙や術針の扱いが不得手な者に向けた装備で、呪術弾を発射して霊体を攻撃する事を目的としている。

いずれはオリジナルを開発するのだが、まずは現行使用されている拳銃で呪術弾を発射するプロトタイプを開発中だ。

礼子は使用する拳銃を選択する為に、3種類からのトライアルを実施するという。

トライアルにおいて考えなければならない点がいくつかある。

まずは携帯性。日本、しかも都市部での使用を考えれば必須と言えよう。

つぎは装弾数。勿論大いに越したことはない。

そして使用弾。これが一番難しい所だ。弾丸はノヅチセキュリティーの子会社であるNK精機で製造されるが、撃ち抜いては呪術をかけられないので特殊なゴム弾を使用している。

発射されるとの弾頭が十字に開くタイプのゴム弾にタングステンの芯を備えたもので、標的に突き刺さるものの貫通力を抑えるという相反する効果が期待できる。ただ、その分空気抵抗が大きく有効射程距離は20mほどしかない。

しかし投擲する術紙や術針に比べれば十分と言えるだろう。


「わたしはPPKだと思うけどね」

「弾数的にはFNですが」

「あれは口径が小さい。大変なんだよ、弾を作るのがさ」

「貫通力とストッピングパワーを兼ね備えてはいますが、あくまで実弾での話ですからね。確かに向いていないのかもしれません」

「他に意見は?」

「俺的にはベレッタが好みですが、弾数は予備マガジンを持ってりゃいい話ですし、携帯性を優先すべきだと思いますね。それに使用者を選ぶ火器は避けた方が良いでしょう」

「よし、じゃPPKでいいね?」

「あの・・・」

「何だい?颯太もサイズ的にPPKが合ってると思うけど」

「いや、エアガンじゃダメなんですか?」

「良い発想だ。ただBB弾じゃ話にならないんだ。弾幕張るってなら良いかもしれないけど対霊弾は手作りだからね、ばらまかれるとちょっと厳しい」

「そうでしたか・・・」

「いや待て、そういった意味ではセミオートランチャーのFN303も良いのかもな」

「しかし会長、あれは大きいし重いですから。使用できる場面は限定的でしょう。それに連射性能があまりに低い」

「よし、PPKに決まりだ」

「えっ、こんなに簡単に決めてしまうんですか?」

「少なくとも使用する人間には聞いているが?」

「ボクなんかより、サクラさんとかに聞いた方が・・・」

「サクラは銃なんかなくったって十分に闘えるんだ、術紙や術針を使えないお前達用なんだよ」

横を見ると岩城課長が頭を掻いている。

「まったく、男どもは不器用で困るよ!」

ダメ押しのような野津地会長の言葉にボクはうなだれるしかなかった。

ここで岩城課長が思い出したように言った。

「会長、トライアルはしないんですか?」

「あ、まぁ、面倒くさいからいいだろ」

「もしや会長が推してるPPK以外の意見が出たらトライアルをするつもりだったんじゃないでしょうね」

「ば、馬鹿な事言ってるんじゃないよ、試作のPPKは私が持つ。ベレッタは岩城が、FNは颯太が持ってるといい。ちなみに予備マガジンはそれぞれ2つだけだからね。これだってあたしが身を削って作ったんだ、無駄づかいするんじゃないよ!」

慌てた言葉が岩城課長の指摘が正しかった事を示していた。

ボクの頬はつい緩んだ。

野津地会長には意外とかわいいところもあるのだ。それは子供っぽさとでも言えば良いのだろうか。彼女は強く冷静クールでいながら、時として無邪気さを見せた。

それがそのまま彼女の魅力となっているのだろう。

「なに見てんだい!?」

「いえ、済みません」

「荒木、ついて来い。銃を確認して試射するんだ。模擬弾を準備してる」

「模擬弾?」

「言ったろ?お前達がパンパン消費する弾はね、私の手作りなんだよ。弾一発一発に呪術をかけてるのさ。試射で使われちゃ堪らないっての。わかったらさっさと行きな」

「模擬弾と言っても、作るのにはコストがかかる。今日のところは実弾を使おう」

「実弾って・・・」

「ごちゃごちゃうるさい!さっさと行きな!」

悪態をついた野津地会長は、ボク達にもう用は無いという感じで、電話機をプッシュしている。


ボクがドアを出た時、野津地会長の声が小さく聞こえた。

何かの指示をしているようだが、慌てて課長の後を追ったボクは聞き逃していた。

それはボクに向けられた指示ではなかったが聞いておくべきだった。

凄惨な光景と酷い臭いで混乱していたとしても聞き逃すべきではなかった。


「74-H13Bは篠原を行かせる。データ収集としてSPチームも同行させろ」


◇*◇*◇*◇*◇


ボクは岩城課長に連れられて更に1階下にある射撃場で銃の取り扱いから指導を受けた。

ボクに渡されたFNはPPKに比べると大きい。

もっと大きいはずの課長のベレッタとあまり変わらないように感じる。

ずしりとくる鉄の塊からは確かに力を感じる。これは会長特製の弾が放つ気のようなものだ。

「今入ってるのは呪術弾だ。マガジンを外してこれに替えろ」

渡されたマガジンはずっしりと重かった。

「これは実弾だ。マガジンには黄色いラインを入れてある。呪術を掛けてないゴム弾、つまり模擬弾は青色、呪術弾は赤だ」

「はい」

グリップにあるリリースボタンを押して外れたマガジンを受け止め、新たに実弾のマガジンを押し込んだ。

「ほう、なかなか様になってるな。撃つ前にイヤーモフを装着しておけ」

イヤーマフを装着すると、モワーンという血流の音が聞こえる。

フレームをスライドさせると、意外と軽いシャコッという震動と共にFN5-7の中で初弾がチャンバーに装填される。

撃ってみろという課長の声が小さく聞こえた。


パンッ


軽い音と共に強い反動リコイルがあった。

吊るされた紙の標的ターゲットに穴が開くのが見えた。

「リアサイトを調整しながら続けろ」

ボクは目で頷いて、射撃を続けた。

3つ目のマガジンが空になった時、課長がイヤーモフを外すよう手を動かした。


「講習は2時間程度と聞いていたが、これなら十分だ。模擬弾に替えて試射を続けよう」

「あ、はい、ありがとうございます」

「お前、射撃はともかく銃の扱いに慣れているようだが」

「はい、子供のころモデルガンが好きだったので・・・」

「そうか、銃というのは手に馴染むまでが大変だ。この点はナイフと同じだな」

以前、サクラさんから岩城課長は体術の達人と聞いた。

そんな岩城課長が銃とかナイフを持ったら無敵だな。

「相手が人間ならな」

「うぁ、え?えっ?」

「お前の考えている事は分かるよ。感情が目に出てる。俺たち戦いでは人間以上にそういう点が重要になるからな」

「はい。でも、拳銃を持つと少し気持ちが大きくなります」

「そうだ、だから力を欲しいヤツはてっとり早く武器を手にする」

「・・・」

「そして勘違いをするんだ」

「はい、分かります」

「あと、いくら慣れるためだろうと俺が許可するまでは持ち出すんじゃないぞ」

「はい。でも、課長から許可をもらったとしても、これって捕まりますよね?」

「勿論だ」

「じゃ、どうすれば・・・」

「注意をする事だな。万が一、逮捕されたら礼子さんが何とでもしてくれるだろう」

「大丈夫なんですか」


「多分・・・な」

「多分って・・・」


この日以降、射撃練習はボクの密かな楽しみになった。

そして数日後PPKが至急された。しかし相変わらずFN5-7はボクの手元にある。実弾使用として所持するようにとの事だった。

ボクは退魔士だ。

一人前とは言えないけど、実弾の銃を持つ必要なんてあるのだろうか。


「ゾンビ化を見ただろう?時には肉体を破壊せねばならない時がある。ここはしんどいところだが・・・そういう心積りでいてくれ」

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