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こんな夢を観た

こんな夢を観た「変な人に話しかけられる」

作者: 夢野彼方
掲載日:2014/09/27

 桑田孝夫とオープン・カフェでサンドイッチを食べている。

 この時期、日差しも和らいで、外の風がとても気持ちがよかった。

「知ってるか? サンドイッチってなあ、サンドウィッチ伯爵が発明した食いもんなんだぜ」ハムサンドをほおばりながら桑田がうんちくを披露する。

「実はそれ、俗説らしいよ。サンドイッチそのものは、もっと古くからあったって言うしね。伯爵の子孫が、アメリカでサンドイッチ専門店を経営してるっ、ていうのは聞いたことあるけど」

「まじかっ」出鼻をくじかれて、意気消沈する桑田。

「たくあんだって、本当に沢庵和尚が発明したかどうかわからないそうだし、言い伝えなんて、そんなもんだってば」

「そうかもなあ。おれも、後世に何か名を残してぇもんだぜ」

「『桑田焼き』なんて残せるんじゃない? ほら、前に桑田んちで食べさせてもらったやつ」わたしは皮肉たっぷりに言う。

「よせよ、あの話は」桑田は恥ずかしさのあまり、真っ赤になった。


 いつだったか、夕食をご馳走してやる、というので何人かで桑田の家に集まったことがある。

 その時に桑田が「腕を振るった」料理は凄かった。中鍋にシチュールウを4箱、まるごと入れたのだ。

 1箱1人前だと勘違いしてのことだが、裏の説明にはちゃんと、「4~5人前」と書いてあったはず。

 香りだけはおいしそうだったが、コンロから下ろしてみてびっくり。カチンカチンになったルーが、鍋に層を成して固まっているのだった。

「スプーンすら立ちませんね、このシチュー」スプーンですくおうと試みた志茂田ともるが言う。相当に力を込めているらしく、柄の部分がしなっていた。

「表面を削り取ってみなさいよ」中谷美枝子に言われ、まるで木版彫りのようにスプーンで削る。かつお節のような削りかすができた。

 それをみんなして皿に取り、一口食べてみる。

「うわっ、辛いっ!」一斉に吐き出す。

 それもそのはず。何しろ、正味16人分が濃縮されているのだから。

 「桑田焼き」と揶揄され、事あるごとにネタにされ続けているのだった。


 わたし達がそんな他愛もない話をしていると、どこからか見知らぬ中年の男がやって来た。なんとかというコメディ俳優にそっくりである。

「何だか楽しそうな話をしてるね。ぼくにも聞かせてくれないかな、ねっねっ、いいでしょ?」

 あんまり馴れ馴れしいので、お互いのどちらかが知り合いなのかな、と思った。

「ねえ、桑田。桑田の知ってる人?」ひそひそと耳うちをする。

「ば、ばかいえ。お前の親戚かなんかじゃねえのか?」桑田も困惑したように言い返す。

「知らない、知らないっ。なんなんだろうね、この人」


「えっ、何々? なんの話? ぼくにも聞こえるように、もっと大きな声で話してったら」ずずいっと身を乗り出してくる。どこまでも厚かましい。

 けれど、さすがに面と向かっては言えない。桑田もわたしも、気まずい思いで顔を見合わせるばかりである。残ったサンドイッチも、もう食べる気がしなかった。

「ねえねえ、聞いて聞いて」今度は男の方からにこにこと話しかけてくる。「うちの近所にニワトリを飼っている家があってね、朝になると鳴くのよ、コケコッコーってさ」

「はあ……」相づちを打ちながら、そりゃあニワトリだもの、鳴くだろうさ、と思っていた。

「でね、朝早くから起こされちゃってさあ。うるさいんだよね、ニワトリ。だって、朝になると鳴くのよ、コケコッコー!」

 自分こそ目覚ましのように、何度も同じ事ばかり繰り返す。


「その家の人と話し合ったらどうです」桑田が言う。いくぶん、面倒臭そうな口調から、早々に切り上げたい様子がうかがえた。

「それがダメなのよ」待ってました、と言うように嬉しそうな声で答える。どうやら、期待通りの質問だったらしい。「なぜって、そこの家じゃ、ニワトリのタマゴを売って生計を立ててるでしょ? 飼うな、なんて言えっこないじゃない。ねえ?」

 ねえ? と言われても、こちらが困ってしまう。

「窓を閉め切るとか、耳栓をするとか……」わたしが遠慮がちに言うと、さらに顔をほころばせる。

「ダメなのよ、それが。ニワトリの声って甲高いもんだからね、何やったって聞こえてきちゃう、響いてきちゃう。毎朝、毎朝、早い時間から鳴くのよ、コケコッコー、コケコッコーって」

 正直、こちらこそもうケッコーだ、と言い返してやりたかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おじさんのキャラが強烈でした。面白かったです。 [一言] ニワトリは本当にやかましいですよね。 あと、めっちゃくちゃ臭い! 幼少期はよそのニワトリが、うちの庭に侵入してきて、糞を垂れ流し…
[一言] あはは、桑田さんってやっぱり面白いですね(〃^▽^〃) 私もスパゲッティを作る時に同じような間違いをやらかしました。レシピに書いてある材料が1人分だと思ったら4人分で…orz 突然現れた男…
[一言] 何気ない日常のやりとりっぽいお話が、こんな風に読ませる短編に仕上げられているのが面白かったです。 ただ「レトルト・シチュー」だとパックのまま温めればそのまま食べられるタイプで一箱1人前である…
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