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バーチャルな再会

君と出会って別れたのは今から25年前中学2年生の時の1学期の3ヶ月間だけ。


当時、お互いを想い合っていたにもかかわらず、素直じゃなくて君を知らず知らずのうちに傷をつけていたね。



君は今、スターダムにのし上がっている。


そして、私は君を後ろから応援している。


海原青葉は10数年前に公務員の紀彦と職場結婚し2人の女の子に恵まれ、仕事で体を壊して今は主婦をしている。


SNSの[voxi]にはまりつつあり、学校のPTAにも積極的に参加していてまさにとても充実しているようなさみしいようなそんな日々を送っていた。


ある朝、[voxi]の「同級生」の名前を目にして青葉は電流が走ったようなドッキリ感に包まれた。


「中橋フウマ」


青葉にしてみれば25年前に同じクラスにいて、同じ班にいて変なウワサ立てられた相手でもあり、パンドラの箱を開ける感覚でページを除いてみた。


何これ?


東京でインディーズバンド組んでるって?

公式HPまで持ってるよ。。。。。。

マジで?スターダムに上がってる?


どうりで相手としては出会ったときから割に合わないって思ってた。

フウマは応援団の副団長だったり、友達から聞いたではそのまま持ち上がって応援団長までなったんだもんね。


青葉は充実した私生活を送っているけど、ジミジミ主婦だし中学の時だってそんないけているタイプでもなかった。


ま、普通が一番。


でも、とりあえず「『青葉』って名前の人なんて存じあげません」って玉砕すること覚悟してメッセージを送ってみた。


「こんにちは。

突然のメール失礼します。

同じ時期に同じ中学に通ってたことがあるみたいですね。voxi同級生から訪問してきました。

私もたぶん同じ時期に同じ中学にいたと思われますので大変気になっていました。

よろしくお願いします。」


数分後、フウマから返事が来た。

「もし差し障りがなければフルネーム(旧姓)を教えて頂いてよろしいですか?」

フウマからの返事が大変うれしくて青葉はメールを返した。

「私は既に表示されていた名前で中橋くんのことに気付いてたんですが、 昔の名前は『大島青葉』です。」

更にフウマから返事がきた。

「1年の時A組でした?」

即座に青葉はメールを返した。

「1年の時はD組、2年はG組。2学期の始業式の日に転校しました。」

フウマからの返事は。。。。

「じゃあ二年で同じクラスになってる訳ですね・・

はいはい!!思い出しました!!大島さんだ!!こちらこそマイヴォクお願いできますか?」

転校してからというもの、よっぽど仲がよくないと覚えてもらえないもので、フウマが青葉のこと覚えていたこと感激して更に返す。

「喜んで!こちらこそマイヴォクよろしくお願いします。」

フウマからも、

「覚えていてくれて光栄です こちらこそよろしくです」


青葉は父親の仕事の都合で中学校3校に渡っていた。


フウマと青葉が出会った2校目である南翔中にいたころが、学生生活が楽しかったから忘れるわけがない。


数時間後、フウマは仕事のためメールのレスが遅れた。

「ゴメン 仕事中だったんでレス遅れちゃった。うん なんかイロイロ思い出してきました 」

青葉もまた、すぐに自分のことを思いだしてくれたこと、マイヴォクとして受け入れてくれたこと、とてもうれしく思い、お互い照れるような思い出もあったような気がする旨メールを返した。フウマは東京に出てきてから北海道にいる人間とは青葉と同じくよっぽど親しくもない限り連絡をとっていなかったらしい。


voxiではじわりじわりと自分の正体を明かしていくってことが、楽しみの一つ。

でも、フウマの返事が直球すぎて簡単に返すことになっちゃったためすごく意味なく思ったのもつかの間、フウマからメールが来た。

「俺。。。。。大島さんになんか失礼なこと言った?」

言われた覚えは、宿泊学習の帰りのバスの中で「スケベ」だの「エロ」だの罵倒したことくらいだったのかもしれない。

あえてこのことは後日話すとして、

「な~んも、失礼なことなんて言われてないよ。

でも、お互いに思い出したくもない出来事(事件?)はあったかも…。」

そんな、メールを返されたからフウマがとても気になるのは無理もない。

青葉は知らなくてもいいことを知ることになると前置きし、フウマが同じくvoxiをやっていたことを知らないで日記に登場させたことを教えた。


日記の内容の一部

「まさか2年連続で転校することになるとは。。。。。

この学校にいたときはここの学校のマイヴォクさん数名のおかげで大変楽しかった 。

宿泊研修のときの夜中好きな男の子の話とか、その男の子と私が両思いらしいことが判明し掃除当番のとき2人きりで理科室に閉じ込められ冷やかされたこともあったな(今でも忘れてないぞ )。。。

最後の挨拶は涙こそは流してないけど、ホントにつらかった 。

クラスのみんなからもらった寄せ書きの色紙、その色紙にバス停にてマイヴォクさんに書いてもらったメッセージは今でも宝物です。

そして、私はクラスみんなのこと忘れてません。」


という文面をフウマがとうとう目にしてしまったのだ。


そう、当時、青葉の好きな男の子で掃除当番のときに一緒に理科室に閉じ込められた相手はフウマだったのだ。


どれだけ打ち明けたのに勇気がいっただろうか。

でも、今の青葉には40にリーチのおばさんであるがゆえに子供の母親になっているからはじらいはない。むしろそんな言葉は宇宙の果てに飛んでいる。

呆れてくれて結構だ!

そんな覚悟でいたのだ。


数分後フウマからのメール。

「思い出だした(笑)てか、両想いだったの? 完全な俺の片想いだと思ってたからそっちの方がビックリだ! 」


青葉は南翔中に転校する前にいじめられた経験があり、異性に対し大変弱腰になっていたので、仲が良かった友達の影響でガサツでそっけない態度をとっていたことが災いし、フウマは片思いだったと思っていたらしい。


お互いに25年間モヤモヤしていたのは言うまでもないが、25年前既にお互いに両想いだったこと、このやりとりがきっかけで晴れ間が見え感激した。


フウマから公式ホームページのアドレスも教えてもらっていたが、既に青葉は見ていたうえ、インターネット限定のラジオ放送も聞いていたことを踏まえて「バンドのページはもう見たよん。ラジオの声を聞いててさすがに応援団の団長やってただけあってはりがあるな~って思ったよ。」


フウマの声、25年前のままだよ。


フウマはとても照れくさかったらしく、インターネットとはいえラジオ放送の大変さというものを身にしみているようだった。


フウマのブログに「クラス会」の話があり「振った女」のことがでていた。

青葉はふと、

「私のことだったのかしら?」


と気にしつつ、ブログの材料に困ったら登場人物として協力することをメールを送信した。


フウマは3年前に綴ったブログだったため記憶には無かったということだが、青葉に証拠のアドレスを見せたら高校の頃の話だということを教えてくれた。


青葉にしてみればフウマに対しそんな振り方したおぼえはなく、うやむや感を残して転校しちゃったからこそ良い思い出でありつつホロ苦すぎるだから昔働いていた場所での飲み会での「初恋ネタ」として話すことが多い。そんな思いが強かった。


フウマからのメールで

「俺もあの時もうちょっとわかり易くアピールしてれば多少は違ったかも(笑)

中2じゃあ無理だよね(笑)」


フウマは誰にも打ち明けてなかったみたいだがフウマの想いを感じ取っていたクラスメートがいたのだ。

宿泊研修の時の夜、「中橋って青葉ちゃんに気があるんじゃない?なんかキャラかぶっているもの」


そんなことを言った張本人がフウマと青葉を理科室に閉じ込めたのだ。そしてクラスの女子全員に知られちゃったのだが、たまたま、同窓会に出席した同じクラスにいた男子にこの話を打ち明けてみると「あ、そんなことあったね」ってそんな程度だったのだ。

もちろん中学2年生だからなにもなかったと言えば当然だ。


青葉にとっては人生初の両想いだったと知るのに25年もかかってしまった。


フウマも青葉も当時、冷やかされることには不慣れでお互いに「両想い」って認識してたらその後の人生観はかなり変わってたであろう。


当時、フウマは応援団の副団長もやっていいたうえ、翌年には応援団長までもすることになってしまったから冷やかされることが嫌なのもなおさらだろう。


青葉は当時から安定志向だったが、フウマはきっとバンドマンはやってなくて同じく安定志向でいたんだろうか?

なにせ青葉がそっけなさすぎて「片想い」のままで終わったとフウマに思われている。


転校直後に1年時に特に仲の良かった友人(2年の時は青葉と違うクラスだった)と手紙や電話のやりとりをし、中2、高1、 高2と会ってはいて、ときどきフウマのことも話題にあがったりしたのだったが、友人もまた相手も彼氏アリだったり振られたり複雑だったようだ。


青葉の離れてしまったあとで気づいた相手に対する想いの大きさを感じる鈍さはこの時に始まったのかもしれない。


それとも、運命がそうさせたのだろうか?


青葉が同じく中学校を卒業したころ同じ想いをしたことがある。


その時のブログ。

「♪~春はお別れの季節ですって歌の歌詞を入れてみた。。。。。

(知っている人はたぶん80年代を知っているかも)

むかしむかし…っていっても中学校を卒業したての頃。

今更、気づいても遅いんでないの?なんて思いがこみ上げたことがありました。

結婚して12年になるし、高校も卒業して20年にもなるし、堂々とぶっちゃけましょう。

中学3年の時の数学の授業のときのこと。

男子数名が私に


『大島!お前どこ当たるの?』


当時の学校は男女混合の出席番号。

数名のうち1人は私のすぐ後確定!

もちろん私、授業まじめに聞いてましたよ(苦笑)。

ってか、図形の証明以外は結構得意だったかもwwwwwwwww。

でも、そんなやり取りは当時の私の楽しみでもありました。。。。


で、卒業したての頃に話が戻ります。

気がつけばそのグループの1人に淡い恋心を抱いていました。

(なおこの人はフウマではない)

とても性格のいい男だったと私は記憶しております。

ってか外見より中身重視なのです。私。


数ヵ月後、友達と中学校へ遊びに行ったはよかったのですが、その人はいました。。。

でも。。。。。。

話しかけられずあえなく撃沈。。。


。。。。。さらに数年がたち

(就職2年目くらい?個人情報のうるさくなかった頃)

その人の家族が仕事に関わってました。

住所を見たとき

え????

聞いてみたら、その人だと判明!!

うれしい再会(?家族だから違うだろ!)ではありました。

そして、転勤で親元を離れる前日。

その人のお母さんが気を利かせて、うちに電話をかけてくれました。

あれこれ、思い出話や職場の話、近況などで2時間も話まくってました。


当時、私は夫とはちがう人と付き合ってました。


だから素直に「中学時代、あなたが好きでした」とは言えなかった。


でも、結婚して10年以上たっているし中学時代の恋沙汰に寛大な夫に感謝します。

もっと素直になればよかった。

その人も幸せな家庭を築いていることを心より祈っています。 」


と綴ったこともフウマには打ち明けている。


お互いのメールアドレスや携帯番号を交換し、この一連のやり取りがそのうち毎日続くようになり、奇跡の再会のきっかけになるとは思いもよらなかった。


海原(旧姓:大島)青葉のモデルは作者自身なのですが、「中橋フウマ」のモデルには2人います。1人は中学の時の私の同級生でバンドマンを現役でやっている人なのですが、内容はほとんど事実に近かったりします。1人は名前のモデルとしました。その子は昨年小児がんで9歳の生涯を閉じた長女の同級生の「フウマ」くん。「フウマ」という響きもすごくよくてどうしても登場人物の名前としても使いたかったのです。

この世で体験できないことせめて小説の世界で体験させてあげたかったというおせっかいな思いもありました。


青葉とフウマが25年の時を超えて再会したことは運命だったのかもしれませんね。

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