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特別エピソード:琥珀色の追憶


 「リベレイター」の調理室には、宇宙船には似つかわしくない、甘く香ばしい香

りが漂っていた。

 連合の公務から一時的に解放されたエルシエラは、エプロンを締め、ボウルの中

の生地を丁寧に練り上げている。

 かつて帝国の至宝と謳われたその指先は、今や小麦粉にまみれ、けれどその表情

はこの上なく穏やかだった。


「……よし、これでオーブンに入れれば……」


 彼女が独り言を呟いた瞬間、背後から力強い腕が回り、その細い腰を抱き寄せ

た。

 振り返らなくてもわかる。

 使い込まれた革と、わずかな煙草の残り香。

 彼女の最愛の「覇王」、カイザルだ。


「おいおい、お姫様。……銀河の最高指導者が、こんなところで粉まみれになって

何をしてるんだ?」


「あら、今はただの通信士よ。……内緒でね、マーサに教わったの。……アルタリ

スに伝わる、古いお菓子の作り方を」


 エルシエラは、わざと澄ました顔で答え、彼の鼻先に少しだけ粉をつけた。

 カイザルは面食らったように瞬きをしたが、すぐに悪戯っぽく笑い、彼女の首筋

に深く顔を埋めた。


「ふん……。連合の会議でレオナールが、お前の不在を嘆いて真っ青な顔をして

たぜ。……まさか、クッキーを焼くために失踪したなんて知ったら、あいつ、

卒倒するんじゃないか?」


「ふふ、お兄様には少し苦労してもらった方がいいわ。……真面目すぎるんです

もの」


 二人は、窓の外を流れる静かな星々を眺めながら、寄り添うように笑い合った。


 やがて、オーブンからチリンと軽やかな音が響いた。

 エルシエラが取り出したのは、黄金色に焼き上がった素朴な形のクッキー。

 それは、贅を尽くした王宮の菓子とは似ても似つかないが、どこか懐かしく、

温かな匂いがした。


「さあ、召し上がれ。……カイのために焼いたのよ」


 カイザルは一枚を手に取り、熱いまま口に放り込んだ。

 サクッとした食感の後に広がる、控えめな甘さと香ばしさ。

 彼は噛みしめるごとに、かつて自分が捨てた故郷の、黄金色の麦畑を思い出して

いた。


「……どうかしら?」


 不安げに覗き込むエルシエラの瞳。

 カイザルは無言で彼女を引き寄せ、深い、深い口づけを贈った。

 言葉よりも確かな、最上の賛辞。


「……甘すぎるな。……あんたの笑顔と同じくらいに」


「もう、カイったら……」


 エルシエラは頬を赤らめ、彼の胸に顔を埋めた。

 二人の間には、もはや身分の壁も、帝国の影も存在しない。

 ただ、この広い銀河の中で、互いを見つけたという奇跡だけがあった。


 窓の外、リベレイターは次の目的地へと向かって、ゆっくりと舵を切る。

 そこにはまだ見ぬ新しい星と、二人の未来が待っている。


「愛しているわ、カイ。……宇宙の果てまで、あなたと一緒に」


「ああ。……俺の命が尽きるまで、あんたをこの腕から離さない」


 銀河の片隅で交わされた、琥珀色の約束。

 それは、どんな歴史書にも記されない、二人だけの最も美しい「エピソード」

だった。




この作品はAI40%、筆者60%で書きました。

原案100%筆者。

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