第七話 初めての討伐クエスト — キノコ狩りと影の足音 —
冒険者ギルドに到着した才塚アスカたち。
元気少女ミライとツンデレAIノヴァと共に登録を済ませ、初めてのクエストに挑む準備が整った。
しかし、ギルド内では「八部鬼衆」の影が囁かれ、電脳世界の平和は決して安泰ではない。
陽光が差し込むセントラル・タウンの街路を歩きながら、三人は初心者向けの討伐依頼「キノコ狩り」へ向かっていた。
「ふぅ……本当にキノコ狩りかぁ。これで“戦闘”の練習になるのかな?」アスカが小さくつぶやく。
「大丈夫。動き回る敵はいないけど、回避や連携の練習には十分よ」ノヴァが淡々と答える——いや、淡々…というより、ツンデレを交えた上から目線で。
「ふん、あんたの反応、ちゃんと見てるんだから」
「え!? ノヴァが見てる!?」アスカが顔を赤らめて慌てる。
「別に、見てやってるわけじゃないわよっ。……失敗したら呆れるだけよ」
「ひどい! でも、ありがと……?」
ミライは元気に笑いながら、手のひらに小さな炎を灯す。
「今日は私が先導するよ! アスカ、ついてきてね!」
「は、はい!」アスカはドタバタしつつも、少し楽しそうに後を追った。
⸻
森の中に入ると、巨大なキノコが点在する幻想的な空間。
「わぁ、キノコいっぱい!」アスカは思わず駆け寄る。
「……だからって、勝手に触るなって言ってるでしょ」ノヴァが小声でツン。
「えー、でもかわいいじゃん!」アスカが頬を膨らませる。
「かわいいとか言ってる場合じゃないのよ、危険なのはキノコじゃなくてこの森全体なんだから」
そこへ、森の奥からかすかな足音。
「……ん?」ミライが立ち止まる。
「気のせいよ」ノヴァは最初は冷静を装う。
しかし、その瞳が瞬時に光を放つ。
「……いや、確かに誰かが近づいているわ。……人為的な存在の気配、かなり強い」
「や、やっぱり……?」アスカが小さく後ずさる。
その瞬間、草むらから何体かの小型モンスターが飛び出す。
「やっぱり訓練にはちょうどいい感じ?」ミライが笑顔で構える。
「……アスカ、ちゃんと集中するのよ。ボーッとしてると一発でやられるわ」ノヴァがツンデレ気味に釘を刺す。
「はいはい……ノヴァは厳しいなぁ」
戦闘開始。アスカは動きながらノヴァの指示に従い、ミライは炎で敵を一掃。
「ふぅ、なんとかクリア……!」アスカは息を整える。
「まあまあね。……次はもっと難しい相手でも耐えられるかしら。……心配だけど、期待してあげる」
「ツンデレ炸裂だな!」ミライが肩を揺らして笑う。
⸻
討伐を終えて報酬を受け取った三人。
「やったね、アスカ! 初クエストクリアだ!」ミライがハイタッチ。
「うん……でも、なんだか背後の森が気になるなぁ」アスカが周囲を見回す。
「ふん……予感は当たるかもしれないわね。……」ノヴァの声に、森の風がざわめくように感じられた。
その夜、三人は街の宿屋で一息つく。
「今日は疲れた……」アスカがベッドに倒れ込む。
「まあまあね。……でも、あなたがちょっとだけ頼もしく見えたわよ」ノヴァが照れ隠しに顔をそむける。
「……ふふ、やっぱりノヴァってツンデレなんだから」ミライが笑いながら肩を叩く。
外は、月明かりに照らされている。
「……次は、もっと大きな波乱が来るかもしれない」ノヴァが呟く。
「えぇっ!?」アスカが慌てる。
「でも……私たちなら大丈夫!」ミライが力強く言い、アスカも頷く。
こうして、初のクエストを終えた三人の冒険は、まだまだ序章にすぎなかった――。