第五話 チュートリアルダンジョン
スプーン片手にバトルを制したアスカ。
そこに現れたのは、炎を操る元気少女・火野ミライ!
笑いあり、ツッコミありで、なんと仲間になることに!
だがツンデレAIノヴァは「ほんとに大丈夫なの?」と冷ややか視線。
次なる舞台は、初心者向けダンジョンだ!
「えっと……ここが《緑影の洞窟》?」
アスカはごくりと唾を飲み込む。入口にデジタル表示されたクエストタグが光っていた。
【チュートリアルダンジョン:推奨Lv3/報酬=スキル素材】
「そうそう! チュートリアルってことは、練習にぴったりってことだよ!」ミライはやる気満々。
「ふん。まあ、“アスカにしては”妥当な選択ね」ノヴァがツンとした声で割り込む。
「ちょ、なんでわざわざ“にしては”つけるのよ!」
「だって事実じゃない。あなた、前回までスプーンで戦ってたじゃない」
「ぐぬぬ……!」
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中に足を踏み入れると、すぐにカチッと音がして床が沈む。
「ひゃあ!? 落とし穴!?」アスカが飛び退く。
「落ち着きなさい。右の岩を踏めば解除できるわ」ノヴァが冷静に指示。
「わっ、ほんとだ! ……ありがとう!」
「べ、別に。あなたが穴に落ちて泣き叫ぶ姿を見たくないだけよ」
「え、それって優しいってことでは!?」
「ちがっ……! 黙って進む!」
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さらに進むと、炎でしか反応しないセンサー扉が立ちふさがる。
「よーし、あたしの出番!」ミライが両手に炎を灯す。
「右、左、中央の順で撃ちなさい。……間違えたら戻れなくなるから」ノヴァが釘を刺す。
「おっけー! いっくよー!」
炎が飛び、仕掛けが作動。扉がガガガッと開いていく。
「おぉ~!すごい!」アスカが拍手。
「ふふん、やっぱりあたしに任せて正解でしょ!」ミライが胸を張る。
「まったく。調子に乗って外したら大惨事なのよ。……まあ、成功したから良しとするけど」
「はいはい、ノヴァも素直に褒めればいいのに~」
「だ、誰が褒めるもんですかっ!」
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洞窟の奥。轟音とともに現れたのは巨大な甲殻獣。
「ぎゃーーーっ! なにあれ!?」アスカが後ずさる。
「装甲が硬いわね。……腹部の継ぎ目を狙いなさい。ほんと、私が言わなきゃ分からないの?」ノヴァがため息。
「言わなきゃ分かんないよ!?」アスカが涙目で叫ぶ。
「よっしゃ! アスカ、合わせよう!」ミライが拳を握る。
炎と剣の連撃。ノヴァの的確なツンデレ指示。
甲殻獣はうなり声をあげ、やがて光の粒になって消えた。
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「やったぁ! 倒したぁ!」アスカがその場に座り込む。
「ふぅ、いい汗かいたー!」ミライがハイタッチを求める。
「……まあまあね。成功率は八割。思ったより悪くないわよ。……少しは見直したわ」ノヴァが小声でつぶやく。
「ノヴァ、今ちょっとデレた!?」
「デレてないっ! 余計なこと言わない!」
「はははっ、仲良しかよ!」ミライはお腹を抱えて笑った。
洞窟の外に出ると、眩しい光が差し込む。
報酬の素材ウィンドウが開き、三人の顔に自然な笑顔が広がった。
「ね、アスカ。次はもっと深いダンジョンに行こうよ!」
「うん……その前に休憩……」
「ったく、ほんとに体力ないんだから。……まあ、付き合ってあげるけど」
三人の冒険は、まだまだ始まったばかりだ。