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メイキング  作者: せつぷらちなむ
第三章 アストラル城篇
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第四十話 メイキング

「やっと一息つけるね〜!」

ミライが笑顔でソーダを飲み干す。

城下町の広場には人の波。アスカたちは束の間の休日を楽しんでいた。


「このドーナツ、ふわふわだよ!」

「おいし〜! ノヴァも食べて!」

「……私は味覚データがないの」

「いいの! 雰囲気だから!」


クレアが笑い、ノヴァがわずかに口角を上げる。

そんな何気ないやり取りが、当たり前の日常に思えた。


だが——空のノイズが、それを壊す。


ザザ……ザザザッ……


まるで空そのものが映像の“画面”だったかのように、グリッチが走る。

ノヴァが即座に反応した。

「……おかしい。システム層に異常が」

「バグ? イベント?」アスカが不安げに呟く。

「違う……誰かが、外から“触ってる”」


その言葉の意味を、誰も理解できなかった。


──アストラル城の警鐘が鳴る。


アスカたちは駆け出した。

門の前、シュウスケが立っていた。

夕陽に照らされ、半分の能面と般若の仮面が淡く輝いている。


「シュウスケ……! なにが起きてるの!?」

彼は静かに仮面を外しかけた。

その片目には“流れる赤いコード”が宿っていた。


「……今これを話すのもなんだけどね」

「え?」

「僕は、“人間プレイヤー”じゃない」


その声に、風が止まる。


「NPCってやつだよ。正確には、AI搭載型NPC」

「なに、言ってるの……?」

「僕はここで“生まれた”んだ。赤子として。食って、寝て、成長して。一体、君たち人間プレイヤーと何が違うんだろうね?」


アスカは言葉を失った。

ミライが小声で呟く。「……NPCが、赤ちゃんから?」

「プログラムに“成長過程”なんて、存在しない……」ノヴァが震える。

「あるんだよ。誰かが——この世界を生かそうとしたから」


その瞬間、空が真紅に染まる。


画面上に、文字が浮かぶ。


《MAKING SYSTEM 起動》

《帰りたければ、生き残れ》

《HP=LIFE 0で永遠にログアウト不可》


「え……え? なにこれ……冗談だよね?」

「ノヴァ、ログアウトして!」

「……できない。コマンドが、消去されてる」


空から音が消える。

遠くで誰かの悲鳴が上がる。

プレイヤーの一人が、光に包まれて——消えた。


「データが……削除……?」クレアの声が震える。


アスカが息を呑む。

ミライの拳が震える。

ノヴァの瞳に、微かな光が宿る。


ノイズの雨が降る中、物語は新しいフェーズへ突入した。

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