第四話 新しい仲間!? 炎を操る少女
初めてのバトルを終えて、スプーンで敵を倒したアスカ。
疲れ果てた彼女の前に現れたのは、自分と同じく〈アクトレコード〉にログインしているという少女プレイヤー。
彼女は明るく活発な性格で、戦闘にも慣れている様子だが――。
――スプーンバトル終了後。
アスカは草原のど真ん中で、地面に大の字になっていた。
「……もうダメ。腕が、スプーン振りすぎて棒になってる……」
「情けないわね。勝てたのはいいけど」
隣に腰を下ろしたノヴァが冷静に言う。
「だってさぁ! 武器スプーンだよ!? あんなの常識で考えて勝てるわけないって!」
「でも、勝ったでしょ」
「うぐぐ……!」
アスカが地面をバンバン叩いて悔しがっていると――。
「……ねえ、もしかしてプレイヤー?」
頭上から降ってきた声に、アスカは飛び起きた。
見上げると、そこには少女が立っていた。
小麦色の肌、健康的なスタイル。
橙に染まった髪が風に揺れ、彼女の眩しい笑顔をより引き立てている。
そして右手には――燃えるような小さな炎の球。
「ひっ!? 火、火が出てるんですけど!?」
「大丈夫。これ、スキルだから」
少女は笑顔で炎をパッと消した。
「はじめまして! あたし、火野ミライ。君もプレイヤーでしょ?」
「えっ、えっと……はい! 才塚アスカです!」
慌てて自己紹介を返すアスカ。
「……で、いまさっき、スプーンで戦って勝ったばかりで……」
「スプーン?」
ミライの表情が固まった後――吹き出した。
「ぶっ、なにそれ! スプーンで!? やっば、面白すぎる!」
「わ、笑うなぁああああっ!」
顔を真っ赤にして怒鳴るアスカ。
「ホントにスプーンしかなかったんだもん!」
笑いすぎてお腹を押さえるミライ。
その姿を見て、アスカはなんだか胸の奥が少しくすぐったくなる。
誰かにこうして全力で笑われたの、いつ以来だろう。
「ふぅ……笑った笑った。ごめんね、アスカ。でもすごいよ。スプーンで勝つなんて」
「うぅ……褒められてるのかバカにされてるのか分かんない……」
「褒めてるんだって!」
にかっと笑うミライ。
その自然体の笑顔に、アスカは思わず見とれてしまった。
「ね、アスカ。一緒に行動しない?」
「え?」
「この世界、ひとりで攻略するのはキツいよ。仲間がいたほうが楽しいし、楽しいほうが絶対いい!」
差し出された手。
アスカは一瞬だけためらった。
ぼっち気質の自分に、こんなふうに声をかけてくれる人がいるなんて。
胸の奥で、じんわりと温かいものが広がっていく。
「……うん! 一緒にやろう!」
「よしっ、決まり!」
アスカはその手をぎゅっと握った。
ノヴァが横で小さく微笑む。
「……いい出会いだったわね」
こうして――才塚アスカは〈アクトレコード〉で、初めての“人間の仲間”を得たのだった。