第三十八話 王の感謝と、城下町の休日
玉座の間。
静寂の中で、ルシアン・アストラル王はゆっくりと立ち上がった。
「九足八鳥シュウスケよ。そなたのおかげで、我が命は救われた。……この恩、決して忘れぬ。」
シュウスケは膝をつき、答える。
「……王の無事が第一。それだけです。」
玉座の横、レオナルド・アストラルは黙したまま拳を握っていた。
自分の剣は届かず、父の背を守れなかった。その現実が胸を刺す。
「……すまぬ、レオ。お前の心も、分かっておる。」
王の言葉に、レオナルドは頭を下げることしかできなかった。
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謁見後の廊下。
「おい、シュウスケ。」レオナルドが呼び止める。
「……どうすれば、お前みたいに戦える? 父を守れるようになりたい。」
シュウスケはしばらく無言でレオナルドを見つめ――
タコ包丁を軽く回し、肩をすくめた。
「夜明け、北門。……遅れるな ♪」
レオナルドは一瞬目を見開き、そして深く頭を下げた。
「お願いします。」
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その頃、城下町では――。
「じゃーん! 見て見て、ノヴァ! この帽子似合わない?」
「アスカ……それ、センスないよ?」
「いや! オシャレでしょ!?」
火野ミライはクレープ片手に笑い、クレアはアクセサリーショップの前で目を輝かせている。
アスカは財布を握りしめて頭を抱えた。
「うぅ……楽しいけど、メイキングの通貨ってリアル換算したらいくらなんだろ……?」
「知らない方が幸せよ」ノヴァが淡々と答える。
その時、通りすがりの人々の会話が耳に入る。
「最近、“八部鬼衆”って名の連中が動いてるらしいよ。城の外でな……」
「またプレイヤー狩りか……。怖い世の中になったもんだ。」
ノヴァの目がわずかに光る。
「……記録完了。警戒レベルを引き上げます。」
「ちょっ、せっかくのショッピングなのに怖い話やめてよ〜!」アスカが叫ぶ。
「でもやっぱり気になるね……この“八部鬼衆”って。」
笑いと不穏が入り混じる午後。
少女たちの穏やかな時間が、次なる嵐の前触れに過ぎないことを、誰も知らなかった。




