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アクトレコード  作者: せつぷらちなむ
第一章 出会いと冒険の始まり
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第三話 初めてのバトル!? キャンディとスプーンで挑め!

電脳世界〈アクトレコード〉を探索するアスカとノヴァの前に、最初の“敵”が出現する。

アキコの固有スキル〈メイク〉で作れたのは回復用のキャンディと、小さな木のスプーン。

「こんなので戦えるの!?」と不安になりつつも、ポジティブ精神で挑むアスカ。

果たして彼女は初めてのバトルを乗り越えられるのか――!?


 広がる草原を歩いていたときのことだった。

 どこかで「ピコン」と電子音が鳴った気がする。


「……ねえノヴァ。なんか今、ゲームのエンカウント音っぽいの聞こえなかった?」

「うん、聞こえたね。アスカ、前を見て」


 ノヴァが指差した先。そこには――光の粒子がもやもやと集まり、小さな生き物の形を取っていく。


「わ、うさぎ……?」

「正確にはテストモンスター。正式サービス前だから、こういう低レベルの敵が散歩してるの」

「えっ……敵!?」


 アスカの声がひっくり返る。

 出てきたのは、うさぎに似ているけれど目がバグったように点滅していて、動きが妙にカクカクしている存在。

 「かわいい」というよりは「ちょっと怖い」。


「き、聞いてないよ! 私まだ武器スプーンしかないんですけど!?」

「だったら、そのスキルを使ってごらん。〈メイク〉を」

「えええ~!? 無理無理無理、戦闘とかまだ心の準備できてないから!」


 パニックになりつつも、アスカは両手を合わせる。

「……お願い、出てこい! 〈メイク〉!」


 光が走り、手のひらに現れたのは――


「……キャンディ?」

 七色に輝く大玉キャンディがころんと乗っていた。

「ふふ。甘そう」

「いやいや! 武器じゃないでしょこれ!」


 困惑するアキコにノヴァが冷静に告げる。

「それ、回復アイテムだよ。舐めれば少し元気が出る」

「え、マジ!? ……え、なんか意外と便利じゃん!」


 アスカが感心している間に、モンスターがぴょんと飛びかかってきた。

「ひぃぃ! わ、私まだキャンディ舐めてない!」


 慌てて左手のスプーンを構える。

「ええいっ! 必殺――スプーンスマッシュ!」


 カコーン、と乾いた音。

 当たった。モンスターは小さくよろけて後退した。


「……あ、効いてる?」

「威力は雀の涙だけどね」

「涙!? いやでも、攻撃通るならなんとかなる!」


 アスカは必死にスプーンを振るう。

 バシッ、カコン、カチン。地味な打撃音が草原に響き渡った。


「ぜぇ……ぜぇ……。こ、これ、意外と体力使う……!」

「だったら、そのキャンディを舐めなさい」

「そ、そうか!」


 慌ててキャンディを口に放り込む。

 じんわりと体が軽くなる感覚。

「おおっ!? 元気出た! これめっちゃすごい!」

「回復量は少ないけど、持久戦向きかもね」


 結局、アスカはひたすらスプーンを振り回し続け――

 ようやく、モンスターは光の粒子となって消えた。


「や、やったああああ!」

 両手を上げてガッツポーズを決めるアスカ。

「ふふ。時間はかかったけど、ちゃんと勝てたね」


 消えた場所には、宝石のような小さなアイテムが転がっていた。

「……これ、戦利品?」

「うん。ドロップアイテム。合成素材に使えるわ」

「わー! 本当にゲームみたい!」


 目を輝かせるアスカを、ノヴァはじっと見つめる。


「……やっぱり、あなたの〈メイク〉は特別だね」

「えっ?」

「普通なら初期スキルで“回復アイテム”を作るなんてありえないの。あなたは、ただのプレイヤーじゃない」


 ノヴァの真剣な瞳に、アスカは思わず背筋を伸ばした。

 だが次の瞬間、彼女はにやりと笑う。


「……じゃあつまり、私、すっごく期待されてるってことだよね!」

「……そのポジティブさは認めるわ」


 こうしてアスカの“初バトル”は、キャンディとスプーンで幕を閉じたのだった。

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