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アクトレコード  作者: せつぷらちなむ
第一章 出会いと冒険の始まり
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第二話 ドジっ子JKクラフター、爆誕!

アスカは電脳世界に来てすぐ、ノヴァのサポートで自分の固有スキル〈メイク〉を試すことになる。

頭に浮かべたイメージを形にできるその力は、武器にも防具にもアイテムにも変化する――。

だが最初に成功したのは、とんでもなく小さな……?


 光に包まれた視界が落ち着いたとき、私は――才塚アスカは、見渡す限りの電脳空間に立っていた。

 どこまでも続く光の海。空には無数のデータが星みたいに瞬いている。地面だって普通の大地じゃなくて、青や緑の格子模様がキラキラと輝いている。


「ここは…………!」


 思わず息をのむ。

 さっきまで私は、ただの高校二年生だった。クラスでも目立たず、ひとりで本を読んだり、スマホをいじったり……。いわゆるぼっち寄りの女子。

 そんな私が、いま謎の地に立っている。どういう理屈でそうなったのかはわからないけど――夢みたいに胸が高鳴った。


「ようこそ、アスカ」


 振り向くと、そこに美少女が立っていた。

 長い髪が銀色に輝き、目は宝石みたいに澄んでいる。現実ではまずお目にかかれない、完璧な造形。


「わ、わぁ……えっと、誰……?」

「私は《ノヴァ》。この世界の案内役よ」

「案内役……?」

「ええ。あなたはまだこの世界の最初期ユーザーのひとり。だから私は、あなたのサポートを任されているの」


 ノヴァはにこやかに微笑む。まるで人間の女の子みたいに。

 でも、よく聞けばAIらしい。AIって言っても、ここまで可愛かったら、ほぼ人間じゃない?


「……この世界アクトレコードは、現在まだテスト段階。あなたの参加は、想定外のアクセスだけど……」

「まずは、この世界の基本ルールを説明するわね」

「は、はいっ!」


 私は思わず背筋を伸ばした。

 ノヴァが話すところによると、この世界アクトレコードは「誰もが自分のアバターを使って自由に活動できる電脳都市」。

 ログアウトすれば現実に戻れるし、ダメージを受けても死ぬことはない。

 ただし――。


「戦闘で倒されれば、所持アイテムは一部を失うわ」

「えっ、それってゲームのドロップみたいな……?」

「そう。ここは遊び場であり、試練の場でもあるの」


 ふむふむ。なるほど、そういう感じね。


「そして――あなたには、特別な力が与えられている」

「特別な力?」

「固有スキル《メイク》。あなたの想像を形にできる、唯一無二の力よ」


 ――想像を、形に?

 なんかチートっぽい響き!でも、本当に私にそんなすごい力が……?


「まずは試してみるといいわ」

「は、はい……!」


 私はおそるおそる両手を前に出し、ぎゅっと目をつむった。

 頭の中でイメージする。強く、かっこいい剣! アニメとかゲームに出てくるような、誰もが憧れるヒーローの武器!


「で、出ろー! 必殺の……剣!」


 光が集まり、私の手のひらの上で形を成していく――。


「おおっ……! きたっ!」


 そして現れたのは――。


「……スプーン?」

「……木製ね」


 そこにあったのは、手のひらサイズの小さな木のスプーンだった。

 私は固まる。ノヴァは口元を押さえて、クスクス笑っている。


「ちょ、ちょっと待って! 私、剣をイメージしたんだよ!?」

「ふふ……でも、初めてにしては形になっているだけ上出来じゃない?」

「えぇー……?」


 なんか納得いかない……。


「よーし! 次は防具! かっこいい鎧とか!」


 私は再び目をつむり、頭の中で騎士のイメージを描く。重厚な鎧! 威風堂々とした防具!


「出でよ、鉄壁のアーマー!」


 光がはじけて、私の体に装備がまとわりつく――。


「……エプロン?」


 白いフリルのついたエプロンだった。

 しかも胸元には『LOVE☆COOK』みたいなロゴがピンクで描かれている。


「な、なにこれぇぇぇ!」

「似合ってるわよ」

「いやいや! 戦場でエプロンって! これじゃ家庭科部で調理実習でしょ!」


 私は思わずその場でジタバタした。ノヴァは肩を震わせて笑っている。


「アスカ、あなた本当に面白い子ね」

「笑いごとじゃないから!」


 だけど、不思議と嫌な気持ちはしなかった。

 むしろノヴァの笑顔を見ていると、自分の失敗すらちょっと楽しく思えてくる。


「……でもね、アスカ」

 笑みを引っ込め、ノヴァは急に真剣な瞳を向けてきた。

「あなたのスキルは、鍛えれば本当に何でも作れる。武器も、防具も、都市も、ひょっとするとこの世界そのものさえ」

「えっ……」

「だから、自分を信じて。あなたはきっと、この世界を変える存在になる」


 ――え、なんかラスボスっぽいこと言ってない!?

 私は心臓をバクバクさせながらも、こくりと頷いた。


「……よし、ラストチャレンジ! 今度こそまともなのを作ってみせる!」


 私は深呼吸し、集中した。

 今度は――食べたら元気が出る、回復アイテム! キャンディみたいに可愛くて、持ってるだけでテンションが上がるやつ!


「いっけぇぇぇ!」


 光が集まり、私の手のひらに転がったのは――透明に輝く小さなキャンディだった。

 虹色の光を反射して、宝石みたいにキラキラしている。


「わ、できた! キャンディ!」

「……本当に成功したわね」

 ノヴァは少し驚いたように目を見開いた。


「これ……食べたら、ちょっとだけ元気になる……気がする!」

「気がする、のね」

「でも、可愛いし! これ、絶対バズるやつだよ!」

「……バズるって、この世界でも言うのね」


 ノヴァが呆れ半分に微笑む。

 私はキャンディを掲げて、満面の笑顔を浮かべた。


 ――こうして、ドジっ子クラフターの第一歩が始まったのだった。

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