第十八話 廃坑に囁く影の声
暗く湿った坑道に、アスカたちの足音だけが響く。
壁には古びた鉱石の欠片が残り、ところどころに奇妙な“黒い染み”が広がっていた。
「……なんか、ただの廃坑って感じじゃないね」アスカがスコップをぎゅっと握る。
「鉱石を掘り尽くしただけなら、こんな“影の瘴気”は漂わないはずよ」ノヴァが眉をひそめた。
ミライが松明代わりの小さな炎を浮かべる。
その光に照らされた岩壁には、不自然に刻まれた模様が浮かび上がった。
「なにこれ……文字?」
「……でも普通のものじゃない。誰かが意図的に封印を壊した跡だ」クレアが冷たく答える。
その時――坑道の奥から、かすかな囁きが響いた。
耳元で直接囁かれるような、不気味な声。
『……解放……しろ……』
「ひゃあああっ!? だ、誰か今しゃべったよね!?」アスカが飛び上がる。
「落ち着け! あれは……残留思念か何かだ」ミライが剣を構える。
ノヴァの声が低く響く。
「違う……これは、プレイヤー由来のもの。廃坑の奥で“何か”を呼び出そうとしている」
クレアの影がすっと揺れる。
「……」
坑道を進むほどに、影は濃くなり、鉱石の光を飲み込んでいく。
アスカはゾクリと背筋を震わせた。
(ここで何が起きてるの……?)