第十六話 謎の通信者・清代《きよしろ》
モンスターを倒した余韻に浸る一行。
アスカは進化したスコップを抱きしめながら、まだ信じられない様子だった。
「……わたし、本当にやれたんだ……!」
「調子に乗るなよ。修行はこれからが本番だ」
ノヴァが涼しい顔で言い放つ。
その横でミライは満面の笑みでアスカにハイタッチをしていた。
「でもさ! あんな大きな敵を倒したんだ。すごいじゃん!」
アスカはおずおずと手を合わせ――ぱちん、と小さな音が森に響いた。
そのとき。
――ピピッ。
耳の奥に、不自然な電子音が鳴り響く。
「えっ!? な、なにこれ!?」
アスカが慌てて周囲を見回す。
《通信着信:差出人不明》
視界にウィンドウが浮かび上がり、黒いシルエットのアバターが表示された。
輪郭はぼやけ、顔はまったく見えない。
「……聞こえるか?」
落ち着いた低い声が響く。
「ひゃっ……ひゃああ!? だ、誰ぇ!?」
「名は清代。才塚アスカ。君の進化を確認した。だが――それはまだ始まりにすぎない」
「きょぉしろぅ…キョウシロウさん?」
シュウスケが木の枝から身を乗り出し、ニヤリと笑う。
「おいおい……怪しいやつの登場だね。一号ちゃん、こういうのは気を抜くなよ〜?」
「う、うん……」
清代の声は静かに続いた。
「キョウシロウではない。才塚アスカ。君の〈メイク〉は“物を作る”だけではない。本質は――“世界の形を再定義する”力だ」
「え、せ、世界!? ちょっと待って、話が急すぎるよぉ!」
「今はまだ器が小さい。だが、力を伸ばしたければ“月影の廃坑”に来い。君に必要な試練が待っている」
その言葉と同時に、ウィンドウが砂のように崩れ、通信は途切れた。
残された一行は沈黙する。
「……どう思う?」ミライが眉をひそめる。
「真偽はともかく、情報は本物かもしれない」ノヴァは冷静に結論づける。
「フッ……怪しいやつほど掘り出し物を隠してる。僕の勘だけど、弟子ちゃんたちにとって悪い話じゃないよね♪」シュウスケが肩をすくめる。
アスカはスコップを握りしめた。
胸の奥で、不安と同時に高鳴る期待。
「……月影の廃坑……行ってみるしか、ないよね」
こうして一行の次なる目的地が示された。
それは、さらなる力への扉か――それとも新たな罠か。