第十五話〈メイク〉の力
魔獣を倒した森の奥、アスカはまだ息を整えていた。
スコップを握る手に、今までにない感触が伝わる。
「……すごい……振りやすい……!」
それはただの武器の進化ではなく、〈メイク〉の力が成長した証だった。
想像次第で形を変えるスキルが、初めて自分の意志に応えてくれた瞬間――。
「うん、その調子だ、弟子一号ちゃん♪」
シュウスケは木の枝から降り、軽くタコ包丁を振る。
「想像力次第で武器はどこまでも変わる。さあ、極めるんだ」
アスカは集中し、スコップを空中で回す。
刃先に光が残り、風を切る音が増す。
(これなら、もっと強くなれる……!)
森の奥、静寂を切り裂く不穏な気配。
木々の影から現れたのは、見たこともない奇妙なモンスターだった。
「えっ、これ……一人じゃ無理かも!」アスカがスコップを握りしめる。
シュウスケは茶化しながらも冷静。
「落ち着け、一号ちゃん。観察して、弱点を見つけるんだ」
戦闘が始まり、触手のような腕や投げる棘を、アスカはスコップで跳ね返す。
ミライの炎が援護し、ノヴァが弱点を指示。
――だが、このモンスター、普通の攻撃だけでは倒れない。
「一号ちゃん、想像力を最大限に使え〜っ!」シュウスケが声をかける。
アスカは目を閉じ、手の感触とスコップの反応に意識を集中する。
(形を変えよう……もっと長く、もっと鋭く……!)
スコップが光を帯び、振るたびに刃先の残像が伸びる。
触手を切り裂き、投げる棘を避け、ついにモンスターを地面に叩きつけた。
「や、やった……勝った!」
アスカの胸に喜びが広がる。
「うん、その調子」ノヴァがうなずく。
「君の〈メイク〉は、確かに成長した」
シュウスケは枝に腰かけ、茶化しつつも満足そう。
「ふふ、一号ちゃん、いい修行になったね。次はもっと面白い相手を紹介してあげる♪」
森の奥で、アスカの〈メイク〉は確実に力を増した。