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第七章 風の知らせ、炎の誓い

焚き火の名残がかすかに燻る洞窟の奥で、俺、カイル・レオンハルトは頭痛に顔をしかめていた。

「……うぐっ……昨夜の酒、ちょっと効きすぎたかもな……」

そう言いながら、横を見ると、ダンが岩壁に寄りかかって眠っており、カルドは口を開けて器用にいびきをかいている。一方、ヴィスは、目を覚ましたばかりなのか、目元を揉んでいた。


そんな中、遠く空から機械仕掛けの音が洞窟の中にも降りてくる。

――《観測艇より通達。最終試験終了まで、残り三日――残り三日――》


その淡々とした無機質な声を目覚まし代わりして、俺達四人は重いまぶたをこじ開けるようにして起き上がった。



俺、ダン・マーフィーは、頭がガンガンしている中、ギルドの観測艇から流れてくる声で目を覚ました。


「……残り、三日か」

先に起きていたカイルが、ぽつりと呟いたことに俺は肩を回しながら答える。

「三日……行動に出るなら今日だな。待ってるだけじゃ、状況は変わらん」

妻のアイシャと娘たちのところに生きて帰るには、このまま洞窟に隠れ続けるのではなく、大型のブレード・ラプターと対峙して、積極的に動く必要がある。


俺、カルドは、ダン達の話を聞いて、

「だったら、探しに行くしかねぇだろ。あのリオ・アルデンって奴をよ。」と提案した

まだ、昨夜の酒が抜けきってないが、やるしかない。

あいつが持つ罠の知恵があれば、大型のブレード・ラプターにも勝機があるはずだ。


私は静かに頷き、こう言った。

「彼の知識と判断力があれば、この絶望的な状況も打開できるかもしれない。」


俺は焚き火の灰を踏みしめながら、聞いた三人の意見を受けて、ぽつりと呟いた。

「よし、決まりだ。今日はリオ・アルデンの捜索の為だけに動く。」


その為にまず俺は、洞窟の入り口に集まるC-1〜C-4、C-6、C-7の六チームに声をかけた。

「お願いがある。これから俺たち四人は、罠作りの為、リオ・アルデンというヤツを探す。だから、そのために協力してほしい。」と今までの出来事を踏まえた上で彼らに話した。しばらく沈黙が場を支配した後、最初に手を挙げたのは、C-4の隊長だった。


俺、マルコ・ベルナルドは、カイルの話を聞いていた、C-4チームの隊長だ。

「お前たちの話はわかった。協力しよう。それと、その罠作りってやつにも、俺たちは手を貸せるはずだ。」

俺はこの話を聞いて、カイルという青年に感銘を受けた。仲間を失いながらも諦めない意志、そして冷静な判断力。彼についていけば、生き残れるかもしれない。

それに、俺のチームメンバーも頷いている。みんな同じ気持ちだ。



私の名前は、レイナ・クロス。カイルの話しを聞いていたC-1チームの隊長で、シエナの姉。

妹が死んだかもしれないとカイルから聞かされて、私は泣き崩れそうになった。でも、今は復讐のことより生存を優先しなければならないと考え、カイルの申し出に賛同した。

だから、私は手を挙げる。

「妹のためにも、必ず協力します。」



俺、サム・ホーキンスもカイルの話に賛同した、C-2チームの隊長だ。


「俺たちも手を貸すぜ」

正直、この状況で生き残る可能性は低いうえ、カイルの提案は理にかなっている。

これを断る理由が見つからない。


俺の名前はエリック・ジョンソン。C-3チームの隊長をさせてもらっている。

「当然だ。一人でも多く生き残らなければならないからね。」

それに、俺は軍人の家系で育ったから、団体行動の重要性を理解している。

個々の力は弱くても、連携すれば大きな力になる。それが今回の生存への道だ。


私の名前はアンナ・スミス。C-6チームの隊長です。

「もちろん協力します。みんなで力を合わせましょう

私たちは医療技術を学んでいたので、衛生兵の役割を果たせると思います。だから、負傷者の手当てなら任せてください。」


俺はジェイク・ウィルソン。C-7チームの隊長だ。

「もちろん俺たちC-7チームも参加するぜ。」

それに、俺たちのチームには、犬型従獣のルゥンがいるから、捜索にも役立つはずだ。

「うちのルゥンも捜索に協力させよう」


その場にいた、全てのチームが協力を申し出るのを確認してから、俺は礼を述べ、役割分担を伝えた。


「ルゥンを連れている者は、捜索班に加わってくれ。リオの捜索を頼む。ルゥンの嗅覚があれば、彼の痕跡を追えるはずだ。それと、他の者は、大型ブレード・ラプターの目撃情報を集めてくれ。できるだけ早く、奴の位置を突き止めたい。」

俺の指示は的確だったようで、洞窟にいた者たちからは、反対の意見が出なかった。


指示を出した後、俺たち四人は、仲間の亡骸を、迎えに行くという、もう一つの目的のために、洞窟の外へと再び足を踏み出した。



「ランス、頼む。まずは、これで……ユリオの亡骸を探してくれ。」


俺は相棒のランスに、念のため預かっていたユリオの所持品を嗅がせる。すると、ランスは鋭く鼻を鳴らし、先頭に立った。


クゥン、クゥン

ユリオの匂いを思い出した。彼は、怖がりだったけど、優しい匂いの人間だった。

でも、今はもう死の匂いと混じってる。悲しい。

だけど、カイルのために、僕は彼を見つけなければならない。



やがて、ランスの鼻が導いた先は、東側の砂浜近くの森の縁――ユリオは、そこにうつ伏せに倒れていた。


ユリオの亡骸は、大型のブレード・ラプターの爪痕が背中にくっきりと残されていた。加えて、苦痛に歪んだ顔が、彼の最期の恐怖を物語っていた。


「……すまない、ユリオ」

俺は呟く。もっと早く追いかけていれば、彼を救えたかもしれない。

そして、ダン以外の二人も、彼の身体を、何も言わずに回収してくれた。


次に向かったのは、西側の砂浜。そこにはアレンとシエナの姿があった。

既に想定していたことだが、そこにはシェル・クローラーの群れがいた。


「罠を仕掛けて足止めする」

俺、カイルはダンと一緒に飛び出し、罠を仕掛けて足止めする。そして、タイミングを見て一気に抜ける。


俺は斧を構える。シェル・クローラーの硬い甲殻以外の、柔らかい関節部分を狙って。

「カルド、俺とカイルに続け!」


「よし、今だ!」

俺はダンの指示にしたがって、爆弾を群れに投げての注意を引く。そして、その隙にカイルが死体を回収する。

「急げ! 長くは持たないぞ!」


「こちらも準備完了です!」

私はカイルの動きを見て、弓で群れの動きを牽制する。

無事、連携が上手くいき、カイルが二人の亡骸を回収して来た。


砂浜から回収したアレンとシエナの遺体は、シェル・クローラーの爪痕で無残に傷ついていた。でもそんなことは、関係ない。何故なら俺たちは彼らを仲間として迎えに来たからだ。


三人の亡骸は、洞窟近くの木陰に集めて、小さな石を積んだ墓を築き、誰ともなく手を合わせた。

「アレン、シエナ、ユリオ……どうか……安らかに眠ってくれ。」

そう、俺は祈りを捧げる。


墓を、築いた時には、ただ月明かりだけが、三つの墓標を照らしていた。



そして、俺たちが夜になって洞窟へ戻ってきたその時には、全てのチームが戻って来ており、昨日まで、いなかった、深緑の外套に、丸眼鏡で技術者然とした一人の青年をまじえ、大きな円を作って一つの焚き火を囲っていた。


ーーその光景は、昨日までとは打って変わって希望に満ち溢れていた。

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