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第8話 地下ダンジョンの怪物②

 闇の怪物ヴォル・オブスキュラの咆哮が、地下遺跡の空間を震わせる。

 俺の全身は震え、剣を握る手に汗が滲む。


【アル=ブラッド】「《赫焔斬形・零式》、再展開可能だが、無闇に使うな。魔力消耗が激しい」


【リリィ】「タクミくん、敵の動きをよく見て! 弱点はその中央の黒い瘤みたいな部分よ!」


【パンツ(♀)】「……はぁ♡ 敵の匂いも緊張感も、たまらないですね♡」


【ブーツ】「もうすぐ足元揺らされるで。油断すんなよ!」


 俺は深呼吸をし、目の前の怪物に意識を集中する。

 動きは鈍い。が、力強い。脈打つ肉塊がうねり、触手のようなものが伸びている。

 直後、その足跡から赤い槍のようなものが突き出た。

 足を狙うとは、合理的だ。

 丸太のように太い槍が地中から一斉に突き出してきた。

 俺は太い槍を避けるが、槍は自由に形を変え俺を追ってくる。

 槍のように刺し、糸のように囲い喰らいついてくる。

 これが奴の戦い方のようだ。自由自在に動くこの触手で、一方的に嬲り殺す。

 俺はただ観察した。触手の動きを見て、回避に必要な動作を最適化していく。 回避とは、反撃への予備動作なのだ。そして回避の動きが小さければ小さいほど次の反撃が、速い。 

 避けた槍がさらに分裂し、四方八方か俺の動きを封じて、串刺しになりそうになる。が、紅蓮の炎で剣身を包み込み、怪物の表皮を炙る。

 だが、奴は動じず、逆にその巨体で突進してきた。

 衝撃で吹き飛ばされ、壁に激突する。息が詰まり、意識が薄れかけたその時——


【アル=ブラッド】「俺の力を使え、タクミ! 契約の力を解放しろ!」


 その瞬間、剣の炎が爆ぜ、形状がさらに変わった。真紅の翼のような光が剣から舞い上がる。


【発動スキル:《焔翼絶閃フェニックスブレード》】


「これで終わりだ!!」


 燃え盛る剣を振るうと、怪物の中心部にある黒い瘤が豪快に切り裂かれ、怪物の体は悲鳴のような音をあげて崩れ落ちる。


「やった……!」


 ヴォル・オブスキュラは完全に沈黙し、遺跡の空気が一瞬、静寂に包まれる。


【リリィ】「……やったわね。タクミ」


 闇の奥深くから、古びた石の扉が音を立てて開き始めた。

 そして——


「地上か………」


 地下ダンジョンをクリアし俺たちは地上へ戻る。

 久しぶりの太陽。日が眩しい。


【パンツ(♀)】「……ふふっ♡ 久々の風が気持ちいいですね♡ しかも、タクミさんと一緒ならなおさらです♡」


【ブーツ】「外の空気ってのは、やっぱええなあ。あんなとこ、もう戻りたくないわ……!」


 俺は静かに頷いた。そして、仲間たちとともに、夕焼けに照らされた丘をゆっくりと歩き出した。

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