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第3話:「※イツワリノアオハル Day2」

朝、いつもと違う空気だった。


校舎に向かって正門を通過する生徒たちも、どこか浮つきながら、落ち着かない様子を隠せていなかった。


そんな中、俺――野中蓮は、いつも通り教室に向かったが、妙なざわつきが広がっていた。


「藤田さん、昨日の最終リハのとき倒れたらしいよ」

「マ?ヤバくない?代役いないんじゃん」

「玲央も全然来ないし…」

「LINEしても既読(レス)ないし、マジでヤバいなこれ」

担任の先生が来るまで、劇の主人公たちが来ないことに心配するクラスメイトたちがいた。


担任の先生が教室に入り、少しだけ声を落として、伝えた。


「今日、演劇班の東條くんと藤田さんは、体調不良で欠席との事です。」


一瞬、教室の空気が止まった。

(……マジかよ)

(どうすんの、これ……)


騒然とするクラス。演劇班の連中が顔を見合わせる。先生は軽く咳払いをして、続けた。


「皆さん、落ち着いてください。本番の予定に変更はありません。代役については

演劇リーダーの指示に従ってください」


そう言い残して、先生は教室を後にした。


そして、残された俺たちは――ただ立ち尽くしていた。


クラス委員長と、演劇班リーダーが前に出た。


「……代役できるひと、いる?」


誰も手をあげる気配がない。


「誰か、やってくれないか?」


しばしの沈黙。


「今さらじゃね?玲央はともかく、ことねなんか前から相当ヤバかったんじゃん?」

「そういうお前はどうなんだよ、本気で練習してないくせに」

「雑用のオタ達にやらせばいいじゃん」

「アイツらの持ってるシナリオ知ってるだろ?」

「誰だよ激ムズ台本を選んだヤツは」

クラス内が騒然とする中、宥める委員長と演劇班リーダー。


「時間だから、ひとまず準備を進めよう」と、委員長が苦し紛れに締めた。


雰囲気は、今までにないくらい最悪だった。


俺たち「雑務」組は、昨日と同じくジャージに着替え学校周辺の清掃へ向かった。


学校内のゴミ箱の袋を替えたり、周辺の清掃に勤しんだ。

俺の仕事は、誰にも見えない場所で働く。

ただそれだけ。


(……仕方ない。これが、俺たちの立ち位置だ)


名乗れば、勇気を出して送ったヤツに顔向けられないし、

あのクラスなら確実に犯人探しする。

最悪、俺のせいでオタク扱いにされる。


邪念を振り払い、仕事をこなす。


一方、空き教室に集まった演劇班と委員長

誰も語らず、ただ時間が過ぎていく。


「本当に誰もいないの?ハムレットとオフィーリア役」

委員長に至っては、今にも泣きそうな顔をして弱々しく尋ねた。


「…ぃます」

「「えっ?」」

委員長とリーダーが顔を上げた。


「オフィーリア、やります」

涼子が力強く言った。


さっきの落胆から顔を明るくし、安堵した二人。


「大丈夫?」

「はい。この時の為に、女子パート中心ですけど…」


それでも彼らにとっては十分だ。


「後はハムレットだけだな」「そうだな」


皆が明るくなっているうちに、リーダーは尋ねた。


「じゃぁ、ハムレット役を買って出てくれる人」


途端に喋らなくなり、顔を背ける。再びの沈黙。


いくら涼子でもハムレットを兼務することは出来ないし、ましてや長いセリフを短時間にこなせる人は、いない。


その時、ある人がつぶやいた。


「オタク達なら、どうなんだろう」


皆がはっと気がつかされた。


「オタク達の資料が散々なものを渡したのに、ちゃんと仕上げてたし…まぁ、流石にシナリオは怪しいけど」

「お前が渡したのか」

「ないない。するわけないじゃん。したらで秒でオタ認定されるじゃん。

青春を棒に振るなんてマジ勘弁だ(ない)わー。」


停戦合意下ならオタクにお願いする事ができても、長年体と心に浸透した「地位協定」には

反射的に拒絶反応を起こす。

お願いしただけでも、生徒会に「矯正」もしくはオタク認定され、一度オタクになったら

再びイケメンに戻る事は、不可能だと知っている。


大きく目を見開いていた委員長は、次第に決意したかのような顔に変えた。


「ここは、賭けるしかないね。」

「え、でもそれはあくまで噂で…」

「今は停戦合意下。先生は目を光らせても、生徒会は光らせてないわ」

本気(マジ)で言ってるんすか」

「仮にそうじゃなくても、私が責任取るわ。その結果がオタク認定されても私は構わない。」

「…もう知りませんよ」


委員長は演劇班リーダーに準備を指示し、退室しようとした時。


「委員長、私もついてきます。」

涼子もついて教室を出る。


その頃蓮は、少し休み汗を拭いていると、ふと、スマホに振動が走った。


【至急:昇降口裏に来て】


委員長からのメッセージだった。

班長に抜ける旨を伝え、指定された場所に向かった。


昇降口裏に向かう途中、委員長は涼子に尋ねた。


「……でも、どうして、最初に手を挙げなかったの?」

「……あんな大勢の前で言ったら、色々言われそうで。……怖かったの」

「そう……」

しばしの沈黙の後、涼子は続ける

「私、中学の頃演劇部だったんです。でも……いつも脇役ばかりで、主役なんて、遠かった。」

「……」

「だから……今度こそ、誰かを支えたくて」

静かに、でも確かな言葉だった。


昇降口裏。

蓮がついた頃には、すでに

委員長と涼子が立っていた。


「…あの、何でしょうか」


「野中くん、単刀直入に聞くわ。

あなた…本物のハムレットの台本、持ってるよね」


蓮は少しだけ眉をひそめた。


「……小道具の配置決めとか、照明の調整で目を通しただけど。

役回りがないから、全部は覚えてない」


委員長は顔をしかめる。

だが、涼子がそっと笑った。


「私、サポートするから。大丈夫だよ」


それは、救いだった。

あの日、誰も支えてくれなかった俺に、

今、彼女が手を差し伸べてくれた。


-蓮が来る前-

「演劇できそうなオタクがいるのに、何でわざわざ野中くんなの」

「蓮くんなら、ちゃんとこなしてくれる事を、信じてるから」


(信じる・・・か。いつぶりに聞いたんだろう)

二人の姿を見る委員長は、どこか安心したようだった。


誰もいない。空気がひんやりしていた。

体育館の裏手にある、小さな第二音楽室。そこで、蓮と涼子だけが、机を挟んで向き合っていた。

 

机の上には、シワだらけになった『ハムレット』の台本。それと、汗で滲んだプリント資料。

 

涼子が、クラリネットケースに座ったまま、小さく息を吐いた。

 

「……はじめよ?」

 

蓮は、頷いた。

 

涼子が台本を開き、蓮に向かって小さく合図を送る。

 

(……いけるか)

 

緊張を噛み殺して、蓮は、覚えている限りの言葉を探しながら、口を開いた。

 

「生きるべきか、死ぬべきか――それが問題だ」

 

教室の中に、蓮の声だけが響いた。

涼子が微かに驚いたように瞬きする。

 

(大丈夫だ。続けろ)

  

「運命の石礫に耐えるべきか、それとも武器を取り、苦難に立ち向かうべきか――」

 

小休憩


「蓮くん、すごいよ。あんな長いセリフを見ないでできて」


「そんなことないよ、たまたまだって」


リハーサルした蓮のセリフを褒めた。

ぎこちない台詞回しでも、ふたりの声は確かに重なり始めていた。

けれど――その時間の中で、ひとりだけ、胸を騒がせる者がいた。


涼子は笑顔を向けながら、目を伏せる。台本のページをなぞる指が、わずかに震えていた。


(さっき、“覚えてない”って言ってたのに……)


彼の声は、まっすぐだった。

どこまでも迷いがなくて、役を演じるんじゃなく、“そこに生きている”ようだった。


(すごい……本当に、すごいよ……)


けれどその感動のすぐ隣で、小さなざらつきが胸を締めつけていた。


(私、支えるって決めたのに……)

(なのに……どうして、こんなに、悔しいの……?)


涼子の視線は台本の中の“オフィーリア”に重なる。セリフはもう頭に入っていた。

それでもページをめくる手が止まらなかったのは――不安からか、焦りからか、自分でも分からなかった。


タイマーが鳴り、涼子は立ち上がった。


「……じゃあ、次の場面、いってみようか」


蓮の声が、優しく響く。

涼子は、小さく息を飲んで、微笑みながらうなずいた。


途中、言葉は途切れ途切れになるが

蓮は止めなかった。


涼子が小さく頷きながら、今度はオフィーリアとして震える声を重ねる。


「弱きこと、それは女の名なり……」


彼女の声は細いけれど、その場の空気を確かに震わせていた。


ページをめくる。ぎこちない台詞回し。でも、止まらない。


「愛していた、オフィーリア。四万人の兄弟を集めても……俺の想いには及ばない――」


そのとき、涼子が一瞬、息を飲む音が聞こえた。


(……ごめん)


何かが、胸を突いた。

でも、今だけは、演じる。

いや――演じるんじゃない。

生きるんだ。ハムレットとして、オフィーリアとして。


涼子が、震える声で、か細く応えた。


「……あなたが、命を捧げるなら……わたしも、すべてを、あなたに……」


誰がどう見たって、不完全なリハーサルだった。

言葉は飛び、段取りはぐちゃぐちゃで。


でも。

その空間には、たしかに「何か」が生まれていた。

俺たちは、知らないうちに――役を超えて、自分たち自身を、賭けていた。


一通り、台本の流れを追いきった。


つっかえたり、言い間違えたり、やらかしも多かったけれど――なんとか最後まで辿り着いたその瞬間。


「ぷっ……」


「あはははっ……もう、無理、なんか……最後のセリフ、蓮くん真顔すぎて!」


「お互いさまじゃん! “私もすべてをあなたに”って、涼子さん完全に昼ドラだったよ!」


「や、やめて……笑いすぎて涙出てきた……!」


机を挟んで、ふたりして腹を抱えて笑った。


小さな第二音楽室に、さっきまでとは違う声が響いていた。

さっきまで震えていた声も、こわばっていた空気も、少しだけ解けていた。


だけど。


その笑いの中で、涼子の胸の奥に――小さな波紋が残っていた。


(……なんで、だろ)


笑ってるのに、胸が痛かった。


(こんなに楽しくて、嬉しくて、あったかいのに)


ふと、彼の声が頭に蘇る。

さっきのあの一言一言。演じているのに、蓮くんの“素”みたいだった。


(私……もっと、蓮くんと……)


気づけば視線は、机の上の台本ではなく、目の前にいる彼を見ていた。


(“演劇”じゃなくて――“この時間”が、欲しいんだ)


でもそれは、声にできなかった。

できないまま、タイマーの電子音がリハの終了時間を告げた。


「……よし、もう一回だけ、いってみよっか」


「うん……!」


ふたりは、本番ギリギリまで再び台本を開いた。

けれどそこにあったのは、すでに“役”だけじゃなかった。



-体育館・舞台袖-


俺と涼子、演劇班リーダと出演者、クラス委員長が集まっていた。

客席はざわつき、演劇班の誰もが緊張していた。


「野中くん、佐藤さん、急なお願いを聞いてくれて本当にありがとう。」


一礼するリーダ。


「ちゃんとできるかどうかで分からないけど、練習の成果ここで出していこう!」


涼子の掛け声で、みんながオーっと叫んだ。

俺はこの学祭で叫んだのは、初めてだ。


「蓮くん」


ステージに入る前に涼子に呼び止められた


「ありがとね」


「うん」


「どんなことあっても、楽しも?」


俺たちが、ステージに立つ。


え、なになに

オタク?マジないわー

このクラス演劇、マジで終わった

えー。ことね目当てで来たのにー

は?レオ様じゃないなんてあり得なくない?

….


聞こえるのは、ざわめきや、オタクを組み込んだことによるもの失笑。

大失敗前提の冷ややかな視線。


それでも――


(逃げるな)


開演のベルが鳴った。


一方、結衣と玲央は、

「うわ、始まった。見ものだね。」

「クラス演技なんて、大したもんじゃないけど。」

「えー、アタシは玲央っちの演技見たいよー」

「まぁ観てなって。マジ面白くなるから。」

と話していた。


最初はやはり付け焼き刃状態のリハーサルと緊張からか、

蓮と涼子のセリフが辿々しかったが、話しが進むに連れ慣れて行き

次第にスムーズになった。

照明を担当しているオタク友達も最初は驚いたが、

次第に呼応するかのように、今までにない本気度に臨んだ。


そして迎えた【クライマックスシーン】


ハムレット(蓮)が、愛する者を前に、

運命に引き裂かれ、

それでも抗う場面。


蓮が言うべきセリフの順番。

言葉。


一瞬で、

すべてが飛んだ。


オフィーリア役の涼子も、

言葉を失った。


そこにあるのは無音と静寂。


(サポートをすると言っていたのに、どうしてとんだの?

セリフ言わないといけないのに、つっかえて言葉が出てこない。)


(どうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよ……)

涼子が焦り始めた時、


蓮は深く息を吸い、

ゆっくりと顔を上げた。


「……なぜ、神は、我らを選び()うた」


(えっ・・・れ・・・ん・・・くん・・・)


即興だった。

だが、その声音は揺るぎなかった。


「父を、母を、愛しき者を失うこの痛みを、

我らだけに課すのか……」


体育館の空気が変わる。


蓮の透き通った声が涼子に刺さり、同時に中学の

思い出を起こさせ、思い出すほど涙が溢れる。


(蓮くん、….ごめんなさい…)

(玲央なんかと付き合わなければ、….こんな惨めな思いにならないで済んだのに)

悔やんでも、悔やみ切れない過去の自分

(玲央を手放して、やっとあなたの元に行けると思った私が浅はか(バカ)だった)

蓮の閉ざされた心は、涼子には救えなかった

(リハの時に聞いた声、あれがほんとうの蓮くんのココロ。眩しかった。美しかった)

蓮の優しさは走馬灯のように思い出す


(もうあなたと一緒に歩む資格などない最低な女だけど…)


溢れる涙で濡れた顔で涼子が震えた手で、

スカートの裾を握りしめて一歩ずつ蓮に近づき。


(これだけ、これだけ・・・言わせてください・・・っ)


そして――


(私は・・・わたしはぁ・・・っ・・・)


「「それでも、私は……あなたを愛しています」」


その顔は大粒の涙が流れ続け、かすれながらも

力強く、だけど悲壮溢れる声だった。


それは台本よりも、何よりも、

オフィーリアと涼子が重なった”魂”そのものだった。


蓮は、震える涼子の手を、そっと取った。


(蓮くんの手、あたたかい・・・)

蓮に握られるのはこれが最初で最後になるかもしれないと思い

彼の熱を噛み締めた。


「ならば、我が魂よ。

いざ――この世界を、

我らの手で終わらせようではないか」


 

涙を流し続けながら、涼子が応えた。


「たとえすべてが朽ちようと、

あなたの光だけは……私の中で生き続ける」


(蓮くん・・・ありがとう・・・だいすき・・・でした・・・っ)


(涼子・・・)


蓮は、心の中で呼んだ。

でも、声には出さない。


それが、

役者である俺たちの、最後の誇りだったから。


そして、最後。


ハムレットは、

静かに涼子――オフィーリアを、そっと離す。


(私、がんばるよ・・・ささえるよ・・・ずっと) 


涼子は

その背中に、ただ小さく、手を伸ばした。


掴むことなく、

ただ見送った。


照明が落ちる。


静寂。そして


割れんばかりの拍手が、体育館を包んだ。


カーテンが降りた。


次の瞬間、

割れんばかりの拍手が湧き上がった。

スタンディングオベーションする者いた。


なにこれヤバっ

めっちゃカンドーした

これオタク見直した

マジ神演技

あのクラスをマジでナメてたわ 

……..


カーテンコール

蓮がちらりと客席を見れば――


美鈴が座りながら本気で涙を拭っていた。


その光景に、

俺は胸の奥を締め付けられる思いだった。


鳴り止まない拍手は、キャストが去るまで続いた。


「ヤバっ・・・マジ神演技じゃん」

結衣大粒の涙を流していった


だが玲央にはその声すら響かなかった。


玲央の計略がことごとく台無しにさせたことに怒りを覚えた。

歯を食いしばりながら。

その目には、憎しみが渦巻いていた。


(野中ぁ・・・テメェ・・・テメェだけはぁぁぁぁ・・・)

割れんばかりの拍手が、まだ耳に残っていた。


舞台裏で、涼子と顔を見合わせた。

ふたりとも、ぐしゃぐしゃな顔をして、

でも――笑っていた。


「……ありがとう、蓮くん」


涼子が、かすれる声で言った。


「……こっちこそ、ありがとう」


俺も、そう返した。


言葉は、それ以上続かなかった。

でも、それで十分だった。


スポットライトを調整していた拓真は、

最後のシーンを見届けると、

無意識に拳を握りしめていた。


(やりやがったな、蓮……!)


舞台袖に戻ってきた蓮に、

誰よりも早く近づき、感動のあまり涙を流しながら力強く肩を叩く。


「……マジ、最高だった」

「顔ぐちゃぐちゃじゃん」

「うるじぇー」


蓮は驚いた顔をした後、照れたように小さく笑った。

それだけで、すべてが通じ合った気がした。


(お前は、もう――どこにも引け目なんか、いらないんだよ)


拓真は、静かに心の中で呟いた。


客席の隅。美鈴が、ハンカチで目を拭いながら、小さく、でも確かに拍手を送っていた。

スマホが鳴り、それを見てから体育館を後にした。


結衣は、両手で顔を覆いながら泣いていた。それでも、誰よりも力強く、拍手を続けていた。


そして――玲央の背中には、怒りと憎しみだけが、滲んだまま学校を去る。


「ハムレットとオフィリアのご帰還だ」


教室に戻った蓮達はクラスのみんなから、拍手と笑顔の中に、少しだけ戸惑いを混ぜながら、

「……オタク、意外とすげーな」

「見直したわ」

と、褒め称えられた。

後日、学祭MVP賞を受け、玲央を除く全員で記念撮影をした。


でも、その視線の奥には、まだ拭いきれない“線”が残っていた。


(ああ、そうだよな)


奇跡は起きた。でも、それで世界がすべて変わるわけじゃない。

そんなこと、分かってた。


夜。体育館を出ると、空には、星が瞬いていた。

蓮は静かに空を見上げ、ふっと、目を閉じた。


(でも、俺は、もう逃げない)

(ありがとう・・・涼子)


心に、小さな灯が灯った気がした。

一方その頃、校内放送で、事務的なアナウンスが流れる。


「明日以降の学園祭は、通常進行となります。」


それは“魔法の時間の終わり”を告げていた。

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