5 お母さんの子守歌
お母さんの子守歌
あのとき見ていた私の夢は、私の気持ちは、どこに行ってしまったのだろう? 消えてしまったのだろうか? それとも、まだ私のどこかにこっそりと(忘れ物みたいに)残っているのだろうか?
黄色い舟はゆっくりと泉の上を進んでいます。
のんびりとしていて、なんだかすこし眠たくなってきてしまいますね。
みぞれとくままるは二人で一緒に体をくっつけて、その丸っこい顔をずっときらきらしている青色の泉に向けていました。
くままるは真っ赤なりんごを食べています。みぞれから仲直りのしるしにもらったりんごでした。
やがて、ぽちゃん、と音がして、魚が一匹跳ねました。
「くままる! お魚さんですよ!」とみぞれが水面に波紋のできているところを指さして言いました。
「どこどこ?」とくままるは言いました。
「ほら、あそこですよ!」
みぞれは波紋のところを指さしますが、お魚さんの姿はどこにも見ることはできませんでした。(残念です)
「くままる。なんだかとってもわくわくしますね」とみぞれは言った。
「うん。わくわくするね」とにっこりと笑ってくままるは言いました。
「もう少しで向こう側の岸につきますよ」と黄色い舟が二人に言いました。
黄色い舟の言う通りに向こう側に岸が見えてきました。
そこまで黄色い舟が来ると二人は黄色い舟から降りました。
「どうもありがとう」と二人は黄色い舟に言いました。
すると黄色い舟は「どうしたしまして。またどこかで会いましょうね」と言って、今度は泉の上ではなくて、空に浮かぶようにして、空の中を泳いで行くようにして、遠いところにいってしまいました。
みぞれはそんな空を飛んで行く黄色い舟を見て、きっと黄色い舟は夜空に浮かぶ三日月になるんだと、そう思いました。