Ep.5 我の名は...
さらっと前回のあらすじするわ。 俺、アマミヤ・リンはバスケットゴールに押し潰されそうになった女、キリサメ・サクヤと連絡先を交換した。その女に集る小蠅達にボコボコにされそうな悲劇のヒロインの俺だったが、白馬の王子ことクソイケメン変態ストーカー、ノバラ・レンに助けられる。まぁ色々あって、ロボットが暴走。破壊。戦いが始まる! 覚えてないやつは思い出せ! 以上!
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「システム正常。動作安定。全機能使用可能。エネルギー98パーセント。 ナビゲーションシステム正常に動作。リン様。現在敵対勢力の数は17体、マップに表示してあります。」
ーーー久々に着たけどやっぱり凄いスーツだな。機動性を重視したが、同時に耐久性能に優れてる。さっきから壊しているロボットの人工筋肉を元に作った。人工血液は、エネルギー源だ。つまりこのスーツは生きている。両腕に高周波ブレード。簡単な金属類であれば振動で切断可能だ。音がうるさいのが難点だが... スーツに搭載されてる機能については後々触れてくわ。
「やっぱり、股間周りがムズムズするな。そっちはどんな感じ? ていやー!」
「レン様を放送室近くに下ろしました。残弾残り23。敵残り16。」
ーーー今使っている銃は、対人専用小型ライフル。見た目はピストルに近いが、こう見えてライフルだ。あぁ、メタ的な話するわ。小説だと見た目とかうまく伝えられないんだ。わりぃな! このライフルは変形可能で、スーツに取り付けられている部品を組み合わせると対人から対兵器に変わる。テストする場所が無かったから、どうなるかわからないけど。Eveの予測だと...2発...それが撃てる限界だ。それ以上は、銃の方がダメになるらしい。まぁ、使う機会は無さそうだな。
「よし、じゃあ武装してる奴を無力化してくれ。あらよっと!」
「了解。リン様、学校では廊下を走るのは校則違反です。敵残り15。」
「Eveさん?今そんな状況じゃないですよぉ...あ、そうだ。いいこと教えてやるよ。ルールは破るためにあるんだぞ?」
「それは間違いかと。敵残り14。」
「間違いという考えが間違いだ。現状、昔から日本は嘘まみれだ。政府、メディア。その他もろもろ... そしてその嘘は時間が経つとともに忘れられる。面白いよな。明日には別のことを考え出すんだから、人間は... 力が無いものはその真実に辿り着くことができない。ただの傍観者と化すんだ。 拷問でもして吐かせればいいのに。」
「リン様それでは...罪に問われます。敵残り12。」
「その罪、てのは...誰が作ったんだ?なむなむの神か?違うだろ? 人間。ヒューマンだ。 人間は平和を掲げ、平等に生きるために法や秩序を作ったんだ。それによって苦しめられている者がいるとしてもね。自分に都合のいいように作られた欠陥品なんだよ。他者のことを第1に考えてる人間。数億人に1人だろ...この世に完璧なんて物は存在しない。結局何が言いたいんだっけ? あ、そうそう。人が作ったルールごときに俺はペコペコしない、てことだ。永遠の反抗期、てところだな!」
「私は、時々...貴方が何を考えているのか、分かりません。敵残り10。」
「何考えているかわからない...か。昔からよく言われてたな。」
ーーー俺からすれば、よく分からないのはお前らの方だ...
「Eve。こっちは終わり次第お前の元に行く!お前は好きに行動しろ。報告は忘れるなよ?」
「了解。」
ーーーレンは...大丈夫そうだな。周りに生体反応は無し... 死体だらけだ。まぁ...運が無かった、てことで。南無三。
校内放送が流れ始めた。声の主はレンだ。何度も同じアナウンスを繰り返している。
「僕の声が聞こえていたら!体育館に集まってください!そこが一番安全です!自分の身を第一に!」
ーーー確かに、この学校の体育館は正門から一番離れている。ん?なんだ...? 敵の数が減ってる...? Eveじゃない。誰だ...? 行ってみるか...
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正門を装甲車で封鎖している武装集団。人数は8人。呑気に会話している。リン言わく、余裕があるうちは、ボロがでやすいという。
ーーー対象を確認。録音開始... 録音終了...
「リン様。」
「なんだぁ!ほっ!よ!」
「敵対勢力から情報を得ました。しかし問題があります。」
「オーケー!ん...?問題? オラァァ!!!」
「どうやら保険を用意していたようです。被害を最小限に抑えるのは厳しいかと。」
「どの道もう死人は出てるからな。やっていいぞ。」
「了解。」
武装集団は、空に浮かぶ黒い人型兵器を見るや否や顔色が変わった。
「あれは...ガ○ダムか...?」
「先輩...ガ○ダムにしては小さいですよ。」
「申し訳ありませんが、他作品の名前を出されるのは色々と困ります。ですが、機動戦士ですか。機体名がまだありませんので是非参考にさせていただきます。」
「なんなんだコイツ...味方なのか?」
「武装を解除して頂ければ、敵対することも...遅かったようですね。」
「撃て!撃ちまくれ!!!」
武装集団は銃撃を開始した。全弾命中。しかし、人型兵器にダメージは与えられない。
「申し訳ありません。そのような武器ではこの体は破壊できません。敵対意志を確認。」
「RPGを持ってこい!」
「戦闘を...開始いたします。」
ーーーここはリン様の言葉を借りましょう。
「見せてもらいましょうか。この機体の性能とやらを。」
Eveは機体へのダメージが大きいと認知したものだけをかわす。
「はやい...全然当たらない!」
高機動モデルの為、装甲はペラペラだ。1度でも爆撃を喰らえば破壊される。だが、そもそも当たることを想定されていない。
ーーーネクター砲... 目標...敵装甲車...
ネクター砲...肩アームに取り付けられている試作型ビーム兵器だ。超高熱で圧縮したエネルギーを放つ。広範囲を高火力で焼き払うことができるが、クールタイムが長い。
「発射。」
装甲車を簡単に貫き、地面に届いた瞬間。周囲は熱に覆い尽くされた。無論そこに居た人間は灰になった。
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「リン様。武装した敵対勢力は全て排除しました。」
ーーーこいつ...今絶対ネクター使ったよね... 爆発音が丸聞こえだ。前に...「使えるものは全て使え。」なんて言ったんだけど。その結果がこれか。
「サンキュー!機体チェックをしといてくれ。あと状況報告も頼む。」
「了解。レン様により、生き残った生徒は体育館内に集まっています。しかし、その場に留まり続ける者も数箇所で確認しました。」
ーーー恐怖心、てやつか。...たくよぉ。めんどくさいなぁ。別にほーちしてもいいんだけど... 1人...堂々と廊下を歩いている生体反応がある。そいつが気になるな。丁度ロボットと鉢合わせするし、見に行くか...
リンは光学迷彩を使い、影からこっそり様子を見る。目線の先には1人の女子生徒と暴走したロボットがいた。
「ねぇ、どいてくれない?その先にいるやつに用があるんだけど。」
「ゲゲゲコココ...ウノォォ...ジジジジ...カン...」
ーーー危機管理能力の欠如...?いや違うな。圧倒的自信。強者特有のオーラが出てる。体格的に圧倒的不利だが... ...! 一撃で頭を... へぇ、そういう事か...
小柄な女は、ひとまわり大きな体格のロボットの頭を右足で吹き飛ばした。足はそのまま壁に突き刺さり。抜くためにあたふたしていた。
「なによもう。言うこと聞いてよ...!」
ーーーあらまぁ...イチゴパンツか...今どきいないだろ。そんなパンツはく人。 見た感じ...あのブーツを完全に使いこなせてないみたいだ。しかし、あんな使い方があるなんてな。 ...あれ?あの子、どこ行った?
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数分後...図書室内。
ーーーうんうん。なるほど... 用がある相手とはサクヤパイセンみたいだ。 殺気がすっご〜いんだからこの子... うんうん。好きだった男に見向きもされない。はいはい。お前のせいだぁ〜、てね。
「でもよかった...神様はいるんだね... こんなにも絶好のタイミング...そうそう来ないもの。あんたが死んでも私が殺ったなんて誰も気づかない。」
ーーー見てますよ〜 俺、全部見てますよ〜
「ごめんね...私が何をしたのか...よくわからないのだけど...もし、あなたを傷つけていたのなら謝ります。」
ーーーあら律儀... これは好かれますねぇ。 つか、すみっこぐらししてる生徒が数名いらっしゃいますが...口封じに殺される感じですかね?
「命乞いのつもり!?私がどれだけ...あの人を好きだったか...地獄で考えろ!!!」
ーーーは〜いストップゥゥ!少しはヒーロー、ぽく登場してみようかな。迷彩解除...
サクヤの頭部目掛け、飛んで来る蹴りをリンは左腕で抑える。
「その力を私利私欲の為に使うか...」
ーーーどうだ?このなかなかのダークヒーロー感。惚れてもいいんだぜ!
「リン様。心拍数が上昇しています。」
ーーーEve...空気を読んでくれ...今いい所なんだ!
「私の蹴りを、防いだ!?」
ーーーこれは...人工筋肉...逝ったな...
「私の...?笑わせる。貴様のそれは借り物の力に過ぎない。」
ーーーそもそも俺のだからね?そのジェットブーツ。適当に路地裏に捨てたのが、まさかこんな子に渡ってしまうなんて...
「何者...あんた...」
ーーーキタァァァ!待ってたよ!その言葉を!考えてきたんだから!ヒーロー名!数年かかったんだから!
「我の名は...フェン...」
「リン...?」
「ふぇ...?」
俺の数年間はサクヤのひと言で終わった...