EP.1 脳力という能力
ある日… ある者が言った。人間は脳の機能を10パーセントしか使えていない。だが…仮にもし、その10パーセントの壁を超えることができたなら、人間は超人になりえるだろう。とても夢のある話だ。だがこれは最近の研究で間違いであるという結果がでた。人間は常に100パーセント、脳を動かしている。その仮説はアニメやおとぎ話などのフィクションにすぎない、と…
…否 それこそが間違いである。なぜそう言えるのかだって?
俺はその壁を超えたからだ。
…その力は知らぬうちに発現していた。初めて認知したのは、中学生の際に転んで怪我をしたときだ。体から出ていく熱を感じた。その力は次第に強まり、今では常時感じることになった。全身を巡る血液を… 例えるなら、体の中を大量の虫が散歩してる感じだ。気持ち悪すぎて何日かは寝れなかった。 ほんと、慣れるまで時間がかかった。
俺は、格闘ゲーム「ストリームファイター6」は負けなし。…理由は簡単だ。体を自由に動かせる。自分という形を完璧に支配できるのだ。コントローラもこの通り、コマンドも絶対にミスらない。体の一部のようだ。だが、僕の動きにキャラクターがついてこれない。改善してほしいものだ。ちなみに今月は3回BANされている。チーターじゃないんだけどなぁ…
ここまで聞くとなかなかいい能力だと思うかもしれない。だがそれは… まちがいだ。
これから起こる。終わりの始まり...その選択を俺が握っているのだから...
これは俺の記憶...今までの記憶...俺がしてきたことをここに記そう。誰かが俺を見つけてくれるように...
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俺ははどこにでもいる。普通の高校生だ。勉強も普通 スポーツも普通 そう、普通なのだ。
その日はいつも通り自分のクラスに入る。 …入る。 …入りたい。 …入らせろ!!!
ーーー毎日、毎日…女が教室の外に寄ってたかって! ほんっと! 邪魔!!!!
レン「おはよう!リンくん。今日も奇麗な髪だね。美しいという言葉が似あう男性は世の中探しても君ぐらいだろうね。」
ーーーその言葉を俺じゃなく、周りのギャラリーに言って気絶させてほしい。 やっと、通れた...
女達にキャーキャー言われているこの男。名は、野薔薇 蓮 アニメに必ず一人はいる…イケメン枠だ。
リン「お前、登校時間遅くしてくれない? あの肉壁超えるの大変なんだよ。」
レン「それはすまなかった。では、校長に声をかけてみるよ。12時に変更してもらうのはどうかな?」
リン「違う。お前がもう少し遅く来ればいいだけだ。」
ーーーこの男は…なんでも金で解決しようとする。親の顔が見てみたいものだ。まぁ、大手企業の社長だから、メディアを通じて見たくなくてもわかる。
セバス「ぼっちゃま?お父様に叱られるのは私なんですよ?」
レン「セバスチャン。お金は使うためにあるんだ。」
ーーー入学式から思っていたんだけど、学校に執事を連れてくるとか。アニメとかドラマだけにしてくれよ。 まぁ、この学校に援助できるほどのボンボンだからな。校則なんてクソ喰らえ、てところか。けど...毎日授業参観、て考えると... ちょっとキツくないか?
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近年、テクノロジーの進化によってロボットが当たり前のように社会に溶け込んだ。この高校もそうだ。一昔前まで教育は人間が行っていたものだったが、教師はもちろん、学校の警備までもが、人型のロボット...「ヒューマノイド」が行っている。まぁ、多少の教員はいるんだけどね。 レンの父はそのロボット産業を独占し、日本だけではなく、世界が誇る企業になったのだ。
ーーーおかげで職を失った人間が馬鹿みたいに増えた訳だが… 俺には関係ない。 高校生にして、既にお金には困ってないからな。 ていうか...この男...
リン「おい、なんだよ...!気が散ってしょうがないんだけど...!授業中だぞ...!」
レン「観察だよ。君を見ることは、校則違反なのかい? 観察料がいるならいくらでも払うよ?」
ーーーはぁ...ほんとっ...めんどくさい...
無視すればいいじゃん?とか思われてそうだから一応言っとくけど... こいつのせいで全校生徒(女子)から毎日冷たい視線...いや、殺意が四方八方からビュンビュン飛んで来る。 授業中にもね... それから...
リン「おまえなぁ... うんこしてる所を眺めて何が楽しいんだ?」
レン「観察だよ?」
リン「そろそろ殴るぞ...」
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さて、俺はいつも屋上で昼食を取るのだが... もちろんこの男もいる。完全にストーカーだ。
レン「毎日クリームパンといちごミルクを購入しているみたいだけど、なにか意味があるのかな?」
リン「意味なんかないし、食べたいから買ってるだけ。」
レン「そういえばリンくんは甘党だったね。...これがギャップというものか... それより、中学からずっと一緒だけど、そろそろ僕とまともにコミュニケーション取ってくれないかな?少し寂しいよ。」
リン「彼女かよ...お前は。」
レン「彼女?...恋人か...僕にはいらないかな...」
ーーー...? 学生のほとんどは青春を恋愛に捧げるというのに... つくづく何を考えてるか分からない男だ。 けど、その顔の裏には何かがある気がする。表情が一瞬、変わった気がした。後で調べてみるか...
レン「けど、リンくんとだったら、そういう関係も悪くないかな!」
ーーーあ、こいつ...そういう奴だったのか...調べる必要なかったわ。
リン「レン...そろそろいくぞ。次は移動授業だからはやめn... ...!?」
振り返ると屋上にあるはずもないテーブルが置かれており、一流レストランと言わんばかりの面々が揃っていた。
ーーーはぁ!?こいつ何してんだ!?学校の屋上でフレンチ食べてやがる! どこから湧いて出たんだ!シェフ!!?
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レンが俺をストっ...執着する理由はわかっていた。そう...バレたのだ。
俺がまだ中学の時だった。いつも通りヤクザをボコボコにしていた。バイトがまだできなかったからね。
ほら、ヤクザは金持ち、てイメージが強いだろ?「龍は孤独」で一応は学んだ。 けど実際はその逆、理想と現実は違った。 まぁ、塵も積もれば...なんとやら、て言うじゃん? 俺はコツコツとヤクザをボコボコにして金策をしていたわけ。
それは、帰り道だった。偶然黒のセダンが襲撃されているのを目撃したんだけど、護衛の人は既に死んでて、辺りにはドス黒い血がバカみたいに広がっていた。 まぁ、死体を見るのは初めてじゃない。今の日本の犯罪件数は日に日に上がっているからね。銃刀法違反なんて法律も、あってないような物だ。
ーーー今日はとことんついてる日だ。だいたい片付いた後と見える。さっき怖いおじさん達からチャカを貰ったし、弾もたくさん残ってる。 えーと...人数は5人。全員武装してる。中々いい肉体だ。射撃の腕も...ゴールドランクくらいかな? 傭兵?何のために?車はこの辺りじゃあまり見ない高級車だ。大破している。誘拐の為にここまで大掛かりなことをするか?
...?子供?俺と同じくらいの... 血だらけで倒れてる。けど死んでは無い。 ああ...そーゆうことね...
※結論を導き出す時間10秒
この人達の目的は、そこの少年の殺害。理由は...仕事を奪ったヤツらへの報復、てとこかな?
その証拠に...倒れてる子の脈を測って生きていると分かった途端、銃口を向けてる。けれど、そんな子供を殺すことで満たされるものなのか?
殺すならその親玉だろ? まぁ、この人達はただ殺せと雇われただけ、てところだな。金の為か...
裏で暗躍してる人〜 ここにいる中学生を雇った方が力になりますよぉ〜
ーーーいい人ほど早く死ぬ、て聞いたことがある。けど俺は、そうは思わない。死ぬ時は死ぬ。そこだけは全ての生命の平等なんだよ。 、てことで殺しマース!
※5秒後...戦闘は終わった。
リン「おじさん、狙いは良かったよ。けど、的を狙うことは誰だってできる。足りないのは想像力だよ。知ってると思うけど、人間の体の可動域には限界がある。狙うならそこ。例えば、行きたいと思った先に絶対に越えれない壁があるとする。その先に行く為に別のルートがあるなら、必ずそこを通って先に進むんだ。だったら、そのルートをあらかじめ消しておけばいい。わかる? まぁ、俺だったら壁を壊して進むけどね。転生したら使うといいよ。...ん? 事故死じゃないとダメなんだっけ? どうでもいいや。聞きたいことあるから死なないでね? さぁてと...生きてるのか?あれは...」
ーーー身を呈して主を守る護衛...か。一昔前の使えない護衛達とは違うな... 確か...アイツらは首になったんだっけ? 日本にまだあの総理大臣がいたらいい方向に進んでたのかな。まぁどうでもいいや。
ーー仕事とは言え、そこに命をかける意味があるのか? 死んだら何も残らないのに。...金の為?それとも忠誠心、てやつなのか...?
レン「だ...れ...?僕を...殺すの...?」
ーーーやべ、起きちゃった。どうしよっか...
リン「俺は...君をぉ...助けに来た!正義のヒーローだ!名前は...」
ーーーどうしよぉ...名前かぁ...ヤクザ狩り...はヒーロー名とかじゃないからな。海外のヒーローの名前はみんなかっこいいよなぁ...どう考えたら思いつくんだろ。 教えてください!スタン・ミーさん!
※ここまでの時間2秒...
リン「名前は...無いんだ...最近始めたばっかりでね。考え中...」
レン「そうな...んだ...」
ーーーあぁ...よかった。なんとかなったわ。つか...やけに、落ち着いてるなこの子。死体を見慣れてるのか?
レン「また...死んだ...僕の為に...また死んだ...」
ーーーやっぱり...初めてじゃないんだ。さすがに同情する。この子からしたら身内と一緒なんだろうな。
そういえば...
リン「君...名前は?」
レン「ノバラ...レン。」
ーーー顔を隠してる不審者に本名は言うものではありません!偽名を使いましょう!
リン「レンくんかぁ... あ、そうだ。腹減ってないか?」
レン「お腹...空いてる...」
ーーーこの子が死んでたら...お金増えたんだけどなぁ...無駄足だったわ。 今日は少し脳を使いすぎた...頭が痛い... この脳力...まだ慣れないなぁ... 恐らく15パーセント...それが今の俺の限界か...
俺はレンと近くのマグロナルド。通称マッグでハンバーガーを食べた。
ーーーそういえば、あのおじさん。置いてきてしまった...まぁ、いっか。
その後...レンの迎えが到着するのを確認し、俺はソロリソロリと...家に帰って行ったのである。
これでレンとの関わりは終わったと思っていたんだけど...
レン「...こちらに転校して参りました。ノバラ・レンです。よろしくお願いします。」
ーーー嘘...だろ... なんで!? バレた?いや、そんなはずは...
...こうして俺とストっ...レンは、再開を果たすことになった。