もう一度
(あ〜つまんない、早く帰りてぇ)
朝から晩まで働く仕事。賃金も安く、休日・有給の取得を拒否される。
いわゆるブラック企業だ。
学生のころは自分の夢ばっか見てた。
突然、背中を押されたような感触がした。
信号機の点滅と同時に怒号が聞こえてくる。
何かと思い、後ろを振り替えようとすると、そこにはもう誰もいなかった。
目を閉じ、目を開けたときには、世界が傾いていた。 周りからブザー音が聞こえ、
心臓がバクバクと踊る。
急に大雨が降ってき、悲鳴が聞こえてくる。
(なんか、あったかい。雨?いや、涙? 久しぶりに泣いたな。 ん?赤い、、 なにか周りが騒がしい。そうだ、仕事しなきゃ、今日も徹夜だ。 上司に怒られる。)
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こんな俺にも好きな子がいた。髪は短く、小柄で可憐で「学校一のヴィーナス」って呼ばれていた。
誰にでも気遣いができ、いつも笑顔......
「高野ーーーー!!!!!!起きろーー!!!」
先生の声が教室に響き渡る。授業中かまわず、高野は席から立つ。
高野の額に汗が滲み、目が点になる。そして、高野は状況が読み込めず、
周りからの目線に高野は卒倒した。
チャイム音と同時に廊下を走る音が聞こえてくる。
「はぁ、はぁ、おい、起きろよ。大丈夫かぁ」
高野の耳に抑えの効いた声が弾かれる。目に光が差し込み、くしゃみが出る。
顔を見上げ、視線も上げる。そこには癇癖の杉野、杉野恵がいた。
杉野とは、幼稚園、小学校同じだが、中学校は俺が転校して、別々になり、高校でまたおなじになった。
早く言えば、腐れ縁みたいなものだ。無二の友まではいかないが、やけに馴れ馴れしい。
俺は杉野の外見や口調もあり、機嫌にあわせて相好を崩す。仲良くはしたいが、すこし面倒な気持ちが心の端に隠れている。
おそらく、杉野の癖であろう指を鳴らしながら俺を見つめていた。
起き上がろうとすると、安心した様子を見せ、
「大丈夫そうだな、、授業中に急に立って倒れて、どうしたことかと思ったわ。
でも、従業中に寝る高野も悪いところはあるからな(笑) まぁ、お大事に」
と言って、杉野は素早くチャイムが鳴る前に教室に戻っていった。
平素に惰眠を貪っている杉野に言われるのは、少し癪だが、嫌味を含んだ言い方ではなかった。
人の優しさに触れることはなんていいことなんだ。
その後、少し気まずそうに高野は教室に戻る。杉野とは席が遠いので高野に気づかない。