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紫眼のセルディスは平穏を望む  作者: 明星ユウ
二章 日常と冒険を謳歌する少年
40/50

40話 安定化の魔法

 



 複数展開型魔法の安定化の方法を、姉上が習得したことで、研究の方向性が定まった。


 それは必然的に、研究が一気に加速する、きっかけとなり。


 その結果、最終的には安定化した魔法の形を、研究会に参加した多くの者たちが、習得することが出来た。



 なんだかんだと、そうそうに習得したお爺様とお婆様の実力は、さすがの一言である。


 ただ予想通り、そう長居は出来なかったようで、習得した後はあっという間に王家の森へと戻って行ってしまわれた。


 少々寂しく感じるが……こればかりは仕方がない。

 大切なお役目を全うしているのだから、長く引き留めるわけにもいかないのだから。



 それはそれとして、今回の研究で最終的に定まった方法論であり、成果でもある、認識による魔法の形の再定義。

 これは実のところを言ってしまえば――新しい魔法を創ったようなものだった。


「えっ!? これ、新しい魔法なの!?」

「はい。事実上、そうなります」

「ハッハッハ! 今気づいたのかよ!!」


 驚く姉上たち研究会の面々と、うなずく私と、笑う始祖様。


 一人楽しそうな始祖様は横に置き、顔を見合わせて驚愕を分かち合う姉上たちに、改めて説明をする。


 そもそも今回、私はすぐに答えを伝えるのではなく、あえて研究と言う形で、姉上たち個々人に習得を目指してもらったわけだが。

 その理由こそまさしく、その習得する魔法が、新しい魔法になると分かっていたから、だったのだ。


 より厳密に語るのであれば――根本的に新しい想像力と認識により、新しく安定した魔法を創造する。


 それこそが、複数展開型魔法の安定化を成功させるために、私が姉上たちに提示した答えだった。


「ま、よーするに、お前たちはセルディス師匠のさりげな~い指導のもと、しっかり新魔法を開発したってコトだ!

 魔法使いとして、ここは全力で喜ぶところだぞぉ?」


 私の説明を聴き終え、半ば呆然としていた姉上たちに、そう始祖様が告げる。


 ――次の瞬間、感動を宿した歓声が魔法棟に響き渡ったのは、言うまでもない。




 その後、騒ぎを聞きつけた魔法団長に、研究会の研究は大成功だと伝えた結果。


 なんと今回の研究成果を、父上や母上や兄上、それに魔法団長や研究会に参加していなかった王城魔法使いたちに、披露する事になった。



 さっそく急遽整えられた、お披露目場と言う名の訓練場と、その近くに作られた観客席を見やり、つい微笑みが浮かぶ。


 披露をする側の研究会参加者たちは、国王陛下である父上にも見て貰えるからと、やる気に満ちていて、観客席の父上たちもまた、それぞれが好奇心に瞳を煌かせていたから。


「ったく、可愛い子孫たちだなぁ」

「そう言う始祖様も、楽しみにしていらっしゃるでしょう?」

「まぁな!!」


 父上たちを可愛がる、いつも通りな始祖様にも微笑みながら――はじまったお披露目へと、視線を注いだ。


 披露の順番は、ちょうど王城魔法使いたち数名の後に、【第二王子付き特務魔法団】のみんなの中から一人が披露し、それを繰り返すと言う順に決まっている。


 なお、はじめから安定した魔法を使える者たち……私や、【特務団】最年少のローラン・シャルルなどは、今回のお披露目には不参加で、父上たちの隣で観客に徹することになった。



 研究会に参加した王城魔法使いの面々が、次々と新しく習得した魔法を披露して行く光景に、父上が感心し、母上と兄上が瞳を輝かせている。


 それを微笑ましく横目で見ていると、【特務団】副団長ユシル・ギレムの出番になった。


 水の剣と風の剣を複数本同時に展開し、遠くにある的の中央を貫いた新魔法のお披露目に、わっと観客席が湧く。


 ヨル、ミミリア・リケー、ナターシャ・リエターレも披露を終えて、【特務団】の最後は、団長のロデルス・スールッツが飾る。


 実戦向きの魔法が、次々と見事に的を射抜くと、披露する側も観客側も等しくおおいに盛り上がった。


 そしていよいよ最後は――姉上の出番。


「お父様! お母様! お兄様! セルディス!

 しっかりとわたくしの成長を、瞳に映してくださいませ~~っ!!」


「しかと見ているよ、ルフェリア!」

「怪我だけはしないように、気をつけてちょうだいね~!」

「楽しみにしているよ、ルフェリア~!」

「落ち着いて発動すれば、大丈夫ですよ、姉上!」


 こちらへと手を振って声を張った姉上に、私たちもそれぞれ返事を叫ぶと、ぱあっと姉上が笑顔を咲かせる。

 それでも、くるりと的の方を向いたその表情は、すでに真剣さを湛えていた。


 刹那、水の槍が複数本浮かび、順に的へと飛来する。

 それらは一様に――的の中央を、刺し貫いていた。


 今回の研究を経て、あの魔人と戦うための戦力を、さらに底上げすることが出来たと、確信が胸に灯る。


 再び湧く歓声の中、頭の片隅でそう考えつつも――今は、優秀で努力家なみんなを称えるため、拍手を打つ。


 今回の研究は、彼や彼女たちにとって、きっととても意味のあるものになったことだろう。




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