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紫眼のセルディスは平穏を望む  作者: 明星ユウ
二章 日常と冒険を謳歌する少年
29/50

29話 ダンジョン探索の玄人

 



 ダンジョン内へと入り、順調に奥へと進む途中で、ダンジョンに関する様々な知識を【特務団】と王城魔法使いの面々に伝えていく。


「光る植物に、光魔法を当てることで、より明るくなるだけでなく、魔物避けにも使えますよ」

「えぇ~! ぼく、それは学園にいた時に知りたかったです~!」


【特務団】最年少のローラン・シャルルが嘆くと、博識なナターシャ・リエターレが上品に笑み、冒険者としてダンジョン探索の体験があるミミリア・リケーが愉快気に笑い声を上げた。


「確かに……僕も学園で学んでいた頃に、知っておきたかった知識ですね……」

「この場で学んだ事を喜び、今後の糧にすると良い」

「だなぁ。今はちょうどダンジョンの中だから、活かすにはちょうどいいだろ」


 普段は微笑みを浮かべていることが多い副団長のユシル・ギレムが、神妙な表情で呟くと、すかさず団長のロデルス・スールッツが声をかけ、それに飄々としたヨルが続く。


 もうすっかり見慣れてきた【特務団】のみんなのやり取りに、始祖様と視線を交わして微笑み合う。


 引き続き、地面に潜む魔物たちがつくった落とし穴のトラップや、分かれ道の探索方法などを伝えつつ、先を目指す中でふと気付く。


 それは、後衛をつとめる王城魔法使い一同の様子。


 どうやら、私と気楽に会話を楽しんでいるように見える【特務団】が、それでいて少しも油断していない姿に感心をしているらしい。


 この分ならばすぐに彼や彼女たちも、【特務団】のみんなの真似が出来るようになるだろう。


 戦闘訓練がメインとは言え、ダンジョン探索ではこういうささやかな学びから、異なる学びを得ることが出来る利点がある。


 ――改めて、この場所へおもむいたのは正解だったと、確信できた。




 続く探索は順調だが、戦闘は避けられない。

 小さなコウモリ姿の魔物や、闇に潜むことを好む魔物たちに対し、戦いを重ねていく。


「光で照らし出してください! それだけでもあの魔物たちの動きをにぶらせることができます!」


 博識なナターシャの指示に従い、王城魔法使いたちが光魔法を放つ。

 洞窟内を照らし出す白光が、魔物の姿を映し出し、そこへ各種魔法が飛来する。


 基本的に、洞窟などの暗がりを住処にする魔物たちは、光を嫌う。

 その知識を活用した、効果的な戦法だ。


 知識としてつけ加えるのであれば、このたぐいの魔物たちは、住処の外へと出ることが稀で、夜の時間に外へ出たとしても、明るくなるまでには必ず住処へ戻ってくる特徴があること。


 それは、この【暗がり洞窟】の魔物たちも例外ではない。


 他のダンジョンの魔物たちには、また異なる特徴があるため、決してダンジョンを住処とする魔物たちが、あまり外へ出ないわけではないのだが……少なくともこの【暗がり洞窟】は、やはり実戦訓練に適した場所だと言えるだろう。


 危なげなく戦闘を繰り返しつつ、奥へと進むことしばし。

 ――やがて、広く拓けた空間へと踏み入った。



 コツン、と靴音が反響する様に、しっかりと警戒をするみんなを観察して微笑む。

 広い空間は、魔物たちの巣である可能性があり、危険度が跳ね上がる、と言う知識を、各自が頭の中に思い浮かべて行動出来ている。


『上出来だな』

『はい』


 右肩に乗る始祖様との、お互いだけに聞こえる魔法での会話は、【特務団】と王城魔法使いたちが、早くもダンジョン探索に慣れてきている事への称賛。


 一日目にして、さっそく以前よりも底上げされた実力を、予想以上に発揮できている彼や彼女たちの様子に、思わず微笑みが深まる。


 そうして、周囲を油断なく、魔力感知や実際に光魔法で照らし出して、広い空間の安全を確認した結果。

 ダンジョン探索一日目は、この場で野営の準備をすることに決まった。



 ダンジョンの外では、夕陽が森を染めている事を、密やかに魔法で確認しながら、【特務団】や王城魔法使い一同と共に準備を進めていく。


 当然ながら、今世では王子と言う立場上、野宿ははじめてなのだが……。


「ブッハハハッ!! やっぱり一番、セスが手慣れてるじゃねぇか!」


 そう、心底愉快気に笑う始祖様に、心なしか王城魔法使い一同がどこか彼方を見ていたり、苦悩していたり、と様々な反応をしている。

 逆に【特務団】のみんなからは、どことなくキラキラとした眼差しが注がれていた。


 何のことはない。

 単純に今回の面々の中で、第二王子である私が、寝床を安全に整える作業を一番早く終わらせた、というだけのこと。


「年の功……ですかね。

 前世で取った杵柄がありますから」


 少し考えて伝えると、なぜかそろって微妙な顔がこちらを向く。

 その中で一人だけ、晴れやかな笑顔を浮かべたミミリアが言う。


「セルディス殿下は、現役冒険者でもありますからね!!」

「はい」

「ハハッ! それもそうか!」


 納得に笑う始祖様の近くで、私の次に準備を終えていたのが、まさしく冒険者を兼業している彼女である事からも――野営準備は冒険者の得意技だと、答えが出ていた。




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