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紫眼のセルディスは平穏を望む  作者: 明星ユウ
二章 日常と冒険を謳歌する少年
26/50

26話 王子としての日常

 



 始祖様との再会を果たしてから――王子としての勉学や活動と、冒険者としての冒険を両立しつつ、過ごしていく日々がはじまった。



 まず、朝から昼食にかけては、王子としての日常を過ごす。


 朝食後の勉学の時間は、【創世神の愛し子】であることを開示した六歳の頃から、八歳になっている今も変わらず、教師陣と学ぶ内容を相談しつつ進めていた。


 今日は、かつては始祖様に教えてもらった部分の知識である、王族の作法について学ぶ日。


 忘れもしない――前世では、気品ある地下部屋の中で、人工精霊の始祖様に魔法で所作を教え込まれた、あの日々のこと……。



「いいか? セス。

 お前はたしかに貴族だの王族だのに関わりたくはないかもしれんがな?

 だからと言って、この俺の血が流れてるってコトは、忘れてねぇよなぁ?」


 唐突にそう尋ねてきた始祖様に、ため息を吐きそうになるのを抑えながら、答えたのを憶えている。


「……さすがに、当の始祖様がそばにいらっしゃる手前、その点は忘れていませんが」

「よし、可愛げはないがお前はいい子だ!

 ――ってことで、礼儀作法習得しろ!!」

「今のどのあたりが、と言うことで、にかかっていたのですか??」

「いーから覚えろ!!」


 そう……半ば無理やり、魔法で身体を動かされて、マリオネットのような状態になりつつ、覚えたのだ。



 かつてを思い出し、勉学の部屋へと移動する途中で、若干遠い目をしていると、どこからか現れた人工精霊の始祖様が、ひゅんっと右肩へ着地する。


「これから礼儀作法の勉強なんだって? セス。

 お前今、昔俺が教えてやった時のことを思い出してただろ?」

「はい。それはもう、鮮やかに。

 ――始祖様は、久しぶりの王城散歩を堪能したようで」

「ハハッ! まぁな!」


 前世とは異なり、すでに私が今の幼い身でさえ、大魔法使いに近しい力が使えることで、始祖様ご自身も常に私のそばにいるのではなく、王城内を自由に動き回っている。


 始祖様が宿っている魔導書でさえ、王城内では私が身に着けるのではなく、私の部屋に置いていてもかまわない、とおっしゃったくらいなのだから、私もずいぶん信頼されているらしい。



 何はともあれ、見学すると言う始祖様と一緒に、いざ作法の勉学を受けてみた結果。

 初老の紳士な教師が、静々と告げた。


「多少、古い部分は修正していく必要があるかとは思いますが……ほとんど、すでに習得されていらっしゃいますね」

「……そう、でしたか」


 どうやら、前世で身に着けていたものが、今世でも通用するらしく。


 チラリ、と見やった始祖様は、自慢げに紫の色をピカピカと明滅させていて。

 その姿が可愛らしく感じ、うっかり小さく笑ってしまった。




 勉学の後は、今も続いている、王城魔法使いたちの実力を底上げするための育成……と言う名の、現在の実力の把握と訓練に向かう。


 王城魔法使いたちは、王族をのぞけば国一番の魔法使いたちなのだが、それでも元・大魔法使いとして見ると、まだまだ様々な部分の練度が足りていない。


 その部分を伝えることで、【第二王子付き特務魔法団】だけではなく、王城魔法使い一同にも、さらなる強さを得て欲しいものだ。


「ついに、セスも教える側になったか――って一瞬思ったが、そういやお前、前の時も俺が眠った後に弟子とか取ってたんだよな」

「そうですね」


 鼻高々、からの真顔になるような声音の変化で呟いた始祖様に、普通に真顔でうなずきを返す。


 たしかに、前世では大魔法使いへと至り、始祖様が宿る魔導書を封じたのち、それこそ王城魔法使いの者たちの中から、弟子にした者たちもいたから。




 王城魔法使いたちへの指導の後は、昼食前に【特務団】の面々が収集した情報と、風の精霊たちから得た情報の報告会議を開く。


 今日も今日とて、魔族たちの情報が飛び交う中、始祖様も情報の正誤を教えてくれた。


「――あぁ、今のところ魔族側に目立った動きがないのは、確かだぞ」

「始祖様から見ても、そう思うのでしたら、今は問題なしと考えていいでしょう」

「承知いたしました」

「始祖様がお暇で良かったです」

「オイ!」


 ナイスミドルな団長ロデルスが頭を垂れるのにうなずき、ぽつりと呟きを零すと、始祖様から勢いよくツッコミが入る。


「セス、お前相変わらず俺だけ扱いがザツだな!?」

「はい。始祖様はザツでいいと思っています」

「素直かよ!!」


 素直も、何も……そもそも。


「始祖様は、子孫に本気で怒らないでしょう?

 そう言う意味では、私も始祖様に絶大な信頼を寄せているのですよ。

 私、こう見えて始祖様のことが大好きなので」


「くっ! 可愛いコト言うようになったじゃねぇか!!

 いつからそんなに可愛くなったんだよセス!!」

「いえ、今世でも変わらず、私に可愛げはないと思いますが……?」


「はん! 俺が可愛いって言ったら可愛いんだよ!!

 この可愛い愛弟子めっ!!」

「……髪が乱れます、始祖様。

 今は侍女のみんなにわざわざ整えて貰っているのですから、あまり崩さないでいただきたく……」


 照れ隠しで、私の頭に小さな身を突撃させて髪を乱す始祖様は、本当に前世から変わらない。


 それでも――これが今の私の、王子としての日常だ。




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