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紫眼のセルディスは平穏を望む  作者: 明星ユウ
一章 かつてを今にも持つ先人
18/50

18話 【第二王子付き特務魔法団】

 



 七歳の誕生祝宴の、その翌日。

 魔法棟の端の一室にて、そろった面々の顔を見上げ、宣言する。


「それでは、本日より――【第二王子付き特務魔法団】を、正式に結成します。

 結成への協力に感謝を。

 そして、これからの活躍に、期待しています」

「はっ!」


 数名の王城魔法使い一同が、同時に頭を垂れて私の宣言に応じる光景は、壮観の一言だ。

 私の横に立っていた魔法団長も、満足気にうなずき、眼前の面々に声をかける。


「優秀な同士に、護国の栄光を。

 ……それでは、セルディス殿下。

 この者たちのことを、どうぞよろしくお願い申し上げます」

「お任せください、魔法団長」


 祝福の言葉の後、私に頭を下げて部屋を退出した魔法団長を見送ったのち。


【第二王子付き特務魔法団】、略して【特務団】。

 その栄えあるはじまりの団員たちへと、やわらかに微笑む。


「それでは、席に着きましょう」

「仰せのままに、セルディス殿下」


 私の声かけに、代表して答えた壮年のナイスミドルの名は、ロデルス・スールッツ。


 王国の南の端で、魔族の森の脅威から人間の住む地を守護する、初老の傑物スールッツ当代辺境伯の次男であり、その実戦経験の豊富さを見込み、【特務団】の団長に起用した人物だ。


 普段は寡黙ながらも、優秀な王城魔法使いで、少々個性の強い【特務団】の中では、ありがたい常識人でもある。


「んじゃ、【特務団】結成の祝いがてら、今日の成果でも出しますか? 殿下」

「そうですね。

 ではヨルからお願いします」

「はいはーいっと!」


 席に着いたとたん、そう尋ねて机の上に資料を広げるのは、飄々とした貧民街育ちの平民の青年、ヨル。


「それでは、僕も魔物に関する資料を」

「あ! わたしは冒険者たちの情報を!」


 ヨルに続き、【特務団】の副団長に選んだ、ギレム侯爵家の落とし子ユシル・ギレムと、冒険者も兼業するリケー伯爵家の三女ミミリア・リケーも、資料を広げていく。


 王城魔法使いたちの中では、魔法団長に次いで顔なじみとなったこの三人は、一年ほど前から開始した私独自の魔法使い育成法にて、特に才能を伸ばした者たちだ。


「今回はわたくしからも、お三方に幾つか知識提供をいたしました」


 そう告げ、静々と頭を下げるのは、博識で上品な魔法研究者の女性、ナターシャ・リエターレ。


 リエターレ侯爵家の長女ながら、魔法に生涯を捧げると決めている、根っからの魔法研究者で、私ともかなり魔法の話が出来る人物だ。


 彼女の隣で、のほほんとした笑顔をうかべて片手を上げたのは、シャルル伯爵家三男のローラン・シャルル。


【特務団】最年少の十七歳で、学園を卒業して見習い王城魔法使いとなったそのすぐ後、はじまった育成による学びを吸収した結果、【特務団】に入った才ある若者だ。


「ぼくは~、お三方の資料を先に見せてもらったので~、団長と一緒にすこしだけ魔族の領域の様子見をしてきましたぁ~」


 おっとりとした話し方をするローランの言葉に、団長のロデルスがうなずいて、肯定を示す。



 次々と机に並べられていく資料を眺め、今日と言う日の特別さは、【特務団】結成だけにはとどまらないのだったと、少しだけ感慨にふける。


 今日と言う日の、もう一つの特別な意味。

 それは、情報収集と魔族戦に特化した、少数先鋭の強き魔法使いを育てるため、一年ほど訓練と実践を続けてきたみんなの成長を――成果として確認する日でもある、と言うこと。



「――つまり、ヨルの情報収集の結果、小型の魔物たちが凶暴になっている事を発見した、と」

「はい!

 それで、ユシルとナターシャ姐さんに、魔物の状態が普通じゃなさそうってことの証拠になる情報を調べてもらって、団長とローランには実際どうなってるのかを、見て来てもらったんです。

 んで、その間にミミリアには、冒険者たちにも話をききに行ってもらったんですけど……」


【特務団】の中でも、ひときわ情報収集の魔法が得意になったヨルの説明に、彼からの視線を受けたミミリアが説明を引き継ぐ。


「やっぱり、冒険者のみんなも、小型の魔物たちの様子がおかしいって、話していました。

 それに、普段と違って予想以上に強くなっていることで、被害も出ているようです」

「……それは、危ういですね」


 ミミリアが伝えてくれた内容に、自然と表情が厳しくなる。


 今世での冒険者たちの実力は、魔力感知で探る限り、前世との違いは特にないはずだ。

 つまり、今回の小型の魔物たちの不可解な凶暴化は、魔族との戦いに慣れている冒険者たちにさえ被害が出ているほど、危険な状況だと言える。


「原因は、何だと思いますか?」


 静かに問いかけた私の言葉に、六人は口をそろえて答えた。


 ――おそらくは、弱い魔物たちを従えるほどの強い魔物、もしくは魔人の関与が疑われる、と。




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