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仲間外れ
美雨の母は近所の人に仲間外れにされていた。
母親はその理由を
「お父さん(父)が素晴らしすぎて、羨ましいからだ。」と言った。
「お父さんは子どもの面倒もよくみるからね。家の前で親子でキャッチボールしたりしてるのが羨ましいんだよ、きっと。あそこの家の旦那は子どもと一切遊ばないからね。車に乗るのも土足禁止にするくらいだから。」
美雨は母が正しいと思っていた。
だからずっと近所のママ達の事は大嫌いだった。
お母さんを仲間外れにする悪いやつらだと思っていた。
近所のママ達が約束したかのように近くに新しく出来た工場で働き出した時も、なぜ母親だけがそこで働いてないか疑問に思う事はなかった。
妬みという言葉はまだ分からなくても、そういう理由で母親は仲間外れにされているんだと思っていたから。
それが本当に妬みからくる仲間外れなのか分からなくても、美雨は母親から聞かされる事が全てだった。