一人ぼっちの夜
美雨は夜が嫌いだった。
夜はおばけが出るし、みんな寝てしまうから取り残されたような気持ちになるから。
それに、寝る前に母親が聴かせてくれる「ドナドナ」の子守唄は何回聞いても悲しかったし、眠れる気がしなかった。
どうして朝は眠いのに、夜はこんなに目が冴えるんだろう。
みんなのように早く眠りにつけたらいいのに。
そんな風に思う時はいつだって美雨の心の中は決まっていた。
おばあちゃんの所へ行こう。
おばあちゃんの布団に入れてもらおう。
二段ベッドの下のコウはもう寝てしまったようだ。
凄いな、二段ベッドの下なんてオバケに真っ先に見つかるし、悪い人が来たら一番先にやられてしまうのに、なんの警戒心もなく眠れるコウが羨ましいなと美雨は思った。
美雨の家には階段が2つある。
2階も2つに分かれている。
おばあちゃんのいる中2階と呼ばれている方の2階へ急いで向かう。
暗い階段を登るのも嫌だった。誰か後ろにいないか何度も振り返りながら向かう。
小さいいびきをかきながら寝ているおばあちゃんを起こすと
「美雨か。」と言って布団を開けてくれる。
その中へ滑り込む。
「こんなに冷たい足をして」と言って、おばあちゃんの温かい足にはさんでくれる。
どちらにしても、おばあちゃんはまたすぐに小さいいびきをかいて寝てしまう。
美雨は何度も頭の上にオバケがいないか確認する。
本当に眠れるのかな。
まだまだ眠れる気がしない。
美雨はまた一人ぼっちになった気がした。