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番外編3.5ゲーム、現実世界に時間を止める術はない、しかし心の中では止まってるように見えるのだ

「チカ、あなたそんなこと言ったの!?」


 学生諸君にとって、チャイムというのはとてもあいまいな存在である。だが今回は終わりを告げるチャイム、みんなはそれを聞いて喜んだ。


 昼で終わるこの9月1日、そこにはもう一つ物語があったのだ。


「だって……、オタク不良にぶつかっちゃったのよ! あんなキモオタに故意でなくても当たったら誰だって同じ反応するに決まってるでしょ!?」


 茶髪を一括りにまとめているこの女は北ほう条じょう千ち香か、今朝加鍬にぶつかって嫌がっていた女だ。


「何言ってるの!? あんた自分がいじめ同然のことをしてるって何で自覚してないのかなぁ!?」


「やめてやめて双葉! 頭グリグリしないでぇ~!!」


 そして母親のように千香をこらしめているショートボブの女は三月やよい双葉ふたば、友達とは少し違う、まるで姉妹のような関係に見える。


「あんた、小学生のいじめとかやりまくってたタイプでしょ? なんとか菌つけられた~とか、タッチ返しなしだよ~とか、感染する~とか、バリア効きません~みたいなことを!」


「ちょっと待って、なんかフタバちゃん詳しすぎない!?」


 実体験、あるいはしてたほうなのだろうか? やけに現実的すぎて千香は少し引いた。


「私の事はいいのよ、とにかく謝りにいきましょう!」


「べ、別に私は悪いことなんて……、だいたいこういうのはあいつらが自らキモい道に行くのが悪いんじゃないの!?」


「あのねえ、オタクのどこがキモいっていうのよ!? 別にあの人たちは痴漢とか露出狂とかそんな類たぐいじゃなく、ただ普通の男子高校生をしてるじゃないの? それなのにどこがキモいっていうのよ、はっきり言ってみなさい!」


「なに、フタバちゃんあいつらオタク不良の肩持つつもり!? まさかフタバちゃんまですでに汚されてるの! 大変、早くなんとかしなきゃ……!」


「いい加減にしなさい!!」


 もはやツッコむ余裕もない千香の行動に、双葉は大声を出して止める。


「あなたがやってることは、偏見で相手を見下してるってことよ。そしてあなたの行動一つで傷つき、その男が自殺したらどうなると思う? あなたが殺したも同然、自殺した男の遺書には『北条千香許さない、地獄の底まで呪ってやる』と残されており、それを見た親は我を忘れてあなたを襲うに決まってる。なんとかその親は警察に保護されたので自分の命は助かった、でも寝ようとした時に思い出してしまうのよ、『あなたが私の息子を殺したのよ』『許さない、許さない』『私の子を返して』と脳の中に貼りついて止まらない。幻聴が聞こえる真夜中、ふと窓を見るとそこには、『許さない』と血で書かれた文字が……、キャァァァァァ!!」


「なに一人で怪談話やってるのよ……」


 さすがに途中からおかしいと気づいた千香が冷静にツッコむ。


「だってこうでもしないとチカ、悪いと思わないだろうから……。ねえわかってよチカ、私はあなたのためを思って言ってあげてるのよ! 自分の悪い行いはいつか自分に返ってくるの、神様はいつだってあなたの行いを知っているのよ?」


「……あぁもうわかったわよ、謝ればいいんでしょ? 全くフタバは時々お母さんみたいなこと言うよねほんと。でもまあ、私が傷つけたあの男が本当に自殺したら困るから、『ごめんなさい』って言うだけなんだから簡単よ!」


「あのね、『本当に自殺したら』じゃなくて、すでに自殺未遂したのよその男」


「……え?」


 その言葉を聞いた途端、千香の健康的な肌色がどんどん青ざめていくのが目に見えた。


「今日の始業式で言ってた交通事故ね、実はその男が自ら身を投げ出したって噂なの。急いで保健室へ運び込んで応急処置をしたから一命は取り留めたんだけど、彼の目はもうすでに死んでいたのよ。またいつか自殺をしてもおかしくないって、先生やPTAが大騒ぎになって……」


「どこ!? その男は一体今どこにいるの!? ねえ教えてよフタバ!!」


 すごい形相で双葉にすがろうとする。


 すでに事故の真相を知ってる人はわかると思うが、双葉は大風呂敷を広げるのが好きなのだ。


 そしてこの女、北条千香はとても騙されやすい女なのである。


 相性が良いのやら悪いのやら、とにかく今回の双葉の行動に限っては良い行いをしたのではないだろうか。




「あ、いた! あれがオタク不良ね……」


 千香と双葉は別のクラスだ。加鍬たちのクラスに移動して、扉付近で加鍬の様子を窺おうとしている。


「あの時ぶつかったのが……、あいつね」


 4人が集まって仲良く会話している、千香はその中から加鍬がどこにいるのかを見つけられた。


「それにしても先生はひどすぎるでござるな、救世主かと思いきやいきなり寝返るとは……」


「まあしゃーないんちゃうか? まさかあの女たちが先生の弱みを握ってるとは本人も思わへんかったわけやしな、まあ今度使ってみるけど!」


「ちょっとゴウくん先生脅しちゃダメだよ……!」


 湧渡、昂、尊が先ほどの喧嘩について愚痴をこぼす。


 もちろん千香たちは別のクラスなので、今の会話を聞いても意味がわからなかった。


「まああとで先生にガツンと言っておくよ。全く……、おかげで秋葉原へ行く時間が遅くなるじゃねえか……」


 言ってる意味はわからないが、今の加鍬が不機嫌だということは千香たちにもわかった。


 そして不機嫌な理由が主に私のせいなんじゃないか、と千香は少し考えてしまう。


「あと、吾人はカスキ殿に対しても不機嫌なのでござるよ」


「え、どうして? 俺なんかした?」


 湧渡の怒りの矛先が急に加鍬に変わったので、加鍬だけでなく聞いてた者全員が驚いていた。


「どうせあそこまでジョジョパロを貫くなら、『いったんおめーを治せばよォーッ、これで全然卑怯じゃあねーわけだなーーっ!!』と言ってドラララしてほしかったでござる! 今すぐクレイジーダイヤモンドを手に入れろでござる!! そしてもう一度あの時に戻って殴ってくるでござる!!」


「無茶言うなよ、矢で刺せっていうのか!? というか、どうやって戻るんだよ!?」


「そんなもの、バイツァ・ダストしかないでござるな!」


「無茶ぶりにもほどがあんだろ! せめてスタンド一緒にしろよ!」


「せめての使うところおかしいやろ……」


「ゴウくんも、もっとツッコみどころあると思うよ……」


 かなりの固有名詞が千香の耳に入ってくる、それにより千香は少し混乱した。


「ねえフタバ、あの子たち何を言ってるの?」


「ええとねぇ……、つまり恨みがあるチカを殴りたいってことだね」


「えぇっ!? ど、どうしようフタバ! 私どうしたらいいの!?」


 まさかここまで騙されやすい女だとは双葉自身も思わなかった。


「じゃあまずは、あれのマネをすることかな?」


 そう言いながら双葉たちは加鍬たちの行動を見る。


「あの女子高校生AをDIO、俺を条太郎にしてみない?」


「どんな感じになるのでござるか?」


「キモオタという臭いものに蓋をするため、ロードローラーを使うとこから最終決戦が始まる!」


「オラオラオラオラオラオラ!!」


「無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」


「ロードローラーの重さに耐えきれなかったカスキ、9秒経過でついにぶっ潰れた!?」


「フハハハハ、これでどんなキモオタもこの女子高生Aを越える者はいないことが証明されたッ! とるにたらぬキモオタどもよ! 支配してやるぞッ!! 我が『女子高生という存在』と『リアル充実』のもとにひれ伏すがいいぞッ!」


「高笑いをする女子高生A、そのまま学校へ向かおうとした時ッ、変化に気づく!」


「な……、なんだ? 体のうごきが、に……、にぶいぞ!? ち……、ちがう、にぶいのではない……! う……、動けんッ! ば……、ばかな!」


「俺が時を止めた、そして脱出できた。これから女子高生Aッ! てめーをやるのに! 1秒もかからねーぜ!」


「動けない女子高生Aに、カスキは怒りの鉄槌を放つ!!」


「なああにィィイイイッ! ば……、ばかなッ! この女子高生Aがァァァァァァーーーッ!!」


「身体に亀裂が走り、原形をも留まらない姿となって女子高生Aは敗れる!!」


「てめーの敗因は……、たったひとつだぜ……、女子高生A。たったひとつの単純シンプルな答えだ……、てめーはオタクたちを怒らせた」


 ……。


 すべてを言い切ったかのような空気となり、オタクたちがしばらく黙り込む。


「やっぱり女子高生Aってのが地味にムードぶち壊してるな」


「女子高生Aの分際で、DIOのマネをするからこんな始末になるのでござるよ」


「あと条太郎とカスキの共通点がなさすぎるとこやな」


「ハァ!? ありまくりだろうが! 冷静沈着だし不良だし……」


「自分で言っちゃダメだよね……」


 そしてすぐに反省会、何がしたいのだろうかこのオタクどもは。


 何よりもっと意味がわからなかったのは千香のほうである。


「あれって……、何だったの?」


「あれはね、ジョジョの奇妙な冒険っていう漫画の名シーンなの」


 意外なのかそうでもないかは知らないが、双葉はジョジョのことを知ってたらしい。


「へえ、ということは私はそのジョジョっていうマネをすればいいってこと?」


「うんうん! そうすればもうオタク不良から恨まれることはなくなるわ!」


「ほんと!? わかった、私今から帰ってすぐジョジョってやつの漫画買ってくる!」


 そう言って一目散に家へ帰ろうとする千香、それをクスクスと笑う双葉。


『もう大丈夫よタカシくん、あなたもあなたの友達もこれで幸せに暮らせるわよ』


 双葉は尊に気がある、そして尊が好きなものは全部好きになれる。それ故に双葉は、尊が加わるオタク不良のことを陰で応援している立場にいるのだ。


 そしてほんの少し騙して懲らしめるつもりだった双葉なのだが、彼女は知らないであろう。


 あの北条千香がものすごく、人を見た目で判断していて、チョロくて騙されやすい女なのかということを。

加鍬たちのジョジョ好み




・深澤加鍬…好きな部は4(主に偶数部が好き)、好きなキャラクターはシーザー・A・ツェペリ、好きなスタンドはクレイジーダイヤモンド。


本人の一言:治す能力の汎用性の高さに惚れた、シーザーの死は泣けた




・夏旗湧渡…好きな部は3、好きなキャラクターは吉良吉影(4部)、好きなスタンドはセト神


本人の一言:セト神の能力は神、ロリコンを増やせる




・業浪昂…好きな部は2、好きなキャラクターはジョセフ・ジョースター(2部)、好きなスタンドはハイエロファントグリーン


本人の一言:紐になれるハイエロファントグリーンはほしい、花京院には悪いけど……




・堀美屋尊…好きな部は1、好きなキャラクターはジョナサン・ジョースター、好きなスタンドは特になく、波紋が好き


本人の一言:幼い時のジョナサンが自分と少し似ている、波紋使ってみたい

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