始まりと終わりとその間
友達と会話している瞬間がとても楽しい。学校は嫌いだが大好きな友達と過ごすことが出来る。家にいるより何千倍も楽しい。その楽しい時間が今日も終わってしまう。授業が終わりみんなと家に帰る。この行為自体は楽しいのだが、みんなと別れた後、どうしようもなくむなしい時間が流れる。カバンの中からイヤホンを取り出し、音楽をかける。音楽自体はそれほど好きではない。が、一人でトボトボ帰りながら色んなことを考えるよりはマシだ。音楽が5曲目に差し掛かったあたりで家が見えてきた。イヤホンを外し、鍵を取り出して玄関を開ける。何年たってもこの玄関のさみしさは慣れない。いくら「ただいま」と言ったところで家の中からは何も帰ってこない。いつも通り制服を脱いで部屋着に着替える。料理を作り一人で食べ、片づけをしたらお風呂に入る。テレビから流れてくる笑い声は自分をみじめにさせる。時計を見ると12時に差し掛かろうとしている。電気とテレビを消し、そそくさと2階の自分の部屋にこもる。しばらくすると玄関の扉が開く音がする。母親とはもう何年も会話していない。今更なんの話をすればいいのだろう。太陽がまた昇ることを信じて、目を閉じる。
目覚ましを止め、しばらく自分の部屋で時間を過ごす。玄関の扉が閉まる音を確認して、下に降りる。顔を洗って、ご飯を食べて歯を磨く。制服に着替え身だしなみを整え家を出る。しばらく音楽を聴いてると、いつもの場所で友達が待っている。イヤホンを外して友達のもとに駆け寄る。
今日も私の世界が始まる。
今日も悪口を言われた。正確に言うと悪口を書き込まれた。暴力や物を隠されるといったことはないから親にばれることは無いだろう。先生にはそのことを相談すると、めんどくさそうな顔をしながら話を聞いていた。髪型や服装のことは積極的にいうくせに、このことは消極的だ。いや、なかったことににしたのだろう。だって、相談してから半年が立っているのだから。明日が来ると、また今日と同じような生活を送らないといけなくなる。一番落ち着くのは暗闇だけだ、この時だけはスマホの画面が光らないのだから。暗闇だけは心をやさしく包んでくれて、慰めてくれる。いつものようにその安心感に身をゆだね心と体を休める。
居心地が悪く目を覚ますと、私の世界が終わっている。
「明けない夜はない」。明けてほしくない夜もある。
目を覚ますと、うれしくて涙が出てくる。余命3年と言われてから1年と半分が過ぎた。いつものようにここから窓の景色を眺める。昨日と同じ景色を見ることが出来てうれしい。いつものように用意されたご飯を三食食べる。お世辞でも美味しくはないが食べれることが嬉しい。食後にはいつものように体に管を通す。これは痛くて嫌いだが痛いという感情を感じるたびに「生きている」と思う。そして、いつものように就寝時間が来る。「今日もお母さんたち来なかったな。でも、明日はおばあちゃんとおじいちゃんが来るって看護師さん言ってたな~。早く明日が来ないかな~。」
明日ちゃんと目を覚ますかな。
ここまで、お読みいただきありがとうございます。今回この作品は処女作で、まだ足りないところはたくさんあると思いますが、これからも創作活動を続けたいと思います。よろしければ感想など書いていただけると嬉しいです。