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超スピード入廷(1日ぶり二度目)

「どっどうしたんですかサンゴさん!? 顔が真っ青を通り越して白くなってますよ!?」


 どうしよう、こればれたら絶対ただじゃすまないだろうなぁ……というか絶対にばれるだろうな神様のせいで。

 魔王様許してくれるかな……わざとじゃないとはいえ、可愛い姪の着替えを見ちゃったんだし。怒るかな……怒るだろうなぁ……あの顔で怒られたら怖いだろうなぁ……。


「サリエルちゃん。俺が死んだら骨は海に撒いてくれないかい?」


「ええっ!? さ、サンゴさんしっかりしてくださいぃ!」


 心配そうな顔をしながら駆け寄ってくるサリエルちゃん。


 ああ、こうして見ると魔王様の姪っていうのも納得だな。こんな俺を心配してくれるだなんて、そんな優しいところがそっくりだ。サリエルちゃん、俺みたいな奴なんて放っておいていいんだよ、心配するだけ無駄だ。後早く服を着なさい。ほら、さっきから小ぶりながらかわいらしい胸やキュートなおへそのあるお腹がちらちと――



〈――ガチャッ〉

「ちょっとどうしたのサリエル!? 悲鳴が聞こえ、た……けど……」


「え?」

「――あ」



 突然勢いよく扉を開けて部屋の中に飛び込んできたのは小林だった。


 この様子だと、さっきのサリエルちゃんの悲鳴を聞いて駆け付けたのだろう。

 しかしなぜ小林は突然現れたと思ったら固まったんだ? なんかツインテールがわなわなしてるし……。


 よし、ここで一度状況を整理してみよう。そうすれば何かわかるかもしれない。

 えっといまの状況は……



 俺 ← イン・ザ・ベッド

 サリエルちゃん ← ベッドの近くで服をほとんど着てない



 ここから導き出されるもの、それは…………そ、それは…………


「ついに正体現したわね変態!」


「ち、違うんだっ!」


 なんてタイミングで現れてくれちゃってんだ小林ぃ!


「聞いてくれ! これは事故だ!」


「事後ですって!?」


「その聞き間違いには悪意があるぞ!」


 ツインテールをぶんぶんさせながら驚く小林。


 くそっ、ここから巻き返せるか!?

 まさに空前絶後の潔白証明……だが俺ならできる! 成功させて見せるっ!


「俺は無実なんだ! 弁明をさせてくれ!」


「うるさい! 言い逃れの余地はないわ!」


 潔白証明……失敗っ!


「え、えっと、エリさんどうしたんですか? どうしてそんなに怒って――」


「安心してサリエル! 私の命に代えてもあの変態を倒して見せるから!」


「くっ、自称のくせに勇者っぽいこと言いやがって……っ」


「いますぐ魔王様を呼んでくるわ!」


「お待ちになって!」


 それはずるいぞ。なんて恐ろしいことを考えやがる。


「遺言なら聞かないわよ」


「それぐらいの融通は利かせてくれてもいいだろ! さりげなく俺が死ぬことを決定事項にするな!」


 まだ決定してないから。確率的にはまだ七割強ってところだから。


 俺と小林が睨み合う中、さっきまでいまいち状況を把握しきれず置いてけぼりだったサリエルちゃんが小林に話しかける。


「あの、エリさん。もしかしたら勘違いしているかもですっ」


 小林の服の袖をくいくいと引っ張りながら、サリエルちゃんはそう言った。

 サリエルちゃん……もしかして俺を助けようと……っ! なんていい子なんだ!


「サンゴさんは悪いことをしてないです! ボクだって何もひどいことをされて…………されて……………………ない、です?」


 最初こそはっきりと俺の無実を証言してくれたが、だんだんと言葉が弱弱しくなっていき、最終的には疑問形で終わった。


 ちょっとサリエルちゃん? なんでそんなに自信なさげに言うの? もしかして最初に着替えを見ちゃったこと根に持ってるの?


「……かわいそうに、そう言えって脅されてるのね? 服まで剥ぎ取られて……」


「脅してないし剥ぎ取ってない! 俺がそんなに血も涙もない人間に見えるか!」


「うるさいわね、黙りなさい死刑囚! あんたみたいな女の敵は地獄に落ちればいいのよこの色情狂! 救いようのないロリコン犯罪者! さっさとくたばりなさい性欲の塊!」


 いろんな表現で『死ね』と『変態』って言われた気がする。


「ち、違うんです違うんですエリさん! 違うんです! 本当にサンゴさんは悪いことしてないんです! ボクが着替えてるときにサンゴさんが部屋に来たのもわざとじゃないって言ってましたし!」


「わざとじゃなくても女の子の着替えを見た時点でアウトよ! それに普通部屋に入る前にノックして確認するでしょ! 常識よ!」


「何も言い返せねぇ……!」


「でも、エリさんだってさっきノックせずにボクの部屋に入ってきたじゃないですか」


「何も言い返せないわ……!」


 反論できずにうなだれる俺、とついでに小林。


 でもこの様子だと小林を説得することには何とか成功したようだ。


 ありがとう……ありがとうサリエルちゃん! これで犯罪者として捕まらずに済むよ!

 心の中でサリエルちゃんに最大限の感謝を述べ、ツインテールがしょんぼりとした小林に案内させながら食事会の部屋に戻る。途中参加になるがお礼をしたかったため、もちろんサリエルちゃんも一緒に。



 ○



 …………………………………………。

 ………………………………。

 ……………………。


 ……目隠しと猿轡が外される。


「では、これより裁判を始めます」


「ちょっと待てぇぇえええええええええ!!」


「こらサンゴ。被告人が何を勝手に発言しているのですか。ほら暴れるのをやめなさい。そんなことをしても拘束具は外せませんよ」


「暴れもするわ! 何で裁判!? 一件落着の流れだったじゃん! 食事会の部屋に戻った瞬間急に捕まってすごい怖かったんだけど! 目隠しと猿轡に加えて手足縛って袋詰めにする必要あった!? おい小林! 何とか言え!」


「何よ、サンゴがサリエルの着替えを見たことは間違いようのない事実じゃない。あんたを見逃すなんて一言も言ってないわよ私」


「言葉にしなくても伝わる物があるだろうが!」


「気持ち悪い例えしないでくれるかしらぁ!?」


「えっと、サンゴ君? 今回は一体どうしたんだい? 神様とエリちゃんがあまりにも自然に、止める間もなく流れるようにサンゴ君を捕まえてここまで連れてきたから、僕は何も把握してないんだけど」


「大丈夫ですよオーダさん。オーダさんは裁判長らしく、サンゴに罪を言い渡せばよいのです」


「裁判長が詳細を把握してない裁判があってたまるか! この裁判は無効だ!」


「まあ神様がそこまで言うのなら……わかりました」


「わからないでますらおう――じゃなかった魔王様!」


「ますらおう? 何だいそれ?」


「漢の中の漢みたいな感じです気にしないでください!」


「さあ裁判長、判決を」


「早い! 判決を下すにはまだ早いよ! 俺の言い分を聞いてくれてもいいだろ!」


「あんたの言い訳なんか聞くわけないでしょ! 犯罪者は黙ってなさい!」


「弁護士が弁護してくれないから俺が自分でするしかないんだよ! 証人としてせめてサリエルちゃんを呼んでくれ!」


「呼ぶわけないでしょ! あんたサリエルにこれ以上何をする気よ!」


「全く、往生際が悪いですよサンゴ」


「えっと……結局僕はどうすればいいのかな?」


「俺を助けて下さぁい!!」


 各々の声がこだまする裁判所。まさか二日連続で裁判にかけられるなんて思いもしていなかったが、やっぱり今回も俺は無罪を勝ち取るため、一人孤独に戦うのであった。

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