第3話 始まり③
異能/魔法の話に加えて、実際に経済や統治、思想などの話も学べる内容となっておりますので、どうぞお楽しみください!!!
「国立博物館とはいえ、やはり建物自体はあまり立派とは言えないな。」
「入り口の看板には、内戦時代に一部、収容所として使われてたモノをそのまま活用しているみたいな事が書いてたなあ。だから古いんやないんやろか、雰囲気あって、ウチは好きやなあ。」
カフェを出て、博物館に着いた後、ユージとマリが博物館に対する感想を言っていた。
博物館自体はあまり物が多くなく、基本的には内戦前の同国における仏教の伝来などを伝えるためのエリアがほとんどで、仏像などが無造作に置かれている事が多く、一行は全体的に流して見回っていた。
「ガイドブックにも書いていたけど、内戦時代に使われてた部屋は、拷問とかもやられてて、かなり雰囲気あるらしいやん、そこは興味あるわ。」
「あんまり軽率な言わないでよ・・なんか怖い話の最初のやられ役みたいじゃない・・」
マサとエリカも仏像のエリアには強い関心がないらしく、軽口を叩きながら歩いていた。
その様子を見て、ユージが先頭を切り、皆に言った。
「全員、興味がそこまでなさそうだから、お目当ての部屋にいくか。2階だったな。」
古い階段を上がり、2階にある明らかに修繕されていない部屋を見つけ、その中に入ると、身なりの良い30代中盤くらいの現地人が5人、真剣な面持ちで話していた。
「お、絶対ここやん、あんま怖い感じじゃないな。」
マサが入り口を見ながら言った。
そこには木でできた、狭い独房の様な物が並んでおり、その扉が開いていた。独房の中には、当時の様子を示した絵画が飾られており、同じ独房の中で拘束具をされた男が糞尿を垂れ流して、ムチで叩かれている様子が描かれていた。
その横の独房には、違う絵画が飾られており、独房の中に6人の痩せ細った男が詰められて、ホースで水をかけられている様子が描かれていた。
横には英語で「これらは政治犯として収容された囚人達である。彼らは食事も与えられない環境であったが、週に1度、その体から発される悪臭を消すためにまとめてホースによる水をかけられていた。これは彼らにとっては重要な「食料源」だったのである」と書かれていた。
全員がその光景に衝撃を受け、絶句し、見入っていた。
「I’d like you to allow me to disturb you, but could you speak English?(お邪魔して申し訳ありませんが、あなたは英語が話せますか?)」
どれくらいの時間が経ってからか、英語を熱心に読んでいたユージに、身なりの良い現地人の一人が丁寧かつ流暢な話しかけてきた。
「Yes, of course,,,, Please forgive me, I had concentrated too much to recognize you(もちろんです・・失礼、集中しすぎて気付きませんでした)」
ユージは突然のことに驚きながらも、英語で返した。
「失礼しました。最近は中国の方も増えて、アジア人の方はよく見るのですが、英語の文字を熱心に見ている方は珍しくて、つい・・日本人ですか?」
身なりの良いカンボジア人は立て続けに話しかけてきた。
それに気づいたマサ達も集まってくる。
「はい日本から来ました。元々、内戦時代には興味がありましたので、ここがある種の目的地でした。現在の発展した街を見ると、たった30年前にこうした事が行われていたのが信じられないですが、この部屋もまた、この国の真実なのですね・・」
ユージの話に、身なりの良い現地人の友人らしき人物が3人集まってきて、マサ達も合わせて8人で円になり、話し込んでいた。
「見たところお若いのに、素晴らしい関心と語学力をお持ちですね。私は政府に勤めていますので、政府擁護をする様に聞こえるかも知れませんが、、、我々の国は他国から独裁国家と評されており、それは一部事実だと思います。が、こうした人間の尊厳を踏みにじる様な出来事が起きてしまった社会に最初から民主主義という仕組みを持ち込む事がいかに困難か、これも政府にいる人間としては、避けられない命題です。」
「理解はできます。銀行・教師・学者、全てのインテリと言われる、通常社会では規則や規制を作る人々が殺された社会の中で、どの様に統治するかという問題は、、、」
8人はそれぞれに自分の考えを英語で話し、気がつくと30分以上の時が流れていた。
(なんて教養がありながら、実践的・現実的な思考をする人たちなのか。。日本の官僚にこうした人たちが何人いるのだろう・・国というのは発展してしまうと、こうも行政の人材レベルが落ちるのか・・・)
ユージは会話の中で、身なりの良い現地人達に心の中で感嘆を示しながら、同時に自国への虚しい感情を覚えていた。
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