第3話(過去編)
今回から過去編です
私の過去に大きく関わるレオン様。同い年の次期侯爵子息。私の母方の従兄で初恋の人、いいえ彼に嫁いだ後も愛している。その想いを隠したまま。
過去…前と言った方がいいのかしら、その時の私はとても引っ込み思案だった。自分の意見は口に出さず、人見知りが激しくて他人と関わるのが苦手。
それ故に私は王立学校時代も友達が居なくてずっと1人で勉強や読書に励んでいたのだ。
レオン様とは幼なじみだった。昔から中性的な見た目をしていて私は彼を女神様の写し身かとも考えていた幼少期。最初は女の子かな、って思っていた時期もあった。私はあの長く美しい金髪に憧れていたし私と同じ色の桃色の瞳で彼に見られるのが嬉しかった。
目を閉じれば小さい頃の思い出だって蘇る。
「カノン、花冠が出来たよ。こっちおいで。はいっ、似合うよ」
彼が作った花冠はいつも綺麗だった。作り終わったら素敵な笑顔を向けて私にくれる。それが嬉しかった。
「レオン様、ありがとうございます!私も作ったのでレオン様の頭に、はいっ!」
私も真似して彼に向けて作ったな、お互いに交換しあってお揃いだねなんて笑いあった。
幼少期は彼と沢山過ごしたし人見知りで誤解されやすい私によく付き合って遊んでくれたなとも思う。
温和で優秀で誰からも好かれる美男子。人見知りな私にもずっと優しくしてくれた。
そんな彼が大好きだった。愛していた。でもその想いを伝えられないまま私は死んだ。
私たち一族は政略結婚を嫌い恋愛結婚を好む。基本的に貴族であれば誰でも良い、それは過去に政略結婚をした1つの夫婦が悲劇を起こしたことが所以だ。
だから王立学校時代に好きな人を見つけ結婚するのが一族の常識である。
私も彼もそうしなければならない。
でも私はレオンに恋していた。だからこの12歳から18歳の6年間の間に告白しよう。そう思っていたのだが彼とは6年間クラスが離れてしまった。それに私には告白する勇気が無かった。
『好きです』
その一言が出なかった。
そして彼はいつだって人気者、こんな私にも優しいのだ。みんなにも好かれるはずである。
行事ごとでも目立つからよく学年の女子は「キャー!レオン様ぁ」とか叫んでいた。本物の王子様みたいな彼、素敵だったなぁ
対して私は人見知りを拗らせ同級生に話しかけられても上手く会話も出来ず…色々誤解されてクールに見えたらしい。多分笑わないからだろう。いつしかこの水色の髪とそのクールさから孤高の氷姫なんて渾名すら付いていた。
「げっ、今氷姫と目が合ったぞ。氷にされる」
なんて声もあった。
友達も居ないし全寮制だったこの学校でやることなんて勉強か読書くらい。ひたすら勉強して過ごしたものだ。だから学年上位の成績を取る事は出来ていたけれど1位には成れずじまい。やっぱりレオン様は優秀でずっと学年トップを独走していた。
人気者の王子様と孤独な氷姫、従兄妹で学年1位2位を取っていたのだから比噂になることも多かったけど彼とはクラスが離れていたり勉強で忙しかったりして話す機会も減った。
廊下ですれ違った時は時々挨拶はしていたけど彼は取り巻きが多くたまに睨まれることもあった。別に気にせずに居たが4年目からクラスが多く階が離れてしまった。そこからは月に1回顔を会わすかどうか、どんどん疎遠になっていく。
こうしてひたすら勉強に励んでいた学校生活5年目、転機が訪れた。
次回更新予定日は明後日の6時です。