エピローグ
エピローグ
神木の下。
俺と美切は木刀を手に間合いを取り合っていた。時間は朝の九時。現在特訓の真っ最中だ。しかし、これは部長との戦いの翌日である。つまりは、今日は貴重な休日である。なのに、おれは美切に無理やり朝から特訓を受けさせられていた。
「なぁ、美切。俺は昨日の戦いで疲れているんだが、せめて今日だけは特訓を止めようとか思わないのか?」
俺がやる気の無い声でそう言うと、美切はこちらを睨みつけて指摘してくる。
「能力に操られてしまうような軟弱者には、休日なんか要らん。特訓して早く能力を完全に扱えるようにしておくのだ。他にも、もしかしたら村正は居るかもしれないんだからな」
俺の意見はきっぱりと無視され、その代わりにおきつい言葉を貰った。未だに昨日、俺が暴走した事を根に持っているらしい。まぁ、確かに俺が悪いんだけどさ。しかし、その美切の言葉にも問題はあった。
「大体さ、村正って一体どれくらいの数がお前みたいに人型になるんだ? 村正なんて沢山作られてるんだし、今も現存している村正は多いんだぞ」
「そんなものは知らん。もしかしたら、私達の三人だけかもしれないし、全部の村正がそうなのかもしれん」
「当てのない話だな……」
全部の村正が人型化するなんてあってたまるか。たったの二人だけでもこんなに苦労しているのに、これ以上増えるなんてごめんだ。しかし、本当にありえる話なのかもしれない。だって、現にもう二人もの村正が人型化しているんだ。他にいてもおかしくはない。
「しかし、この後も今の調子で交渉を持ちかけていくのか?」
美切が少しだけ心配そうな表情で質問をしてくる。確かに、この方法は効率の悪い確証のないものだ。しかし、その返事は決まっている。
「ああ、勿論だ。俺はあの約束を破るような事はしない。だから、約束をした人とは力で戦わないで、いくつもりだ」
「じゃあ、もしも約束をしないものが現れたらどうするんだ?」
そう言われて、俺はしばらく考え込んだ。確かにこの条件を飲まない契約者も出てくるかもしれない。そうなったら、戦う事は必須になるかもしれない。しかし、それでも俺の中では答えは出なかった。
「まぁ、その時は、その時だ」
俺がそう言うと、美切はうんざりとした顔でため息をついていた。しかし、その後の表情は優しい笑顔だった。
「まぁ、その考えは好きだぞ。甘い考えだと思うがな。そして、その考えを貫き通すのなら強くならなければいけないな?」
そう言われて、俺は仕方なくやる気を出す事にした。木刀を構えて美切へ声をかける。
「よし、いくぞ!」
そして、俺は美切に向かっていった。どうせ、この後はボコボコにされながら説教を食らう事になるのだろう。しかし、それでも俺は良かった。それで、無駄な争いを避ける事が出来て、刀が守れるなら。
だって、俺は――刀が好きなんだから。
はい、桜雪です。やっと書き終わりました。
またしても、製作期間が一ヶ月程度という感じです。
これが私のペースなんですね。
さて、今回は擬人化ものでしたが、どうでしたか?
似たような作品なんて一杯あるでしょうが、その中でもまだ刀は擬人化されていないと思います。
題材の村正は私の好きな刀ですね。持ってませんけど(泣
小説家になれたら、お金ためて買おうと思います。百万円以上しますけどねorz
それでは、次回作をよろしくお願いします。