エピローグー5
《それと、最後にもう一つ》
「ん?」
まだなにか、話すことがあるのだろうか。
俺は再度、スピーカーに耳を近づける。
と――
《ヒロさん、実家ではお世話になりました》
《いつか、新潟でもイベントをやりたいと思っています》
《これを聞いてくださっているか分かりませんが、今度、新潟でイベントやろうという話が出ています。その時は――》
《《遊びに来てください! 待ってます!》》
最後は二人そろって、『声を作っていた』。
じゃなくて。
「いや! ちょっ! ええ!?」
ヒロ――俺のことだろう。
他に該当者がいない。
本名がバレないよう配慮しつつ、誰に向けているのかはっきり分かる形で、直接的なメッセージを送られた。
「……言われなくても、新潟でイベントやるなら行きますよ」
内心、滅茶苦茶嬉しかったし、聞いてくれとわざわざ連絡された理由も分かった。が、それよりも気になったのは――
「ですよねー」
SNSを見ると、『ヒロ?』、『え、誰?』、『名指しwww』、『これ大丈夫なの?』、『誰なのか特定しろ!』、『知ってる人挙手!』などなど、そりゃもう大騒ぎになっていた。
ま、本名はどこにも公開していないし、『ヒロ』だけで俺にたどり着けるわけがない。
俺自身も、SNSへ『ヒロって誰? 地元の人?』とてきとーに書き込んでおく。
「あのー、すみません」
「うわ!?」
不意に、幽霊のような声が背後から聞こえ、びっくりする。
振り返ると、西条さんが立っていた。
ウォーカーを調整して以来、西条さんのウォーカーは押す時、全く音がしなくなっていた。たまに、知らないうちに背後に立っていたりするから怖い。
いつぞやの幽霊を思い出す。
夜間は本当に勘弁してもらいたい……。
「今、うちの孫の声がしませんでしたか?」
「へ?」
驚く俺を無視して、西条さんは俺の隣、空いている席に腰かける。
「今、うちの孫の声が聞こえた気がしたんですが……?」
俺は「ああ、それはですね」と答える。
七夕の日、西条さんがテレビに映るアニメキャラを見て、彩花だと気付いたため、俺は個人的に試してみた。
本当に、声を作っている彩花を認識できるのか。
結果は言うまでもない。
西条さんは、地声で喋るラジオ番組では分からないようだが、声を作っている時の音声ならば、絵がなくても、彩花のことをきちんと判別できるようだった。
とはいえ、御利用者に迷惑をかけないよう、かなり音量を絞っているというのに、聞き間違えることなく察知するとは、孫への愛がとんでもない。
「西条さんも聞きますか? 彩花が出てますよ」
「そうですか?」
スピーカーを西条さんの方へ向け、少しだけ音量を上げる。
西条さんは興味津々といった様子だ。
本当に、こんなところを見つかったら怒られるだろうな。
俺はそう思いつつ、西条さんと二人、番組に耳を傾けた。
――彩花、西条さん、楽しんでくれてるぞ。
◆◇◆
おばあちゃんへ。
わたしは今、幸せです。
END.
初めまして、初雪奏葉と申します。
『アイドル声優が認知症のおばあちゃんに残せること ~大好きなおばあちゃんへ~』、無事、完結しました。読んでいただいた皆様、本当にありがとうございます。
得意分野である介護と、大好きな声優さんを絡められないかと思い、書き始めたのが今作となります。
認知症についてや、小規模事業所についての(地域密着型であるからできることが沢山あるとか、そういった)細かい説明は省かせていただきました。なるべく、『介護』の部分が重くならないよう、省ける説明は省き、『読みやすさ』を重視したつもりでしたが、いかがでしたでしょうか?
本日、七月七日に最後まで一気に更新させていただきましたが、最後は少しずつ更新する形ではなく、「一気に読んでいただきたい!」という作者の勝手な気持ちを反映させていただきました。
もし、最後まで読んだよ、という方がいらっしゃいましたら、評価、感想、なんでもかまいません。一言だけでも良いので、感想を残していただけると嬉しいです。
最後に。
繰り返しになりますが、ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。
これからも地道に執筆活動を続けて行きたいと思いますので、よろしくお願いします。




