エピローグー3
《まず、ファンの皆さんに詳しい説明もないまま、イベントや生放送など、お仕事をキャンセルしてしまい、申し訳ございませんでした。反省しています》
謝罪の後。
彩花は、はっきりと言った。
《わたしは、この一ヶ月、地声以外の声が、全く出せませんでした。病院へ行き、検査してもらいましたが、医療的な部分では全く異常はなく、精神的なものだと診断されました。そして――》
一瞬、彩花の言葉が止まる。
俺は収録放送であることは分かっていながら、心の中で「頑張れ」と応援する。
SNSで反応を見ていなくても分かる。
ここから先を公表するのであれば、間違いなく、ファンによって受け取り方が分かれる。批判する者も出て来るだろう。
それでも彩花は、公表することに決めたようだった。
自らを奮い立たせるように、ひと際はっきりした口調で、彩花は話す。
《そして、わたしの声が出なくなった理由は、わたしの祖母が、ある病気にかかったからです。わたしはそのことにショックを受け、気付いた時には声が出なくなっていました。……昨年、休養をいただいた際も同じような状況で、二度と同じことは起こさないよう、気を付けていたつもりでした。悠や北条さんを始め、周囲の皆さんにもサポートしていただいていました。しかし一ヶ月前、祖母の病気が悪化し、そのことを知った時、わたしはまた、ショックを受け、声を作ることができなくなりました。……声を作れなくなったのなら、休め、と北条さんに言われました。それが正しい判断だと思います。けれど、わたしの都合で、わたしの希望で、お仕事を続けさせていただきました。ファンの皆さんに不信感を与えてしまうことも、スタッフさんに迷惑をかけてしまうことも理解していました。でも、立ち止まってしまったら、今度こそ、立ち直れない気がして……。本当に、申し訳ございませんでした》
病名や詳しい状況説明は伏せられていたが、彩花の説明に嘘はなかった。
そして、彩花は一切、言い訳をしなかった。
全て分かった上で、自分が選んだ道なのだと、公表した。
スマホの画面――SNSを見ると、荒れていた。
『地声は出るのに声が作れなくなる、なんてことがあるのか?』、という疑問や、『そういう事情があるなら、北条さんの言うように休めばいい』、『理解できているのに休まないのは自分勝手が過ぎる』、『ファンに不信感を与えるのはスタッフも分かったはず、無理にでも休ませるべきでは?』など、批判的な声も多い。
一方で、今まで幾度となく話題にあがっていた大切なおばあちゃんが病気ということで、『人としてショックを受けるのは当たり前。気にすることはない』、『二回も同じ理由で休めないってことでしょ。続けようとする気持ちも分かる』、『無理にでも仕事を続けようするくらい、声優への想いが強いってことなら、むしろ好感がもてる』など、好意的に受け取る意見もある。




