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第一章ー7

「ヨシさんと会われて、どう感じましたか?」

 北条プロデューサーはその当時のことを知っているのだろうか。どこか、懐かしむような口調で尋ねてくる。

「優しくて、穏やかな方だな、と思いました。まだほんの一週間の付き合いですが、慣れないだろうに、いつもにこにこ笑ってくださって、職員としてはとても助かってます」

 でしょうね、と北条プロデューサーは笑う。

「私も何度か挨拶させていただいたことがあるのですが、彩花が慕うのもよく分かります。良い方ですよね」

「はい……えっと、北条プロデューサーは、彩花さんとずっと一緒にいるんですよね」

「ええ。彼女がデビューする前からの付き合いです」

「出会った時、どんな印象を受けましたか?」

 以前、雑誌のインタビュー記事で読んだことがある。

 彩花が業界関係者で初めて会った人物は、オーディションの審査員でもあった北条プロデューサーらしい。初主演作である『はなうた』のオーディション会場でばったり出会ったとか。

 彩花は、北条プロデューサーの図体に怯えたと話していた。

 北条プロデューサーはというと。


「そうですね……。出会った時から、真面目で何事にも一生懸命で、かと思えば負けん気が強くて諦めが悪くて。今と変わらないですね。正直、その性格に手を焼かされることもありますよ。ただ、だからこそ、周囲の誰もが、彼女の強い想いを感じ取って、この子に仕事をやらせてあげたいって思っていますけどね」


 彩花らしい。

 俺はそう感じた。

 彩花はどんなことでも、馬鹿正直になんでも話す癖がある。真面目で、真っ直ぐで、一生懸命で、だけど不器用で。そんな彩花のことを好きになるファンは多い。

「桜川さんもご存知でしょうけど、出会った当時、彼女から担当マネージャーをやって欲しいという話を受けましてね。指名された時はびっくりしました。嬉しかったです。声優志望の子は星の数ほどいて、私も何百人と見てきましたが、彼女ほど『伸びる』と思わされた子は他にいませんでしたから。だから、今でも彼女の傍にいるし、応援もしています」

 北条プロデューサーは最後に


「彼女がもっと輝ける、もっと幸せになれる最善の道を作る。それが私の仕事です」


 そう言い切った。

 彩花の隣にこの人あり。まさに、その通りだった。

 誰よりも彩花のことが好きだと自負するファンは多くいる。

 そんなファンたちからも絶大な信頼を得ているのが、北条プロデューサーだ。

「他になにか聞きたいことはありますか?」

「いえ」

 本当は、もっといろんなことを聞きたかったが、あくまでこの出会いは偶然のもので、本来あり得るはずのないものなのだ。

 これ以上は、欲張りすぎだろう。

「では、戻りましょうか」

「はい」

 俺は仕事へ、北条プロデューサーは彩花の元へ。

 先に一歩踏み出した北条プロデューサーの背中は、逞しくて、頼もしくて――。

 いつか、この人に追いつきたい。

 素直にそう思った。

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