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第七章ー10

     ◆



 テレビ画面に彩花の初主演作である、『はなうた』の映像が流れている。

 きっと、ご家族が誕生会で流そうと思い、用意していたものだろう。

 テーブルの上には食器類が並び、壁に目を向けると、『ハッピーバースデー』と大きく描かれた飾りつけが、視界に飛び込んでくる。

 俺たちや彩花だけではない。

 ご家族も、今日という日を楽しみにされていたことが分かる。

「……」

 西条家のリビングは、『はなうた』の賑やかな映像が流れるのみ。

 誰も、口を開こうとしなかった。

 外を歩き回り、疲れ果てていたこともある。

 蒸し暑い中、何時間も駆け回っていたのだ。

 もうダメかもしれないという気疲れもあった。

 けど、それだけじゃない。


 西条さんは、捜索を手伝ってくださっていた山根さんの自宅にいた。


 物を漁っていたらしい。

 なにを探していたのかは不明だが、家中の物が散乱し、大変な有様になっていたとのことだ。

 片付けていたはずの衣類、本、思い出の品などが盛大にぶちまけられ、冷蔵庫は空きっぱなし、生鮮食品がトイレにあったり、椅子やテーブルが倒されていたり、まるで泥棒が入ったあとのようだったという。

 山根さんは仕方ない、大丈夫ですと言ってくださったそうだが、不法侵入の上、壊れてしまったものもあるらしく、認知症でなければ、完全に逮捕案件だった。

 現在、山根さんの自宅へ、西条さんを迎えついでに、娘さん夫婦と、市川園長、松岡主任が謝罪に行っている。

 不幸中の幸い、と言うべきか。

 西条さんは冷蔵庫に入っていたお茶や食べ物をつまんでいたようで、命に別条なく、どこかで転んだ様子もないらしい。

 捜索時、山根さんへは、俺と市川園長が駆け付けるとほぼ同時に連絡を入れていた。

 山根さんの自宅は、西条家からそれほど離れていない。歩いて十分程の位置にある。

 おそらく、入れ違いに近い形で、西条さんは山根さんの自宅へ侵入したのだろう。

「彩花、なにか飲む?」

「……」

 ふるふると彼女は首を振る。

 リビングには、俺と彩花、悠の三人と、西条家親戚の皆さんが集まっている。

 四人掛けのテーブルには彩花と悠が隣り合って座り、残り二席は空席だ。少し前まで、娘さん夫婦が座っていた。

 誰もが気が気じゃない様子で、スマホをいじったり、部屋の中をうろうろしたりしていた。

 お婆ちゃん大好きっ子の彩花も、人様に迷惑をかけたというダメージは大きいらしく、俯いたまま黙り込んでいた。

 見つかって良かった――。

 それはそうなのだが、問題点や、反省しなければならない点など、それぞれがそれぞれに、頭の中でまとまらない思考を重ねている雰囲気だった。

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